表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/202

38.破滅への道連れ


ARATA-RES:じゃあ行きますか。


 戦闘が始まった途端、ネザーレイスはまるで指揮者のように両手を掲げた。

 するとネザーレイスと同じ姿をしたエネミーが、四体現れた。

 

 見た目は全く同じだが、纏っているオーラの色が違う。

 本体は紫、分身は青、少なくとも見分けて攻撃しろというギミックではないらしい。


ARATA-RES:分身は引き付けます。メイヤは本体を狙って。

PARALLAMENYA-RES:はい!!


 パララメイヤのバレットに合わせてアラタは接敵した。

 ネザーレイス本体が両手を前に出すと、その手からパララメイヤが使うものと同じマジックバレットが放たれた。


 狙いはアラタ。アラタはそれを躱しながら分身への距離を詰める。

 バレットが命中した地面が弾ける。アラタはそれを頭の隅で意識しながら、一体目の分身を間合いに入れた。


 分身の方は魔法ではなく、手から伸びている恐ろしげな爪で攻撃してきた。

 単純で工夫のない攻撃。アラタは軽々と弾き、返す刀で分身へと斬りつけた。


 ネザーレイス・コピー

 HP28/52


 斬撃に耐性はないようで、素直にダメージが入ってくれた。

 アラタは残り三体に意識を割きながらも、ネザーレイス本体を見ていた。


 パララメイヤのマジックバレットを避けている。

 これは今までのボスとは明らかに違った挙動だ。

 今までのボスは攻撃に対してはほとんど木人で、回避行動らしい回避行動を取っている様子はなかった。

 それに対し、ネザーレイスははっきりと回避行動を取っている。

 新しいダンジョンで、難易度が次のステップに進んだというところだろう。


 アラタもアラタでそこまで余裕があるわけでもなかった。

 四体のコピーがアラタへと殺到する。

 アラタは距離を取りながら的確にカウンターを入れていくが、特定の個体を狙うほどの余裕はなかった。


ARATA-RES:メイヤ! バレットではなくミサイルで狙ってください。


 念信が届くと同時にパララメイヤはミサイルを放っていた。

 ミサイルの軌道が孤を描き、ネザーレイスへと命中する。

 紫色のオーラが濃くなり、ミサイルが弾かれるエフェクトが発生した。


 ネザーレイス

 HP1244/1244


 効いていない。


PARALLAMENYA-RES:アラタさん!!

ARATA-RES:とりあえず雑魚を狙ってください!


 その時だった。

 今までアラタを狙っていたコピー達が突如パララメイヤへと襲いかかった。

 ヘイトが移ってしまったのだ。

 低空で浮きながら、アラタを無視してパララメイヤへと迫っていく。

 さらに本体のマジックバレットまでパララメイヤ狙いだ。


 パララメイヤは迷うことなく加速ヘイストを切って逃げる。


 アラタはコピーを背後から斬りつけ、一体が消える。

 それでもコピー達は執拗にパララメイヤを追いかけていた。


 パララメイヤは逃げながらコピーへとバレットを放ち応戦する。


PARALLAMENYA-RES:加速、残り十五秒です!


 助けを求めるわけではなく、バフの残り時間を告げることにアラタは頼もしさを感じた。

 

 アラタはコピーを背後から狙い処理していく。

 同撃崩が入らない分、応戦するよりも追いかける方がダメージ効率が悪かったが、それはもう仕方がない。


ARATA-RES:バレット、気にしないで撃ってください!


 距離を取りながら攻撃するパララメイヤに躊躇が見られた。

 おそらくアラタへの被弾を気にしているのだろう。


PARALLAMENYA-RES:でも!!

ARATA-RES:僕は銃の弾丸だろうと目で見て避ける男ですよ。


 パララメイヤの口元が薄っすらと笑うのがアラタの位置からも見て取れた。

 

 パララメイヤは容赦なくバレットを撃ち、アラタは射線に入らないようにコピーを追い打った。

 加速が切れる前には、四体のコピーは全て姿を消していた。


 本体に目をやると異変があった。

 その体から紫色のオーラが消えていたのだ。


 ネザーレイス

 HP1036/1244


 ネザーレイスのHPが減っていた。


ARATA-RES:なるほど、HP共有ですかね。

PARALLAMENYA-RES:それに、紫色のオーラも消えています。

ARATA-RES:今なら通るでしょうね。大魔法はまだ温存で。


 アラタは縮地から入った。

 たぶんオーラが消えている時間は限られているはずだ。一秒だろうと早く距離を詰めたかった。


 パララメイヤのマジックミサイルが先行し、アラタがそれを追う。

 対するネザーレイスも、マジックミサイルを放ってきた。

 狙いはアラタ。

 馬鹿にならない相対速度でミサイルが迫るが、アラタはそれを難なく躱し、無駄なく距離を詰める。


 接敵。

 その時にはもうミサイルがネザーレイスへと命中していた。


 ネザーレイス

 HP1022/1244


 通った。

 アラタも攻めにかかる。

 刀と体術を駆使してネザーレイスに怒涛の攻撃を仕掛ける。

 雷神はまだ温存だ。

 このオーラが消えている期間がDPSチェックである可能性もあるが、そうではないとアラタのゲーマーとしての勘が告げていた。


 突然ネザーレイスが雄叫びを放った。

 聞くものを怯ませる金切り声のような叫び。

 それと同時に、密着していたアラタは吹き飛ばされた。


 HP101/110


 大したダメージではなかったが、問題はノックバックだった。

 ログに目をやると、落霊の呼び声とある。

 フィールドに、再度四体の分身が現れていた。


 そして、ネザーレイス本体は再び紫色のオーラに包まれていた。

 

 基本ギミックは理解した。

 分身を倒し、本体にダメージが入る時に攻撃する。

 ただ、それだけとは思えなかった。他にも何か面倒なことをしてくるからこそ、クリア率が悪いはずだ。


 パララメイヤは既に分身への攻撃を仕掛けていた。

 アラタも本体を無視して分身へと走る。


 パララメイヤは緩慢な動きながらも、分身から必死に距離をとりながらバレットを放っていた。

 

ARATA-RES:加速のリキャが戻るまであと何秒ですか!?

PARALLAMENYA-RES:6秒です!


 ネザーレイス本体からのマジックバレットが、パララメイヤに命中した。

 パララメイヤはたたらを踏んで倒れこみそうになり、そこに一体の分身が襲いかかった。


 アラタはすり抜けざまに他の分身へと刀と拳を入れ、パララメイヤを爪で斬りつけようとしていた個体を、背後から串刺しにした。

 そのまま回し蹴りを入れて分身を横へと弾き飛ばし、背後から襲いくる分身へと身を沈めての練気を込めた肘打ちを入れる。

 肘打ちを受けた個体が残りの二体の進路を塞ぎ、その隙にアラタは刀が刺さっている分身へととどめを刺して刀を取り戻した。


 パララメイヤの加速が戻ったのだろう。

 パララメイヤが俊敏な速度で距離を取り、アラタと連携して手際よく分身を削り切った。


 ネザーレイスの紫色のオーラが消える。

 パララメイヤの動きが早い。おそらく先読みでミサイルを放っていた。

 ネザーレイスへとマジックミサイルが見事命中する。


 ネザーレイス

 HP620/1244


 ネザーレイスが再び叫び声を上げて衝撃波が襲いかかって来る。

 今度はノックバックはなかった。近距離のみ発生するのかもしれない。


 アラタが接近する間もなく、ネザーレイスには紫色のオーラが戻っていた。

 三度四体の分身が発生するが、今度はどこか様子が違った。

 分身は襲ってくることなく、四角を描くような陣形を取った。

 そして、本体はフィールドの端へとふわりと移動する。


 迷った。

 アラタのHPはまだ91もあり余裕があったが、パララメイヤのHPは半分を切っていた。

 雄叫びの衝撃波とバレットの直撃を受けたためだろう。


 何か厄介なことが始まるのは間違いない。

 全体攻撃だとしたら、パララメイヤがやられる可能性がある。

 

 アラタはパララメイヤの元に戻り、


ARATA-RES:ヒールを!


 パララメイヤはアラタの意図を察していた。

 すぐにヒールの光が二人を包みHPが戻る。


 四角形に配置された分身達が、両手を掲げていた。

 そしてその身は、紫色のバリアに包まれていた。

 本体は離れた位置で高みの見物を決めているようだ。


 何かヤバい。


 ARATA-RES:とにかく攻撃を!


 アラタは最速で距離を詰めた。

 分身のバリアは攻撃を通さないわけではなく、攻撃を食らうたびに縮むようだった。


 分身達はただ両手を掲げてバリアに包まれているだけであったが、そのバリアは徐々に大きさを増そうとしていた。

 アラタが攻撃を重ねていると、一体のバリアが破れた。

 即座にその首を跳ねて処理し、二体目へと襲いかかる。


 パララメイヤもヤケクソなバレットで一体を撃破し、二人が連携して三体目まで撃破した。

 そうしてその時にはもう、最後の一体のバリアがとてつもない大きさまで膨れ上がっていた。


 二人は攻撃を仕掛けるが、もうバリアが縮むことはない。

 戦闘ログに、不吉な文字が表示される。


 破滅への道連れ。


 その瞬間分身のオーラが爆発し、二人は光に飲み込まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ