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21.目的へと進み


 パララメイヤが杖を構え、その先から光弾が放たれた。

 動く木人のような姿をしたベイビーツリーマンに光弾が直撃する。


 不意の一撃にベイビーツリーマンが鳴き声を上げる。

 葉が擦れ合うような音と木がきしむ音が混ざった奇妙な声。


 こちらに接近しようとするベイビーツリーマンにパララメイヤが追撃を加えた。

 再び杖の先から光弾。ベイビーツリーマンは避けることが出来ず、直撃を受けてたたらを踏んだ。

 

 アラタはベイビーツリーマンのHPを確認する。

 

 HP10/28


 パララメイヤが杖を横に振ると、杖から光線が奔った。

 光線は曲線を描いてベイビーツリーマンへと迫り、その首を横から貫いた。

 ベイビーツリーマンの動きが止まり、その姿が消えていく。


「ふう……」


 パララメイヤが安堵の息を漏らした。


「お見事、今のがスペルウィーバーの戦い方なんですか?」


 戦闘ログを確認すると、パララメイヤが使った魔法はマジックバレットとマジックミサイル。

 前者はライフルのように魔法の弾を発射する魔法、後者はある程度の追尾性か発射後のコントロールが可能な光線のようだった。

 この領域の物理法則はわからないが、ベイビーツリーマンが攻撃を受けていた感じだと、少なくとも魔法弾には質量があるように見えた。

 しかし、呪文の織り手と名乗る割に、特に織ってる感は感じられない。


「いえ、今のは汎用の攻撃魔法です。キャスター共通の」

「なるほど、スペルウィーバーの呪文っていうのはまた別なんですね」

「はい、ただ呪文は回数制限が厳しくて、温存しておくべきかなって」


 アラタは納得がいった。

 強力な攻撃魔法はアラタが取得した雷神のように、日毎の回数制限があるのだろう。

 基本的には汎用魔法で戦い、必殺として詠唱を伴う魔法を使うわけだ。


 アラタとパララメイヤは移動を再開しながら話した。

 会話の種が出来たのは、あまり雑談が得意ではないアラタとしてはありがたかった。


「このゲームのキャスターのMPというのはどういったものなんですか? 汎用魔法の消費MPは?」

「えーと、キャスターのMPは自然回復するんです。汎用魔法のMP消費は少なくて、マジックバレットならリキャスト毎にキャストしてもMPは微増、ミサイルの場合は消費と回復が釣り合うって感じですね。だから詠唱呪文でMPを消費して、バレットを中心に戦ってMPを回復して、それから再び詠唱呪文をというのがスペルウィーバーの基本的な戦い方みたいです」

「詠唱呪文、というのは回数制限とMPの両方を消費するんですか?」

「そうです。でも、なんでこんなこと聞くんですか?」


 不思議そうにしているパララメイヤの方が、アラタには不思議であった。


「なんで、とは?」

「だって、アラタさんは忍者なんですよね?」

「全く忍びませんけどね」


 パララメイヤは微笑し、


「それだと魔法は使えないでしょうし、なんでかなって」

「単純にそのゲームのシステムを知るのが好きなんですよ。これでも結構なゲーマーのつもりですからね。それに、組むなら味方の特性を知っておくのは重要です。それによって動きが変わったりしますし」


 パララメイヤは、はえー、と呟いてから、


「アラタさんはやっぱりすごいですね。ゲームのプロって感じです!」


 アラタは遊戯領域での体験を売って栄誉を稼いでいるので、一応プロといえばプロだ。けれど、そういった中ではかなり意識の低い方だ。

 ゲームといえば遊びであり、できるだけ楽をして楽しみたいと思うのが普通だが、上位層というのは驚くほど勤勉だ。

 情報収集から練習に考えられないほど真剣に取り組む。

 アラタは半ばノリで遊んでる感が強く、そういうあたりが経験売り(Eバイヤー)として評価されきらないところなんだろうなと思う。


 とはいえ、褒められて嬉しくないわけはない。

 こうして長く他人と喋るのもかなり久々だった。


 二人は話しながら道を行き、いくらかの雑魚戦を重ね、すぐに目的地についた。

 マップ上に表示される赤い円範囲内を探索していると、標的を発見した。

 

 茂みの中の、不自然に開けた空間にそれはいた。

 

PARALLAMENYA-RES:か、かわいいですねー!!


 パララメイヤが念信で伝えてくる。

 気付かれないためには正しいのだが、伝えてくる情報はどうでも良すぎた。


 マーダーバニーはそのままウサギをでかくしたように見えた。

 変わったところといえば一角獣のような角が額に生えているところ。

 おそらくあれが追加報酬条件の角だろう。


 しかしデカい。

 つぶらな瞳に、野生動物特有の所作は可愛らしい気がしなくもないが、人間よりも一回り大きいと気持ち悪さが上回る気はする。

 アラタは忍者刀を握り、


ARATA-RES:じゃあ行きますか。僕から仕掛けるので、適当に援護をお願いします。

PARALLAMENYA-RES:あの、ちょっとまってもらえますか?

ARATA-RES:  ?  :IMAGE ONLY

PARALLAMENYA-RES:あの子、説得できないでしょうか?

ARATA-RES:説得?


 パララメイヤはマーダーバニーを見据えて、


PARALLAMENYA-RES:わたしは動物と会話が出来ますし、もしかしたら説得できるかも、って思うんです。あの子の目を見てくださいよ、悪いことなんてしなそうでしょう?


 どうだろう。

 瞳は確かにつぶらだが、このサイズだとそれ相応に物を食うのだろう。

 それに殺人兎マーダーバニーなんて物騒な名前で悪さをしないようには見えない。

 さらに言えば、あの角を持ち帰らなければ追加報酬を得られないのではないか。


PARALLAMENYA-RES:あんなかわいい子と戦うなんて、わたしにはちょっと……


 ジャーナルからクエストを確認する。

 条件はマーダーバニーの撃退。

 確かに討伐ではない。こういった場合仮に説得が成功すれば、追加報酬は得られなくともそれ以外の副産物が得られることはある。

 違った方向から報酬が得られたり、別のクエストに繋がったりする可能性はないとは言えない。


ARATA-RES:わかりました、じゃあ試してみてください。このクエストを受けたのはメイヤですしね。

PARALLAMENYA-RES:ありがとうございます! やってみます。


 パララメイヤがマーダーバニーの前に歩み出る。

 マーダーバニーの瞳が、パララメイヤをじっと見据えた。

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