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176/202

176.なかったはずの情報


 すぐギルドハウスに移動した。

 面子はアラタにパララメイヤだけだが、主要な面子には会話を念信で飛ばしている。


「星の試練について、何か有用な情報が見つかったんですか?」

「それが……」


 パララメイヤの表情から、大して有用じゃない情報しかなかったのだと思った。


「でも前はほぼ見つからなかったのに、新しく見つかったんですよね?」

「いえ、それがちょっと変なんです。星の試練についての話が、どこにでも転がっているんです」

「どこにでも?」


 それはおかしい。

 かつてパララメイヤに調査を頼んだ時は、ほぼ情報が見つからなかった。

 アラタがいくらか調べて見た範囲でも全く見つからず無駄だと諦めたくらいだ。

 それがどこにでもあるとはどういうことか。


「それこそ、この遊技領域の常識みたいにですよ。神話、伝承、どこを見てもこの惑星ほしと星の試練についての記述が出てきます」

「前に調べた時はそうではなかった、ですよね?」

「はい。まるで別の領域に来たみたいです」

「アップデートで変わった、ということですかね」


 核心に至るまでの道は自分で探しだせということか。


「だと思います。2ndフェーズの時もちょくちょく探していましたが、全く見つかりませんでしたから」


 気に食わない面もあるが、光明が見えたのは良いことに違いない。


「それで、試練についてわかったことは?」

「はい。試練は女神様が人類の――――」

「ストップ、ストップ待ってください」

「なんですか?」

「背景のストーリー的なアレもいいんですが、今は具体的にどうすればいいかの要点が知りたいんです」

「そうですか? 結構面白いんですけど」

「それはクエスト中だったり適当な空き時間で聞かせてもらうので」


 パララメイヤは微妙に納得言っていない風であったが、話を切り替えてくれた。


「わかりました。アラタさんはフィーンドフォーンの近くの試練をクリアしたので、残る試練はペータの街の南東にあるらしい海底神殿となります」

「残るはって、試練は二つだけなんですか?」

「いえ、二つをクリアした後、最後の試練があるそうです」

「海底神殿というのは、海底にあるものなんですか? それだと通常の移動法で行くことはできなそうですが、行くための方法については?」

「そこまではまだ……」

「わかりました。十分です」


 明確な目的が定まったのは大きい。

 試練はあと二つ。

 たぶんこれは、ほとんど連続に近い間隔で挑むことになるだろう。


 そして、その途中には必ずヴァンがいる。


 

***



 アラタはレベリングをしていた。

 ユキナ、ロン、ヤンの四人で組んで。


 海底神殿に行く方法については、パララメイヤとニルヴァーナの調査部に任せた。


 海底神殿は見るからにエンドコンテンツの一部だ。

 レベルをキャップである50にまで上げないで挑むような場所ではないだろう。


 というわけで、ひたすらクエスト、クエスト、クエストである。

 世界を救うためのレベル上げ。

 言葉にするとあまりにも馬鹿らしく思えるが、ソロ用の遊技領域ではよくある話だった。

 勇者が魔王を倒すために雑魚を倒して経験値を稼ぐのだ。

 非現実過ぎてそれについて深く考えたことはなかったが、こうして現実に世界を救うためのレベル上げをしていると、あれは案外リアルな話だったのかもしれないと思う。


 ユキナが巣穴にからくりのビームを打ち込んで、殺到する殺人兎を四人で処理した。


 網膜に流れるレベルアップの文字。

 これでようやく現在の上限である50だ。


「やっと50やー! あーーーーつかれたーーーー!!」


 ユキナが草地に大の字になる。


 確かに疲れた。が、不謹慎かもしれないがアラタはそれが楽しかった。

 現在難易度の高いクエストは受け放題でやりたい放題だった。

 四人全員がそれぞれ上限である三つまでクエストを所持し連続でこなしていくのだ。

 出来るだけ近い場所のクエを受け、そこからルートを決めて順にクリアしていく。

 なくなったらまた繰り返し。

 これをひたすらやり続けたのだ。

 

 そんなものの何が楽しいのかと言われると説明するのは難しい。

 他のプレイヤーがやっていないことを独占している優越感、それに効率の良い動きをしているという気持ちよさだろうか。

 それらを仲間と協力してやるというのは、単なる作業だとしても想像以上に楽しく感じるものなのだ。

 アラタはそれこそがゲーマーだと考える。


 ロンが大の字になっているユキナに物申した。


「お嬢、もうちょっと行儀よく……」

「ええやん! 遊技領域なんやから!」

「いやでも婚約者の前で……」

「婚約者?」


 反応したのはヤンだった。

 それに対しロンは露骨にしまった、という顔をした。


「あー、まあ、なんだ、うん」


 ロンはよくわからないことを言いながら頷く。

 もうちょっとマシな誤魔化し方があるのではとアラタでも思った。


 ヤンがユキナの顔を見て、それからアラタの顔を見た。


「面白そうな話ですが、プライベートなことはまあいいでしょう。せっかく50になったんだから、スキルポイントを振らないと」


 ヤンが大人で良かったと思う。


「ですね。参考にできる情報がないのが残念ですが」


 たぶん、アラタ達は最速でレベル50になった。

 それに加えて、現在はフォーラムにアクセスしようがない状態だ。

 遊戯領域内の攻略コミュニティもまともに機能していない。

 そうなるとスキル振りについては完全な手探りになってしまう。


 必要なのは対人スキルだ。

 だが練気や同撃崩、それに空蝉といった汎用性の高いスキルはキャップが上がっていなかった。

 既存のスキルでキャップが上がっているとわかるのは忍びの心得に雷神。


 手裏剣術や感覚系のスキルに今更振ったところで対ヴァンが有利になるとは思えなかった

 特に感覚系は神威とアンチシナジーがあるというのもある。神威の最中は感覚系のパッシブスキルが全て無効化されるのだ。

 少し悩んでから、アラタは忍びの心得と雷神にスキルポイントを振った。

 

 すると、雷神の先に新しいスキルがアンロックされた。

 名前は『神雷』というらしい。

 

 説明を見る限り、パララメイヤの大魔法のようなものに見えた。

 超強力な範囲攻撃。使用回数は一日一回。片手印は不可で必ず両手印で行わなければならない。


 微妙だ。

 ヴァンを相手にこんな大ぶりな攻撃が役に立つとは思えない。

 しかし、他に取るものがないといえばない。


 たぶん取得条件は雷神と忍びの心得を上限まで上げていること。

 ここまでして開示されるスキルならば、取らないのはさすがにもったいないとは思う。


 アラタは何につけても対ヴァンから考えるが、冷静に考えると試練もしっかりとクリアしなければならないのだ。

 そう考えると取得しない手はない。


 アラタはどこか納得がいかない気持ちで神雷に残ったスキルポイントを振った。


 これでレベル上げは完了だ。


 あとは試練をクリアするだけ。


 領域が封鎖されてから、5日が経過していた。

誤字報告ありがとうございます。助かります。

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