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150/202

150.蘇る悪夢


 名前の表記が文字化けしている。

 それは、1stフェーズの最後に戦った虎と同じ系統のものであることを示している。

 この敵は間違いなく星の試練に関係している。

 あの老人は厄災に備えろと言っていた。つまりこれが厄災ということか?

 突然の出現、一般のプレイヤーを襲っていた話、厄災だとしてもおかしくはないかもしれない。


MEILI-RES:これって例の黒い獣?


 だとしたら最悪のタイミングだった。

 結果から見るに星を追うもの(スターシーカー)の理念で遭遇率が上がるという予想はドンピシャだったのだろう。

 だが、ヴァンと再会したこのタイミングはよろしくない。ヴァンまで巻き込むことになってしまう。


VAN-RES:黒い獣?

ARATA-RES:ココらへんで噂になってたんですよ。プレイヤーを襲う黒い獣がいるって。僕らはそれを狙ってこの周辺でクエストを受けていたんです。


 2ndフェーズから出現するようになったレアエネミーだと思っていたが、それがまさかエデン人関係の敵だとは思わなかった。

 今まではエデン人の仕掛けている何かは星を追うもの(スターシーカー)であるアラタにしか作用していなかった。

 なのにこの獣は一般のプレイヤーまで襲っていたというのか。

 わからないことだらけだが、敵はそれを考えるだけの時間は与えてくれそうもなかった。


 二頭の黒い獣から、音が発生していた。

 不気味な振動音と言う他ない。鳴き声なのかもしれないが、黒い獣に口がない以上それが鳴き声だとは断定できない。

 ただ、それがアラタたちを威圧しようとして出している音だというのはわかった。

 明確な敵意を感じる。


VAN-RES:面白そうじゃねぇか。お前らは左を相手にしろ、俺は右をやる。


 ヴァンの念信が届くと同時に二頭の黒い獣が飛びかかって来た。

 早い。一瞬で間合いを詰められ、アラタとメイリィは左へと跳んだ。

 ヴァンが大剣を雑に使い、一頭を右へと跳ね飛ばした。


ARATA-RES:気をつけてください!! おそらくPvPと同じ仕様で傷を負うことになります!!


 アラタはそれだけ伝えて目の前の獣に集中した。

 先に仕掛けたのはメイリィだった。

 大鎌を巧みに操り獣へと斬りつけるが、獣の動きは素早かった。

 メイリィの大鎌は接近を妨げる守りとして機能はしても、獣に命中はしない。

 大ぶりな鎌の動きでは捉えにくそうだ。

 

 メイリィは大鎌を操り、当たらないのを承知で攻撃を続けているように見えた。

 アラタはそれにすぐに気付いた。攻撃することによって左に、左にと誘導しているのだ。


 アラタは縮地を切って待ち伏せするような位置へと移動した。

 そこから一直線に突貫した。


 虎の時と同じなら、こちらの攻撃も必殺の可能性があるはずだ。

 ならそれを狙う。

 全速からの刺突で、獣の脇腹を狙った。

 同撃崩が乗せられていない以外は完璧な一撃。

 アラタの切っ先が迫るそこは、四足獣ならば概ね心臓があるはずの位置だった。


 アラタは狙いを外さなかった。

 流星刀での突きは、見事に獣の脇腹へと命中した。

 しかしそれだけだ。


――――硬い。


 貫くことができない。

 アラタは刺突の衝撃に逆らわずに下がる。

 獣から不気味な鳴動。


MEILI-RES:アラタ!! 後ろ!!


 メイリィの呼びかけと予感が、アラタに確信をもたせた。

 全てをかなぐり捨てて右へと跳んだ。


 目の前にいたはずの黒い獣の姿が消え、背後から衝撃を感じた。

 アラタが一瞬前までいた場所に、黒い獣が激突していた。

 攻撃は背後から。アラタの背後だった場所に、黒いワームホールが出現していた。

 瞬間移動の類か。虎も似たような攻撃をしていた。この系統の敵の共通点なのかもしれない。


 飛びかかって来る獣をメイリィといなしながら考える。

 攻撃が通じなかったのは、おそらく純粋に火力が足りなかったせいだ。

 黒い獣にはなんらかの弱点が現れるような兆候はない。

 そうであれば攻撃は普通に通じるはずなのだ。

 そうならなかったのはシンプルに攻撃力が足りなかった可能性が高い。

 この点も虎との共通点を感じる。


 しかしそれは悪いニュースだった。

 アラタにはもう雷神もMPもないのだ。

 流星刀をクリティカルさせる以上の火力を出すことはできない。

 そしてそれも通じなかった。虎との初遭遇を彷彿とさせる。


 それでもアラタに焦りはなかった。

 その時と違うのは、仲間がいることだ。


ARATA-RES:メイリィ! 火力が出せるスキルはまだありますか!?

MEILI-RES:あるけど、コイツ早くて当てるの大変だよ!

ARATA-RES:僕が隙を作りますから!


 念信の返事に一瞬の間があった。


MEILI-RES:ちょっと攻撃もらうけど、驚かないでね。


 メイリィが前に出た。

 大鎌が赤紫に輝いている。

 メイリィが大鎌を振るう。獣はそれを、意思のあるような動きで反応して躱した。

 網膜に表示されているメイリィのHPが3割ほど減っていた。

 今のが自傷技か。そしてそれを外したのだろうか。

 減ったHPに対してあまりにもあっさりしていたが、命中しなかったせいなのか。


 今の一合を見てメイリィに任せきっていいのか、判断に困っていたところもある。

 それが原因でアラタの割り込みは絶望的に遅れた。


 黒い獣が鳴動していた。

 そうしてメイリィの背後には、黒いワームホールが出現している。


ARATA-RES:メイリィ!!


 黒い獣の姿が消え、ワームホールから出現しているところがはっきりと見えた。

 そして黒い獣の頭部に当たる部分が、全て口であるかのように不気味に変化していた。

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