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Fantasia from the earth      作者: 源 ミナト
1/1

プロローグ

 城下町に、森、川、ごく平凡な街「ファシスタ」。

 その街の外れに、一人の少女がいた。

 名前は〝ケイト〟。

 薄めの茶髪に、三つ編み付きのセミロングという最近よくいそうな装いである。

 


 明日は、年一回の収穫祭!

 そのために今日は、私の大好きな「トガト」を収穫している。

 私の家は代々続く農家なのだが、「トガト」ばっかり生産する変わり者?変わり農家だ。

 私は別に、「トガト」は好きでも、嫌いでもないからいいのだが、父は「トガト」農家のくせに「トガト」大嫌いなのである。

 可哀想に。他人事だが。

 「トガト」の収穫には注意すべき点が幾つがあるが、私はもう十五だ。

 何回収穫したとおもっているのだ。

 「ケイト、そんなに乱暴に扱うな」

 「それはまだまだだ」

 「何度言ったらわかる?」

 トガトが嫌いなくせして、私に文句をつけてくる。

 なんて悪質なんだ。

 このままでは愛娘が農家なぞ継がぬぞ!

 まあこの街は身分制度が根強く、親の仕事を継ぐのが当たり前なのだが…

 この風習は絶対にいらない。

 隣街ではじゆうけん?を主張してどんな仕事でもつけるというのに、全くこの街は平凡すぎて遅れている。

 はあ、作業が進まない。

 明日は御馳走が食べれると、自分に考えさせることでやる気をもたせたいのだが…

 この炎天下、作業が進む方がおかしい。

 とりあえず、ちょうどよさそう?な黄色いやつを収穫していく。

 私は青い方が好きなのだが、ある程度黄色くないと出荷できない。

 よく「可笑しい」と言われる。

 まあ、そうゆう所を誇りとしているのだが、心の中だが恥ずかしい。

 


 淡々と作業を続ける。

 丁度良い物を選定し、ハサミをいれ、手に取る。

 出荷場にいる母に運び、叱りを受けたり、受けなかったり、そしてまた畑へ戻る。そして時折、父に悪態をつかれる。

 この繰り返し。

 




 あーーーー

 めんどくさ




 痛い? 熱い?  は?

 突然痛みに襲われる。

 


 右腕が燃えている?

 燃えている!


 その熱さに悶える、震える、叫ぶ

 熱い、熱い、熱い!


 バシャー


 頭が冷たい感じがした。

 気持ちがいい〜。

 

 熱い!まだ燃えてるじゃん!


 バシャー


 もう一度水をかけられる。

 一瞬痛みを忘れたが、まだ痛い!熱い!

 本当に水かけたのかよ?


 「大丈夫か!?」

 父だ。安心した。

 気が付くと、涙がでていた。

 


 父に連れられて一旦家に、帰り、右腕を冷やす。

 何がなんだか分からないが、とりあえず痛い。

 こんな大きな火傷をしたことがないのに、父は「思ったより軽症で良かったな」とか言ってきた。

 許さない。

 そのまま父は作業に戻ってしまった。

 いくら何でも娘に興味がなさすぎじゃないか!

 父の行動に気を取られて、なんで火傷したのか考えてなかった。

 あの場所で火が付くなんて考えられない。

 しかも、私燃えてたぞ!

 傷口を見てみると、何故か楕円形に火傷していた。

 「きもっ」

 水ぶくれになっているし…最悪。

 しかも利き手とか生活的にも痛い。左手は使えないからね?!

 人体自然着火なんて聞いたことないし、見たこともない。もしかして人類初?なんか嬉しくなってきた。

 怪我してハイになってるかも。

 これが不幸の前兆とかだったら、つぎはどうなるんだろう?死にたくはないな…

 とりあえずわけが分からないから、明日病院に行こう。そうしよう。

 



 今日の夕食は川魚だ。

 正直がっかりした。病人?には果物だろうが!とか思いつつ、そんな重症じゃないなーと考える。

 あー、甘いもの食べたい。


 「ケイト火傷したんだって?大丈夫?」

 そうゆう母はあんまり心配してないと思ってしまう、自分の心に蓋をして、

 「大丈夫だよ!なんのこれしき」

 

 それから私への心配についての話は終わり…

 「もう少し心配してくれないのかよ!」

 「あら、そんなことを言えるうちは元気ってことね。良かった」

 心の声がでてしまった。


 それから明日の収穫祭の話へ移り、私を朝に病院に連れて行くこととなり、夕食は終了する。


 


 家の裏にある井戸。なんかおばけがでそうで、ゾクゾクする井戸。結構な間、手入れしてなくて苔が沢山生えてる井戸。

 水を汲んで水を浴びる。

 冷たい…

 

 「痛っ」

 火傷に染みる。

 今日も頭から水をかぶったから、頭が寒いー。

 髪の毛を伸ばしているくせに、乾かなくてうんざりする。でも伸ばしたいのが、乙女心だよね。

 シティーガールズではロングヘアーがブームなのだ!

 私も流行りに乗らないわけにはいかないぞ。

 

 それにしてもこの井戸、老朽化が進みすぎて穴が埋まるのではと心配になる。

 そんなことになったら……

 水やりしなくて済むじゃん!

 おじいちゃんから受け継いだ、ポジティブシンキングだ。

 

 私はおじいちゃん子だったのだが、二年程前に亡くなり、衝撃は受けたが、正直もうすぐ亡くなるとはおもっていた。

 おじいちゃん大好きだったので、おじいちゃんから習ったことは私のモットーにもなりつつある。

 おじいちゃん万歳。

 おじいちゃんはおばあちゃんに先立たれて、不安だったと思う。でもそのことを悟らせなかった。

 私が生まれる前におばあちゃんは死んじゃったんだが、おじいちゃんはおばあちゃんのことをよく話してくれた。

 おばあちゃんは、お淑やかで美人だったらしい。

 その事以外はあんまり分からない。

 よく話してくれた割には話が不透明な感じだった。

 

 あ。

 〝火傷〟といえばおじいちゃんが話してくれた昔話がある。


 「炎の魔女シャウラ」

________________________

 シャウラは炎を自在に操る魔女で、その炎を使って森を焼くことを生業としていた。

 人々は彼女のことを恐れ慄き、いつ焼かれるか分からない森には近づかないようになっていた。

 そんな世の中だが、とある森では十年に一度結界を張り直す為に、儀式をしていた。そうしないと魔獣が街へ放たれるかもしれないからだ。

 儀式は、森の近くの村の子供が行わなければならない。大人が行うべきという意見もあったが、結局、普段どおりに。

 今回の儀式には、貧しい少年が選ばれた。

 覇気のない少年だった。

 

 少年は森へ入り、持っていた「魔石」と言われる石を改めて観察する。

 透明な石の中に、不透明な赤い石が入っている、どこから奇妙な石だ。

 この作業は魔石をつけ外しするときが、最も危険だ。一回外すともう一度同じ物を嵌めても再構築せず、一瞬結界が消滅するからだ。

 


 一つ一つ、丁寧に付け替えていく。

 


 あと一個だ。

 最後の一個を外す。



 最後の魔石がない!

 少年は大いに焦ながら、道中を引き返していた。


 この森は高度な結界で守られているが、その結界を作った者はもうこの世にいない。だから、魔石を付け替える以外に再構築することは、不可能だ。

 そもそも魔石は、魔獣の体内にある為入手が困難であり、その中でも特別なものでないとこの結界は作れない。


 しかし、少年は焦りながらも冷静だった。

 ① 道中を探す

 →落ちていない可能性もあり、危険も伴うが、あった場合、すぐに問題は解決する。

 ② 村まで戻る

 →走って二時間ほどかかり、戻るまでに魔獣に侵入される恐れがある。だか、確実性がある。

 ③ 魔獣を狩ってそこから魔石を入手する

 →身に危険が及ぶが、すぐに入手出来れば魔獣が侵入してくる可能性はなくなる。



 ア゛ア゛ア゛ ァァ

 赤子のような耳に来る声。

 これは、魔獣の声だ。たしか「スキューピー」という獰猛な魔獣だ。


 ア゛!  ビー  ア゛!  ビー


 別の魔獣らしき声も入りながら接近してくる。

 足が、震える。


 ア゛ア゛ ビ!  ァ  ビー

 

 やっと少年の足が動き出した。

 

 逃げる、苦しい、息が苦しい。


 周りにを見ると、無数の赤く光る目があった。

 魔獣と目を合わせてわいけないと言われていたことに、今更気付いた。

 近頃は魔獣の食べ物(小動物や人間)が減っており、相当腹が空いているらしい。

 そんなことをはどうでもいい。

 

 自分は多分死ぬ。

 村への被害を最小限にするためには、早急に結界をどうにかする必要がある。

 


 怖い、怖い、怖い


 襲ってこない理由は震える人間を楽しむ趣味だからか?

 

 ア゛ア゛!

 

 一際目立つ大きな魔獣が、一瞬で距離を詰め、襲いかかってくる。

 

 護身用の短剣を握っていたが、何もできない。

 痛い、怖い、悲しい、寂しい。

 瞬く間に脳のリソースがなくなる。


 ボォッ 

 熱っ!

 目の前が赤く染まる。


 炎だ。美…しい。


 炎の間から、一人の麗しい女性が見えた。

 美しい白髪に、長身。

 宝石のような浅葱色の目。

 その目と目が合った。


 「αοπ∩αο∷  ΩΣΕΗΙ?」

 

 小さくて、儚い声。

 何を言ってるいるのか分からないが、敵意は無いようだ。


 無意識に、

 「ありがとう…ございます」  声が出ていた。


 焦げた匂いが漂う。

 女性が魔獣の死体から石を取り出す。

 その手を自分の方へ出してきた。?

 

 「χⁿⁿ⊃∇θ」

 

 とりあえず手に取る。少し彼女の手に触れた。

 冷たい。ここの周りは炎で熱いというのに。

 

 「sh.y a. …urra」

 シャウラ?名前か?

 

 「パトリック」とりあえず名乗る。


 彼女はそっぽを向き、再び炎を放った。美しい。

 炎が赤から青へと変化する。

 

 不思議と熱いという感じは無くなった。

 自分を避けて炎を放っている?

 

 魔獣が炎に向かって飛びついた。魔獣は光へ惹きつけられるのだろうか? 

 焼けた血の匂いがする。

 

 そのまま、森は炎の海へ、魔獣は血の海へとなった。

 

 シャウラがこっちを向いて微笑む。

 体の力が抜ける感じがした。


 シャウラはその微笑みのまま何処かへ行ってしまった。






 その後パトリックは、炎のこない、川に入って村へ帰った。

 

 パトリックは放火をしたとして逮捕された。





 処刑の日、張り付けにされていたら、またシャウラが現れた。

 もしかしたら幻覚だったかもしれない。

 

 村は燃やされた。逃げまどう人々。焦げた匂いと血の匂いが充満した。

 張り付けられているので、虚しく、自分が燃えるのを静かに待っていた。

 逃げまどう人々の中に、母さんがいた。

 こっちをみて、近づいてきた。

 必死にパトリックについている火を消そうと、布をかけてきた。

 無駄なのに。

 母さんには感謝してるよ。でも、助からないと思うんだよね。

 シャウラの炎は万物を燃やす。

 

 

 目の前で燃える母さんを無心で見ていた。

 「パトリック」と何度も呼んでくれた。

 

 ブチッ


 目の前が真っ赤になる。

 母さんの頭が無くなっていた。


 落ちた頭が蹴られる。その脚の主は…シャウラだ。


 何か冷たいものに抱きしめられた。

 それがシャウラだと気付いた。

 彼女は〝殺す〟ということに何も感じていないようだった。

 

 パトリックは必死で暴れた。暴れた。暴れた。

 腕で固く拘束されていて、でられない。


 「ΕρρξςΖ」


 体が燃える。熱いのに、冷たい。

 そのままパトリックの意識は無くなった。


 


 そこには、一個の魔石が落ちていた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 この話には、おかしな点がある。

 小さい頃はなんともおもわなかったけど、パトリックは死んじゃったんだからこの話は、嘘じゃないか。

 要するに、『〝炎の魔女〟には近づくな』ってつたえたかったのか?

 

 この地方の昔話は、ただ怖いだけのやつが多いから

あんまり中身ないんだよなー。

 でも、おじいちゃんの話す昔話は楽しい系が多かったから、この話だけ浮いているのでは?

 

 

 そうこうしているうちに、もう寝る時間だ。

 明日は収穫祭!美味しいご飯!


 …………

 次の日が楽しみだと寝られない。

 

 あぁ。おじいちゃんに会いたいな。


 


 


 





 

 



 

 




 


 



 



 

 


 

 


 

 初投稿でした。

 読んでいただきありがとうございました。

 

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