恋は火の花
人の恋心なんて、ぱっと咲いてはすぐに消える花火のようなものだと思っていた。
子供の時に、家の庭にで家族でした花火なんてもう忘れた。恋なんて所詮そんなもの、心のどこかでそんな風に思っていた。だから恋で悩む人間なんてばかみたい、そう思っていた。
高校生の夏、教室の隅で空を見上げる私に声をかけてきた男の子がいた。その時は彼の話なんて聞き流していたから、どんな話をしたかなんて覚えてない。それから、彼は頻繁に話しかけてくるようになった。もともと、一人でぼーっとする時間が好きだった。でもこうして人と話すのも悪くないと思った。
ある日、学校の帰り際にその男の子が、ある女の子に交際を申し込まれているとこを目撃した。胸の奥が針で刺されたかのようにちくっとした。彼はそれからその女の子とばかり一緒にいて、私には声もかけてくれなくなった。ただ、元に戻っただけ一人でいるのは慣れっこだった。だったはずなのに。なぜか頭の中から彼の笑顔が離れない。自分だって本当は分かっている。でも認めたくなかった。
“恋”をしているなんて。
夏休みに入って、彼と会わなくなってもそれは変わらなかった。誰の連絡先も入っていない携帯を見てしまう、出かけても駅のホーム、喫茶店の中、交差点の向かい側でも無意識に君を探してしまう。連絡がこないなんてわかっている、こんなところにいないのは分かっている。本当は分かっている。
彼のことが好きだってことは。もうどうしようもないほどに。
でも、彼は遠くへ行ってしまった。私の手の届かないところへ。頬を伝っていくのを感じた。
忘れたい、無くしたい。こんな気持ち。
でも、そう思えば思うほど私の中の彼は、大きくなっていく。
なら、考えないようにしよう。考えないように意識するのは、彼を意識しているのと一緒。
そうやって、季節は過ぎた。
あれから、三年が経った。あの時の君の声、君の笑った顔、今でも忘れられない。夏祭りの帰り道のように、暗闇に咲く一凛の花のように眩しかった君の残像はまだ僕の中に残っている。
昔見た、大きくて綺麗で眩しかった花火は、今でも記憶に残っている。
君と同じように。
これからもずっと。忘れない。
万人にささらなくてもいい。
届いてほしい人に、届けば