呪い
小鳥の囀りで目が覚めた。何時もは昼近くになるまで寝ているのに、おかしなこともあるものだなと身体を起こす。そして僕は頭を触った。毎日の習慣では勿論ない、何かおかしいな違和感あるなと思って触っただけである。手触りで頭を確かめる、カランカンとなる持ち手、水を運ぶのに最適なフォルム。間違いない、これはバケツだ。
「……何で僕はバケツを被っているんだろう。というか外せばいいよね……あれ?」
バケツを外そうと試みるが、外れない。おかしいなと何回かバケツを外そうとするが、外れない。どういう事だろうと二度寝したり日向ぼっこしたりしてそれはもう真剣に考えたけれど解決策が思いつかなかった。
「うーん、そうだ。こういう時は……」
最近チラシを拾ったあの場所へ行ってみよう。確かこう書かれていた筈だ、呪われたらお越しください。相談料は応相談。なんだか詐欺のような感じもするが、物理的に外そうとするのは勇気がいる。ここは解呪でもなんでもしてもらいに行こう。
「それで、私にばけつを外して欲しいと」
「そうなんですよ。朝から被ったまま二度寝したり日向ぼっこしたり」
「あまり問題にはなってなさそうですね」
確かに、バケツを被っていようとも僕の活動に支障はない。だが、邪魔である。バケツを被って生活をするなんて、常にマスクをしている怪しい人じゃないか。
「どうにかなりませんか」
「分かりました、通常料金で解呪をと言いたいのですが。間の悪い所に信仰の欠片が不足していまして。あれがないと私やる気が起きないんですよ」
「……なくても出来るんですか?」
「できますよ、当たり前じゃないですか」
僕はこの人に朝ちゃんと起きてますかと聞いてしまったらしい。別にその信仰の欠片なんてなくても解呪出来るならやればいいんじゃ。
「でも、ただ働きは私嫌です。そこで相談です。貴方の着ている服を下さい」
「何でですか」
「私、他人の匂いを嗅ぐ趣味がありまして。貴方の体臭がしみ込んだ服があればやる気が起きます。それか信仰の欠片を四つ程集めてくれば……」
「信仰の欠片集めてきます!」
この場から一秒でも早く立ち去りたくなり僕は外へ脱出した。よくは分からないけれど身の危険を感じる。バケツと私服では冒険に出るのに心許ない。ちょっと準備してから、家を出よう。




