「慢心しきったお坊ちゃん」の時代
オルテガ・イ・ガセットが『大衆の反逆』の中で、同時代人のうちに「大衆」を見、それを表現した言葉に、「慢心しきったお坊ちゃん」というのがある。
今世紀初頭のことであるが、概要こんなことである。
今いる人間の多くが、今が歴史上最上の時代であると思い込んでおり、過去を現代の出来損ないと見下し、現代にあるものが、過去の人間の苦心と研鑽の産物であることを忘れ、ただ、その成果のみに与っているというのである。
それで現代人は過去の人間に感謝することもなしに、今あるもの、考え方を最良とみなしながらも、それが、そうなのかもわからずにただ、それを使ったり、消費したりしている。
もちろんその意味も仕組みも十全に理解せずにである。
21世紀になり、私たちは自らが途方もなく愚かなのか、途方もなく賢いのかわからなくなっている。
途方もなく賢くなければ原子力発電所など作れまい。
だが、途方もない規模の事故を起こして、事故以前なら可住地域だった一定の広さを持つ地点を、もはや永久に住むことのできない地域に変えてしまったのである。
永久である。
我々の愚かしさが、われわれの身の丈をはるかに超え、有神論者が言うところの神の領域を作り出したのである。