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図書室で全裸の美少女と……

この物語を、敬愛するすべてのラノベ主人公たちに捧ぐ――



 ◇ ◇ ◇



 ――全裸の美少女がいた。


 ま、待ってくれ。

 賢明なる読者諸賢におかれては、あまりに唐突な書き出しにさぞ混乱していることだろうと思う。俺も混乱している。だけどいったんそれは脇に置いておいて、とりあえずここで、全裸の美少女を目の当たりにする状況というものについて考えてみようと思う。


 これは当たり前のことだけど、全裸の美少女と出会うには女の子が全裸になっていないといけない。


 ゆえに普通に考えるとするならば、それは女子が着替えをする場所、つまり更衣室だったり、保健室だったり。他には、水泳の最中に水着が脱げてしまった場合もあるかもだから、プールも念のため候補に入れておこうか。

 まあといっても、そういった場所に足繁く通ったとしても全裸の美少女をお目にかけることはまずないし、ましてや候補地以外の場所で出くわすなどありえないのだ。


 だというのに。

 放課後。

 しんとした静寂に包まれた本の聖域。

 夕暮れに染まるノスタルジックな図書室で。


 俺はそいつに出会ったんだ。


「なっ!?」


 驚いて声を上げてしまった。だってそうだろ? なんせ図書室に全裸の美少女だ。

 慌てて口をつぐむも時すでに遅し。

 後ろ姿ながら、彼女の肩がびくっと震えたのが分かった。

 やがて彼女はゆっくりと、その艶やかな黒髪を、薄い肩に引きずるようにして振り向いた。

 俺を見る。


「えっ」


 それは彼女が口にした小さな波紋。

 鈴が鳴るような、澄んだ色の声だった。


「――」


 向かい合ったまましばし固まる俺と彼女。

 その時間は一瞬にも、または永遠にも感じられて、だけど彼女はたしかに俺を、その長く伸びた前髪越しに見つめていた。

 驚いたように見開かれた彼女の瞳。声にならない声を上げる小さな蕾のような唇。

 やがて彼女の顔はカァァと赤らみ、上気し、引きつったようにひくひくと口角を上げながら、


「う、う、うそ、ですよね? わたっ、わたし、はだっ、裸、み、み、見られて……」


 ――ああ。

 思う。

 もしこれがライトノベルなのだとしたら、きっとこのシーンはプロローグだ。だから、ここらで終わりにしよう。プロローグとは語りすぎないことなれば。


 ――放課後の図書室で出会った全裸の美少女。


 出会いかたは歪なれど、これはまさしくボーイ・ミーツ・ガールで。

 モブキャラな転校生さんと学園ラブコメ主人公な俺の、ボーイ・ミーツ・ガールで。

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