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Emergency Doctor 救命医  作者: さかき原 枝都は
Emaergency Doctor 救命医
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1-14Emaergency Doctor 救命医


1-14Emaergency Doctor 救命医


病院にはいつも多くの患者がやってくる。

その患者の症状も個々に違う。


毎日毎日多くの患者と接し、その治療を行う。しかし、中には来てもらいたくない患者も確かにいる。


それでもこちらは患者を選ぶことは出来ない。

だが、患者は自分を担当する医師を指名してくる。


それはその医師とのコミュニケーションが整っているから?

もしくは名のある権威をもつ医師であるからか……


まだ駆け出しの俺には患者を撰ぶ権利はない、そして患者から指名されること自体ない。


三日前右脹脛ふくらはぎ上部に変色部と腫れがある佐々木さんが再来院した。


佐々木さんは元々糖尿病でもあり、この病院にはおよそ二ヶ月ごとの割合で通院していた。


だが、左側大腿骨骨折をして入院後はその痛み止めをもらう為およそ週一で通院しては痛み止めを処方している。


カルテには何度も同じ痛み止めの名が綴られている。

そして、三浦医師が佐々木さんに念のためと言いながらそれとなく受けさせた血液検査の結果が届いていた。


そのデータを目にする。

前回血液検査をしたのはおよそ二ヶ月前、そのデータを今のデータと見合わせる。

ヘモグロビン値が以前より高くなっている。しかもクレアチニン値も高い。腎機能にも障害がある。

そして右脹脛の炎症にともない白血球数も高くなっている。


内科医でもある三浦医師にもこのデータ所見は相談済み。

まずは一呼吸おいて……


「済みません、佐々木さんお呼びいただけますか」

看護師に落ち着いた口調で告げる。

彼女は俺の顔をちらっと除き込むようにして佐々木さんを呼びに出た。


「おはようございます佐々木さん」

出来るだけ穏やかに佐々木さんに挨拶をする。


「あらおはよう若い先生」

この前からすれば、佐々木さんお表情はだいぶ穏やかに感じる。


さて、これからどう切り出したらいいものだろう……

「この前おっしゃっていた右膝の具合どうですか?」

あえて脹脛とは言わなかった。


「んー前より腫れ少し増してきたような感じがするんですけど」


佐々木さんを診療台に寝かせ、脹脛の部分を触診する。

確かに脹脛はこの前より幾分腫れ気味だ。


「もう起きての大丈夫ですよ」そう言い佐々木さんを椅子に座らせた。

そしてカルテに目を通して


「佐々木さんこの前三浦医師からの血液検査の結果が出たんですけど、以前からあっ糖尿病の数値が上がってきているんですよ」


佐々木さんはちょっとたじろいながら

「やっぱり……」と呟いた。


「最近あんまり調子よくなかったんですよ」ちょっとしょげた様に言う。


「んーそれと佐々木さん。右の脹脛の腫れ、この糖尿病による合併症によるものかもしれないんです」


「え、」


「と言っても、今はそんなに重度のものではないんですけどね。今から治療に専念して戴ければ改善していく範囲ですよ」


「そうなんですか……やっぱり入院とか必要なんでしょうか」


心配しなげに言う


「出来れば……もう少し詳しい検査も必要になりますし、まずは食事改善の指導うもこれからいていきたいともいます。併せて右脹脛への抗生剤での治療も行います」


「そうですか……」


この前の様な威勢と言うか、わがままと言うか……そんな雰囲気は今の佐々木さんには感じられなかった。


「ねぇ、先生ってこの間まで大学病院にいたんですって」


「ええ、そうですけど、なにか?」


「ううん、研修中でもなさそうだし、この病院で大学病院の先生から見てもらえて、良かったのかもしれないわ。この病院の先生たちも悪い先生じゃないけど、大学病院に行くとなるともの凄く緊張って言うの、するからやだったの。先生なら何となく気軽に話せそうだからいいんだけどね」


そう言いながら佐々木さんは


「解ったわ、入院しますわ」と言ってくれた。


「そうですか、看護師に入院の説明をしていただきます。ご準備もあると思いますのでまた少しお持ちいただけますか」


そして佐々木さんは看護師と共に待合室に向かった。


戻ってきた看護師に

「田辺先生、今日はなんだかいつもの雰囲気と違いますね」


少しからかわれたような感じがしたが、悪気はないようだった。


ようやく外来も終わり、カルテの整理も一通り片付いた頃、佐々木さんの病室に顔を題してみた。


佐々木さんは俺の顔を見ると手を振って迎えてくれた。


すでにオーダー済みの抗生剤等の点滴も施され佐々木さんはベットの上で本を読んでいた。


「どうですか?ご気分とか悪い所はありませんか?」

それとなく聞いてみると


「退屈」


一言にがわらいをしながいう。


「でもね、さっき三浦先生が来て言ってたの。足の腫れ、早く原因が解ってよかってねって。このままだったら切り落とさなきゃいけないかもしれなかったってね。それを見つけたの田辺先生だって訊いたんだけど、あなた若いのに凄いのね。やっぱり大学病院の先生っていうだけの事はあるわ」



「そんなことないですよ。でも良かったです、早く良くなるように頑張りましょうね」



なんだろう、今までとは違う患者との接点。


それに佐々木さんの脹脛の症状、これは真弓が残してくれたノートにも記載があった。


糖尿病治療における外科的目測


まゆみが残してくれたノートはどんな医学症例を記載した書物よりより実践的でわかりやすく幅広く応用がが出来るように配慮されていた。


俺はまゆみが残してくれたあのノートに救われただけだ。


「そはそうと田辺先生」


「なんですか佐々木さん?」


「ほら、向かいの病室のまどかちゃんまだ入院していたのね」


向かいの病室


そこは個室の特別室だった。確か高校生くらいの女の子が入院していると聞いていた。だが俺はまだ、その子とは会ったことも、もちろん話した事さえなかった。


確か担当医は三浦医師だったはずだが……


「済みません、まだここの病院に来てまもなくて全部把握しきれていないんですよ」


「そう、ずっと入院しているから大分悪いのかなぁってね。なんでも心臓良くないらしいって訊いていたから……」


その時はそうなんですか……とただ返して返事をしたが

実際俺自身もあの病室については気にはなっていた。


俺がこの病院いに来てから、まだ一度もあのドアが開いたのを見たことが無い。

どんな子が入院しているのかも何も詳細は分からないままだ。


故意にその子のカルテを探していたわけでもなかったが、あの特別室の患者のカルテだけは目にすることは未だにない。


この病院でも特別室に入ると言う事は、それなりの事情があるのだろうと俺は軽く考えていた。


だがそれから数日後、その特別室にいる子に俺は振り回されることになる。



「田辺先生」


珍しく三浦医師から俺は声をかけられた。普段は三浦医師とはあまり会話はないのだが、その日の夕方医局で俺は声をかけられた。


「田辺先生どうですか、だいぶこの病院にも慣れてきましたでしょう」


少し年配かかった顔つきでいて、いつも思うが三浦医師にはどことなく感じる権威と言うか重圧感と言うか大学病院での教授陣とは違った感じを持つ人だ。


対面で話すとなると少し緊張する。


「おかげさまで何とかやっていけています」


彼は俺の言葉に

「ハハハそうかそれなら十分だ」となんだかいつもと違う感じを受けた。


「今日は何かこれからご予定でもありますか?」


「いえ、特別にありませんけど……何か」


「それならこれから飲みに行きましょう」


「え、」


意外だった。三浦医師から飲みにさそわれるとは……


無下に断る理由もない、ましてあの三浦医師から誘いをしてくること自体断ることはできないだろう。


「はい、喜んで」と快諾した。


向かったのは意外にも三浦医師が行きつけと言う焼き鳥屋だった。


古くからこの地で店を構えている店の柱にはその店の軌跡とでも言うのだろう、炭火で焼き放たれる煙が長い時間を経て沁みつき黒光りをしているような光沢させ感じさせていた。


「田辺先生、今日は私のおごりですからどうぞ遠慮なさらずに注文なさってください」


今日はとてもいい事があったのか、それとも何かの心境の変化かはたまた、俺にとって物凄く悪い知らせがこの場で言い渡されるのか、少しドキドキしながら先に出されたビールで乾杯をする。


「田辺先生、聞きましたよ看護師から。今日来院された佐々木さんの対応良かったそうじゃないですか」


「あ、ありがとうございます」俺としてはそんなにかしこまったことはしていなかったがとりあえず礼を言った。


三浦医師は鶏ももを一口かじり


「ところで田辺先生、特別室の患者さんの事は何か聞いておられますか?」

なんかいきなり来たなって感じがした。


何処で気が付いたんだろうか、俺が特別室にいる患者に少し興味を持ったことを。


ここは無難に


「いえ何も訊いておりませんが」


「そうですか、いやあねぇ、今日言われたんですよあの佐々木さんに。田辺先生にもっと病院の事教えてあげないといけないですよってね」


三浦医師は少し苦笑いをして


「実は、私もあの佐々木さんにはちょっと手を焼いていましてね。来るたびに何かと文句が多い方だったんで。それが今日はころりと変わっていましたから驚きましたよ。田辺先生のご人望でしょうかね」


「そんなことはないと思いますが」


「まぁそれはさておいて本題はここからなんですけど」


俺は俺はジョッキを手にもってぐいっとビールをのどに押し込んだ。


「あの特別室には今16歳になる女の子が入院しています。まぁ年頃の子とでも言うんでしょうかね。私が担当しているんですけど、なかなか私の言う事を訊いてくれなくて最近困っているんですよ。


それで、病医院長に相談してみたんですよ。

病院長は田辺先生を補佐に付けたらどうかと言うんです。先生でしたらまだお若いですから少しは彼女に近づけられるのかもしれないと思いましてね」


「はぁ、若いと言っても私も、もう30歳をすぎていますけど……」


「それを言ったら私よりもずっとお若いですよ」


そして三浦医師は深刻な口調で言う。



「彼女、「秋島まどか」さんは、三尖弁閉鎖不全症さんせんべんへいさふぜんしょう拡張型心筋症 併発しているんです」



三尖弁閉鎖不全症さんせんべんへいさふぜんしょうと拡張型心筋症 併発!




このままでは生存の確率は極めて低い。

そして心臓移植によるドナー待ちの状態でもあった。


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