お題もの、その12
友達がスライディング土下座に近い行動を屋外で行った。
結果一週間くらいは傷痕が消えないんじゃないかってくらいの怪我をした。
「なんで、お前あんなことしたんだよ」
そう怒り交じりに言ってもそいつは終ぞ言わなかった。
学校の校庭、しかも夏だ。
熱いうえに摩擦熱が加わって痛いだけじゃなかったはずなのに。
拷問まがいのことを自分でして、何も言わなかった。
泣くこともしなかった。
保健室に行って先生に治療してもらっている間。
俺はずっと考えていた。
あいつの今回の行動理由を。
謝られることがない。
少なくとも俺はそう思う。
だって別に嫌な事されてないし、イラついた記憶もない。
だからなんで、土下座なのかわからない。
理由も言わないから、訳が分からないわけだ。
いつも不思議な奴だと思っているけれど。
ここまで謎の行動をされると俺も困ってしまう。
友人で居続けられる自信がない。理解者でありたいが、これでは・・・・。
「さて、治療も終わったんだからあんた達さっさと帰りなさい」
「はーい」
無言で俺の方に来るそいつの代わりに返答してやる。
化粧たっぷりの先生はそれ以後こちらを見ようとはしなかった。
学ランとシャツの間に着ている黄色いパーカーが首元と袖から見える。
こんな恰好していても、別にやんちゃしているわけじゃない。
単純にパーカーが好きだから着ている。
こいつはそう言う自分本位なやつだ。
その自分自身が奔放すぎて、不思議悪く言えば変と言われるゆえんだ。
「・・・・帰るぞ」
「・・・・・・・(こくり)」
素直についてくるのかと思いきや、俺の立っていた場所付近から動かない。
その代り俺の学ランの裾を引っ張ってきた。
しかたがないからそいつの右手を握って歩き出したら、今度は素直に付いてきた。
俺の握った手はとても震えていて、握った方が驚くほどだった。
何をそんなに、と思ったらそいつは泣いていた。
「・・・・・いたい」
「そりゃ、そうだ」
「・・・」
「・・・あいつらの言いなりになる必要はないから、もうやるな」
「・・・・うん」
転ぶ前に時間が戻るのならば、俺は真っ先にこいつが転ぶのを阻止するだろう。
こいつの足をひっかけた屑野郎の足をへし折るくらいの何かをしてでも。