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不憫な魔導師様は自由になりたい?  作者: 黄原凛斗
1章:王城狂想曲
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嫌われて




 さて、どうしてこうなった。

 一応魔導師服としての正装ではあるがフードと仮面という、安定の不審者スタイルにも関わらず、声をかけてくる人間は後を絶たない。前回の舞踏会も声をかけられまくって疲れ果てた。興味のないことに時間を取られるのは苦痛でしかない。

 しかも何が一番大変かというと貴族のご令嬢が熱っぽい視線を送ってくることだ。

(ごめんなさい、中身は女です)

 身長が低いことで疑われないのかというと、魔導師は小柄な男性が多く、一際小さい私でも「ちょっと小さいですけど研究者ですし仕方ありませんね」みたいな扱いだった。

(くっ……ダズにーさんはかなり背が高いというのに)

 16歳だからまだ成長する、はず……と信じているが自信はあまりない。片割れは最近どんどん成長していくのでとても不安になる。

 ようやく、一通りの挨拶を終えて解放された。

 と、思っていたが……


「……おい」


 完全にガン飛ばしてきてる男、例のヴィンフリートがいた。

 なぜこんな睨んでくるんだ。

「これはこれは、クリューガー副騎士団長殿。此度のご活躍、お祝い申し上げます」

 適当にそれっぽいことを並べると、ヴィンフリートは不機嫌の最大級とでもいうかのように嫌悪感を示して吐き捨てる。

「ええ、城に引きこもってばかりの穀潰し魔導師殿よりは、俺は役に立ちますからね」

 とんでもない爆弾発言をよりにもよってこの場でぶちかましたヴィンフリート。周囲の視線が一気に集まる。


 うわぁ~……こいつめんどくせぇ……。


「そうですか。これからも精進してください。私ども魔導師団もご支援致します」

「いいえ、結構。得体の知れない悪魔に頼るなど、騎士の恥です」


 うわ、うわぁ~……。こいつ、魔導師嫌いかぁ……。


 仮にも一応公衆の面前で、実績のある魔導師を『悪魔』呼ばわり。相当根深い。

 知性のある魔物も魔法を扱うため、悪魔と呼ばれるのはまあ、昔からある罵り言葉だ。かつて軽視されていた魔導師を嫌う人間は少なくはない。だが、表立って口にする者も減ってきた昨今、まさかこんな場で言うか。

「おいっ、ヴィン! お前、馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!」

 そんなヴィンフリートにげんこつをお見舞いしたのは白百合騎士団長のイマヌエル・バッケスホーフ殿。壮年の男性で、威圧感はあるが、魔導師とは対等に接してくれる爽やかなオジサマというやつだ。騎士団内ではかなり厳しい人物だと聞いたが。

「申し訳ありませんシクザール殿。こいつ……ヴィンはまだ城に来たばかりで何も分かっていない田舎者でして……ご容赦ください」

「いえ、お気になさらず、バッケスホーフ殿。クリューガー殿は実力のある新鋭と聞き及んでいます。これからの更なる活躍を期待していますよ」

「気安く俺の名を呼ぶな、魔導師!!」

 そう叫んで、ヴィンフリートは近くにあった飲み物をグラスごと投げつけてきた。思ったより速く飛んできたグラスを避けることも、魔法で防ぐこともできず、顔……というか仮面の左斜め上あたりに激突した。幸い、衝撃で仮面は外れなかったが、少しヒビが入ったのと、ワインの染みがフードと仮面についてしまった。

 ようやく理解した。こいつ、駆け引きのできない馬鹿だ。

 純粋な貴族ではないからって、いくらなんでもこの醜態はないだろう。無言で立っていると、バッケスホーフ殿が顔を真っ青にして頭を抱えていた。

 流石に、これは怒っても許されるはず。


「……場も分も、弁えられない小僧が」


 思ったよりも低い声が出て、自分も驚く。今自分がどんな表情なのかわからないが、間の抜けた顔だろう。しかし、一番驚いたのはバッケスホーフ殿のようで、優しそうな彼にしては珍しく真っ赤に怒った顔でヴィンフリートを叱責した。

「ヴィン!! お前は何をしたかわかっているのか!!」

「団長! でも魔導師は――」

「馬鹿野郎が!! お許しくださいシクザール殿。此度の部下の暴挙、私の首に免じて――」

「……貴方の首を落としたところで私のローブについた染みが落ちるわけでも、この祝いの席が賑わうこともないのですが?」

 というより、エーリヒの機嫌が直るわけでもないというのが本音である。

 エーリヒは先ほどから、外面は取り繕っているものの、ヴィンフリートに尋常ではない殺意を向けている。

 ――殿下、その目はやばいから。周りの令嬢が見たら引いちゃうから。

 ため息をつきながら私は指を鳴らす。ローブの染みは一瞬で消え、仮面のヒビも即座に修復された。それを見て、ヴィンフリートは更に嫌悪感を増したような表情になる。

「私はどうやら邪魔者のようですし、これで失礼しますね。皆様は今宵の祝賀会をお楽しみください。それでは」

 ヴィンフリートは未だ憎々しげにこちらを睨んでくる。主役は騎士たちなので自分が居座る必要もないだろう。

 ヴィンフリートの視線を背中に感じながら、祝賀会を後にし、人目を避けて中庭へと向かった。



史上最強に空気が読めないうえに建前が使えないヴィンフリート。まだこいつは本気を出してry

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