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不憫な魔導師様は自由になりたい?  作者: 黄原凛斗
3章騎士と魔導師の行進曲
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歓迎されているらしい



 騎士の宿舎は平民や地方から出てきた者への住居提供のようなもので、貴族出身なんかは特に自宅が地方だとここに住まう。と、いってもやっぱり階級によって若干住居の内部に差があるらしい。

 グリーベル殿は確か貴族だったはずだがグリーベル家なんて貴族あったっけ? 記憶にないので結局どこの人間かはわかっていない。調べれば多分わかるだろうがそこまででもないし。

 宿舎に足を踏み入れた瞬間視線が集中して居づらい。そりゃ仮面とローブの人物が入ってきたら知っていても知らなくてもつい見てしまうだろう。騎士たちは非番なのかラフな格好をしており、各々談笑していたのか私物を持ち寄っているように見えた。

「あの、グリーベル殿へ見舞いに参ったのですが」

 宿舎の入口に受付の人がいたので声をかける。するとちらちら見ていた視線が遠慮なくこちらに向けられ、もはやチラ見は誰もしていない。

「シクザール様! グリーベルさんに会いに!?」

「あ、あー……まあそうなんですけど」

 下級の騎士ってどんな口調がいいんだろ……あんまりへりくだりすぎるのもなぁ……でもまあこれくらいなら波風立たないか。

「おい! 聞いたか!!」

「ああ! 嫌魔導師派ども全員下げろ!!」

「すぐにお連れしろ!!」

 え、なんで厳戒態勢敷かれてるの?

「すみませんシクザール様! こちらです、ご案内します!」

「は、はあ……」

 統率のとれた騎士四人に連れられ騎士の宿舎の廊下を歩く。どうやら貴族や役職持ちの住まう場所らしく小綺麗だ。

 一番奥の部屋は特に豪華というか、洒落の効いた意匠が施された標識と扉――っぽいものが見える。なぜ扉っぽいかというと一度壊されて無理やりはめ込んだようになっているからだ。

 その扉っぽいものに騎士の一人がノックをする。が、返事はない。

「グリーベルさん。シクザール様をお連れしました」

 ……無言。動いた気配はない。

 騎士の一人が困ったように唇を噛む。

「グリーベルさん! シクザール様がお見舞いに来てくれましたよ! 出てきてください!」

「そーっすよぉ! シクザール様がいらっしゃったんすよー!」

「だからそろそろ引きこもるのやめましょう! シクザール様に笑われますよ!」

「マルクせんぱーい!! もうからかいませんからぁー!」

 騎士たちが勝手に盛り上がるのは勝手だけどこの四人に囲まれながらじっとしてるのが地味に鬱陶しい。

 ぎゃーぎゃー騎士たちが騒いでいると部屋の中からガタッと音がし、全員さっと後ろに下がった。一人前に出た形になり、一瞬困惑するが扉がガタガタ音を立て出して後ずさると同時に扉が内側から蹴破られる。



「うるせぇ!! いい加減にしろよてめぇら!! 人が優しくしてりゃつけ込みやがっ――」



 いらだちがありありと現れた声とともに姿を現したグリーベル殿。

 目が合い、グリーベル殿は硬直し、パラパラと木片が落ちる音だけがやけに耳に残る。

「…………」

「お久しぶりです、グリーベル殿。思ったより元気そうで安心しました」

 しかしグリーベル殿は何も言わない。まだ体調がすぐれないのか?

「…………」

「大丈夫ですか?」




「……………………すみません死にます」




「え」


 突然自殺宣言されると同時にグリーベル殿が部屋に駆け込み、騎士たちもそれを追う。



『放せ!! 死なせろ!』

『ダメです! あなた死んだらどれだけ損害になると思ってるんですか!!』

『死んじゃだめっすー! あ、お前首吊り縄奪え!!』

『がってん承知!!』

『放せぇぇぇぇぇぇ!!』

『先輩! シクザール様も困ってますよ! 落ち着いて!』



 すごい不穏な会話しか聞こえない。

 騎士団の未来が心配になってきた。



騎士たちに一応名前は考えているけど多分出すことはないと思うのでここで適当に明かしておくとハインリヒ・ヨーゼフ・ルドルフ・ヘッジの四人。

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