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不憫な魔導師様は自由になりたい?  作者: 黄原凛斗
3章騎士と魔導師の行進曲
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信用されていないらしい




 あの事件以来、グリーベル殿が引きこもっている。

 原因はよくわからないが騎士の宿舎にある副団長の部屋で引きこもり生活をしているらしく、食事をたまにしているらしいがいつどうやって摂っているのかは不明で仕事も有給でずっと出ていなかったがそろそろ有給も切れ、仕事をサボるにまで至ったらしい。


 ていうかそういえば最近見なかった……。偶然会わないだけかなって思ってたけどまさか出勤してないって……。


「というわけで、一度グリーベルの見舞いに行ってくれないかい?」

「別に構いませんが……」

 なぜ私。

 メルサーニ殿は何を考えているかわからないところがあるから裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。グリーベル殿はもちろん心配だが。

「まあ、やつに早く復帰してもらいたいだけさ」

「それはわかりますが……私が行ってなにか変わるんでしょうか? その筋の医者やカウンセラーの方がよいのでは……」

「……グリーベルもかわいそうに」

「なにかおっしゃいました?」

「いや、こちらの話だよ。まあ、二人は仲がいいというし? 僕や部下たちが何度見舞いにいっても出てこようとしないんだよ。あ、一度出てきてすぐまた引きこもったか……」

 それからなにやらブツブツと言っていたがよく聞こえないので割愛する。

 そんな感じでグリーベル殿の見舞いを頼まれてしまった。

「それで? まさかそれだけのために呼んだわけではないでしょう?」

「うん? それだけだよ?」

「……え?」

「え、だって例の女はそっちの管轄だし、今は遠征に行くのも危険だからしばらく禁止されているからね」

 まあ確かに特に用事はないだろう。まさか本当にこれだけのために呼び出されたのか。

 いや、でも冷静に考えたら副団長の中でも最強の一角と言われるグリーベル殿が職務放棄って結構重大なことなんじゃ……?

 なるほど、重大任務だからわざわざ呼んだのか……。

「それじゃ、近いうちによろしくね」

「は、はあ……」

 なんだかよくわからないけど、グリーベル殿のことも心配だし、まあいいか。







 研究所に戻り、途中だった作業をしながら不機嫌そうなダズに先ほどの頼まれた内容を説明する。

「ってわけで、私はこれが終わったらグリーベル殿のところ行ってくるね」

「……行かないでくれ……」

「にーさん……」

「頼む。あの人の所に行くな」

 肩を掴まれてその気迫に一瞬気圧される。

「頼む……!」

「にーさん……」


「騎士の大勢いる宿舎なんて行ったらまた喧嘩するかもしれないだろ!!」

「しないよ!?」


 なんか今真剣な空気だったから真面目に返してたけどひどすぎる。さすがに喧嘩売って歩いてるみたいなイメージを持たれるほどひどくないはず。

「だいたい騎士の宿舎ってことはあれだろ。嫌魔導師派だっているんだぞ? お前そいつらの陰口に何もしないって誓う?」

「当たり前じゃん。雑魚の戯言だよ」

「じゃあもしクリューガーと遭遇したら?」

「…………」

「ほらダメ! 絶対に行かせねぇからな!!」

 両肩を掴んでぐわんぐわん揺さぶられる。よっぽど喧嘩の仲裁に呼び出されたのが辛かったのだろうか。

「さすがに宿舎は大丈夫でしょ……。だってあの馬鹿が宿舎にいるはずない時間教えてもらったし」

「それでもなぁ……お前があいつと喧嘩したって聞いたときはぞっとしたんだぞ……」

「にーさん、そんな心配しなくても――」

「お前が城をどれだけ壊してるか心配で心配で……」

「そこで私の心配しないあたり信頼されているのかな?」

 ちょっとくらい心配してくれてもいいと思う。

「だいたいお前があいつに負けると思ってねぇよ。あいつは確かに優秀だし一度試合を見たこともある。でも今のままだとあいつはエルに勝てねぇよ」

「身内の欲目ない? それ」

「ないよ。グリーベル殿とかだとお前でも心配だけど、あいつは相手次第では無理」

 真剣な表情で断言されてしまい続く言葉が見当たらない。グリーベル殿の試合は見たからなんとなくだがわかる。しかし、ヴィンフリートの実力はいまいちつかめずにいた。

「まあ、あいつとの喧嘩ならお前の心配はしないよ」

「それもそれで悲しいんだけど」

「だいたい、お前に危害を加えられる人間なんてこの国に5人もいねぇだろ」

「10人はいるはず」

「大差ない」

 そんなやりとりをしつつ魔法陣を完成させ、乾いたのを確認してからくるくると巻いて紐で結び、空いている引き出しに入れてダズを見る。

「にーさん……私だって女だよ?」

「俺はお前がもし暴漢に襲われたって聞いたらまず暴漢の生死を確認する」

「にーさんは人のことをなんだと思ってるのさ!」

「エルはエルだよ!」

 そのセリフは今使うべきじゃない気がする。

「それと、女だよ、ってセリフはもう少し女らしくなってから言え。なんだあの部屋。片付けとかもっと――」

「あーあーあーあー! 聞こえないー!」

「あと服装とかに関しては仕方ないとしてそのボッサボサの髪はなんだよ! 手入れまでしろって言ってるんじゃないぞ! せめて朝櫛を――」

「グリーベルさんのところ行ってくる!!」

 ダズの話を聞こえないふりをして見舞いの品を入れておいた袋を乱暴に掴んで研究所から出る。なにか聞こえた気がするけど聞こえません。聞かない。

「ダズにーさん最近口うるさすぎ……」

 愚痴をこぼすほど最近はひどくなっている。いつからだろうと考えるが思い出せない。気づいたらうるさくなっていた。

「そんなんだから彼女できないんだよって言ったのが悪かったかなぁ……」


 見当違いにもほどがあるのだが思い込んでしまっエルはあとで女性を紹介すれば収まるかも、などと考え、後に更に不機嫌にさせてしまうのだがそれはまた別の話。



ダズとテオの話を書きたかったのに騎士メインになってしまう……。テオの影が薄い……。

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