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不憫な魔導師様は自由になりたい?  作者: 黄原凛斗
2章:赤の国の使者
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ぶつかりました




 あ、あぶねええええええええええええええええええええええ!!


 どうやら魔女の使った原初の魔法は『異性のみ』に効果をもたらすものだったらしい。

 男だと思われている以上、そりゃ使うよな、うん。聞いた限りだと効果が発動すればほぼ思いのままに操れるんだし。

 結果、同性のため無効となり、おそらく初めて同性に使ったから失敗したと気づかず、調子に乗ってたんだろうけどごめん、ほんとごめん期待はずれなことして。

 あまりに嬉しそうにペラペラ喋るもんだからちょっと様子見ちゃったよ。ていうか背後とれちゃったし。

 コルヴォは気づいてるしなんかすごい気まずい。

「あたしは魔女!! フィアンマの後継者を暗殺するよう我が主に命じられた桃色を司る魔女ラペーシュ様よ!」

 は? 魔女? それマジで言ってんの?

 まあいいや、とりあえずこれで充分。

「うん、もういいよ。聞きたいこと聞けたし」

 さくっと手のひらに麻痺効果のあるエンチャントをかけてラペーシュの首筋に触れる。

 即効果は現れ、崩れ落ちるラーペシェと同じくして騎士たちも倒れていく。術者が魔力をうまく操作できないとダメな感じか。それにしたってこの魔法は強い。

 自分でも複数人を操るなら最大4、5人が限度だ。魔力が足りないだとかそういうわけではなく、単純にそういう術式がないし、未だ組めていないからである。

 さて、なんで操られてないのか言い訳考えないと……。

「な……ん、で……?」

 ラペーシュが震える声でこちらを睨む。うん、まあ、男だと思ってたら仕方ないかなぁ……。男だったらこれはちょっとまずかったと思ってるし、相手は間違ってないと思う。

 でも、相手が悪かったとしか……。

「うん……えっと、操られてはいないかな……」

 コルヴォは特に驚いた様子もなくため息をつく。途中というか割と初めから気づいてたよな。

 ラペーシュを念のためぐるぐる巻きに縛って魔法で更に上書きで拘束し、彼女を見下ろす。

「ま、運が悪かったよ。私には効かなかったってことで」

「ピロ ロロロ プリ ペレ パララ ルルル! ピロ ロロロ プリ ペレ パララ ルルル パパラ!!」

「うん? ごめん、私その言葉知らないからわからないから怖くないぞ」

 こうして聞くときの抜ける言葉だなぁ……。

 一応なにか喚いてるっぽいけど多分確実に怒ってる。呪文ではない。魔力の流れをこちらの魔力で塞き止めているから魔法は使えないはずだし。

 うるさいし気絶させとこ。

 眠り魔法をかけて騒いでいたラペーシュが言葉を失いがくりと項垂れる。これで大丈夫なはず。

「おう、一瞬ヒヤッとしたぞ」

「うん、正直私もヒヤッとした」

 コルヴォが近づいてきて軽口を叩く。まあ、一瞬操られたと思うよねぇ、あれ……。

 実を言うと立ち上がろうとしてラペーシュの魔力が体中に流れ込み、他人の魔力のせいで酔ってしまったのだ。おそらく、魔力を媒介にして他人を操る魔法なのだろう。魔力を流し込むところまでは問題なかったのだが、性別というポイントに阻まれ、術が作動しなかった。

 ので、最初うまく動けなかったからうまいこと勘違いされてしまったらしい。

「で……コルヴォ」

「うん?」

「あれはどういうことだぁぁぁぁぁ!?」

 びしっと指さしたのは先ほどヴィンフリートと戦っていたなんだか覚えがあるような謎の気配の主。というか――

「なんでフレーズここにいるの!?」

「あ、エルさん」

 侵入者だよね!? 魔女の仲間じゃないの!? そういえば魔女に操られた騎士と戦ってたけど!?

「あ、フレーズは俺の従者だ」

 あっさりと言う。

「おせぇよ!! 先に言え!! 勘違いしただろうが!! というかなんで侵入したの!? 表から身分証明書出せば入れるよね!?」

「え、入れてもらえなかったので壁登りました」

「他国の!! 要人の!! 従者が!! 城壁乗り越えて!! 侵入するな!!」

 どうりで侵入されても害意敵意がないわけだ。客の従者で目的まではわからないがなんらかの意味があって入ったなら結界がほぼ無反応になるのもわかる。

 でも勘違いされるからマジでやめて。

「おい」

「だいたいお前も従者の教育くらいしろよ!! 自分の国ならいざ知らずここは他国で何かの拍子に敵対するかもしれねぇんだぞ!!」

「おい」

「いやー、城に連れてくると面倒だと思って城下町で情報収集させてるやつらと一緒に待たせていたんだけど……。そういえばフレーズ、なんで来たんだ?」

「おい」

「筆頭に城内の旦那様が危ないかもしれないと言われて……城の騎士が操られているとも。なので騎士の方が信用できなくてつい数人……」

「おい」

「騎士ぼこったのか……困ったな……あとでグリーベル殿にも――」


「聞けよお前らああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 ヴィンフリートが持っていた剣を情報共有する自分・コルヴォ・フレーズに向けて投げつける。咄嗟に結界障壁で剣を弾くが騎士よ、それでいいのか。剣大事にしろよ。

「危ないでしょうが、クリューガー殿」

「その女は侵入者だぞ! というかその男は誰だよ!」

 あれ、警備担当なのにヴィンフリートと顔合わせてねぇの?

 そういう意味を込めてコルヴォを見ると「あー」という声とともに耳打ちされる。

「入城したときにあいつじゃなくて団長殿が取り次いでたから……ちょうどあいつは城内警備してたっぽい」

「あー……あいつ大の魔導師嫌いだからなるほどね」

 他国の要人に万が一ヴィンフリートが粗相を働いたら大変だ。バッケスホーフさんもそれを恐れてコルヴォとヴィンフリートを会わせないようにしたのだろう。それは正しい。

 が、今回は面倒な理由になった。

「おい、魔導師! 聞いているのか! その魔女とかいう女も――」

「やかましい。この方はロット国の大魔導師、コルヴォ・マーゴ・ケイト・フィアンマ様だぞ。客人だ。少しは頭を垂れて静かにしてろ」

 ヴィンフリートしゃべると面倒だし黙ってて欲しい。



 次の瞬間――飛来する剣がフレーズに迫り、魔法を使う間もなくそれをどうにかフレーズから守ろうと前に出て、仮面が割れる音とともに意識を失った。






数日前。

エル「仮面脆いからもっと丈夫なのにしようかなぁ……」

ダズ「あの騎士の力が半端ないだけでその仮面は相当丈夫だからな」

エル「まあヒビ程度だったし平気かー」

このザマである。

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