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不憫な魔導師様は自由になりたい?  作者: 黄原凛斗
2章:赤の国の使者
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対応を押し付けられました

 日程が地獄だ。


「眠い眠い眠い眠い眠い」


 なぜこんなことまでしなくてはならないのか。


「フィアンマ呪い殺したい呪う呪う呪う呪……」

「エル、落ち着け。仕事は減らない」

 冷静なダズの声に引き戻されてはっとするが再び眠気に支配される。


 今すぐに寝たい。



 事の発端は赤の国ロットからの唐突な手紙だった。





 先日、殿下に急に呼び出され、お茶会のような出迎えをされかと思いきや真剣な表情でとんでもないことを告げられた。

「今、なんと?」

「だから、ロットの大魔導師が来るからその間、魔導師団は対応よろしく」

「……は?」

「いやだから」

「ロットの大魔導師……フィアンマの?」

「そうだけど」

「…………コルヴォ・マーゴ・ケイト=フィアンマ?」

「フィアンマは今彼だけでしょ」

「……」

 大魔導師、コルヴォ・マーゴケイト=フィアンマ。魔導師の中でも特に抜きん出た才能を持つ若い魔導師であり、フィアンマ家現当主。

 数年前、建前上は事故により一族の当主候補が軒並み死亡。当時、まだ若かった彼が引き継ぎ、頭角を現して大魔導師として知れ渡った。研究は炎がに関することが主軸であるが、どちらかといえば武の国であるロット国の血のせいか、前線に出ることを好む戦士でもある。

「で、いつ来るんですか」

「二日後」

 飲んでいた紅茶を盛大に吹き出してエルはしばらくむせる。二日なんて想定外だった。

「二日!? もっと事前に連絡なかったんですか!?」

「どうやら向こうの方が書簡を出すの忘れてたらしい。まあ、二日も準備期間あるし――」

「今すぐ研究所に戻ります!!」

 まず、魔導師なので研究所に訪れるであろう。それは当然だ。そして対応もするのでほぼ研究所に入り浸るのは間違いない。王城の対応だってそこまで長くないだろうし。

 つまり、研究所に長時間留まるということは――


「研究所を今すぐ片付けないと!!」


 部外者が来ることを想定していない研究所はとてつもなくごちゃごちゃしているのであった。






 研究所で二日以内にどうにかしなければいけないこと。

 まず第一。他国の魔導師に不用意に手を明かすわけにもいかないので目につくところに資料は置かない。重要な研究や儀式などは隠す。

 更に第二。きちんと掃除する。ここ近年特にひどかった汚部屋ぶりをどうにかしなければまがりなりにも他国の名門貴族で大魔導師を招き入れるわけにはいかない。

 そして第三。相手の求めてくることは恐らく魔法に関する知識の共有や共同研究だろう。これらをこちらもある程度まとめておかなければいけない。


「とりえあえず、私は資料とかのまとめと整理、それに向こうに提示する新魔法と共同研究の資料作成するから」

「了解。俺は掃除の方やってるから何かあったら呼べよ」

 ダズが苦笑気味に掃除道具を持って言う。あとは他のメンバーにも仕事を割り振って分担作業。

 なお、デーニッツ爺こと魔導師団長は別件でほとんど関わらないらしい。なので今回の応対も恐らく私がやらされるのだろう。

 まあ、相手もどうせなら同じ大魔導師と呼ばれている方を相手したいだろうし。


 そんなわけで資料作成。

 これがものすごくだるい。

 あまり情報を出しすぎるのもどうかと思うが出さないのもまずいし、恐らくむこうは「シクザール様ならもっと研究していますよね?」とか言いそうだし。

 大魔導師相手に嘘をつこうとするのはさすがに厳しい。本当に相手にしたくない。

「とりあえず……現段階で出しても良さそうなのはこれとこれとこれと……」

「あ、エルさん。こっちの研究ってこっちの棚でいいんでしたっけ」

「ああ、それは今整理して向こうの赤棚の右から二番目に移動しておいて。ごめん」

「わかりました」

「エル様ー。この儀式なんですけど今移動すると……」

「あー、それはとりあえず置いといて。後で空間魔法でどうにかする」

「エルー」

「はいはい」

「エルさーん」

「はいはいはい」

「エル様―」

「…………





 お前ら人ばっかり頼るな。





 そしてこの修羅場に至る。

「寝たい……寝たいんだよ……資料作成が終わらない終わらない終わらない」

「……寝てしまえ。そもそも向こうの伝達ミスが原因だろ?」

 ダズが呆れたように声をかけてくる。だからといってこちらが手を抜くわけにもいかない。

 研究所はおおかた片付いたが資料作成が間に合わない。もう明日に来るというのに。

「いや待て、明日って言ってもまず陛下との謁見とで多少時間食うだろうし……それまでに完成させれば……?」

「そのギリギリまでやろうとする精神は見事なんだが無理すんな」

「シャイセシャイセシャイセシャイセ」

「わかったから落ち着け」

 その夜は結局ダズに叱られ、早起きして資料作成をすることになる。



別作品を見ていると何とも言えない気持ちになるであろう2章。

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