表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストマーブルズ  作者: CoconaKid
第九章 騒がしい周り
46/62

 しつこくキノに攻撃を仕掛けていたリルだったが、それも駅についてからはピタリと止んだ。

 一人だけホームの乗り場が違うことに気がつき、そこで敗北してしまった。

 それでも別れ際に「今度遊びに行くから」と捨て台詞を吐いていた。

 やっとリルと離れられ、キノはほっとするも、唯一の弱みを責めるやり方は、誰かがそうするように仕向けたと思わざるを得なかった。

「それにしても、リルって変わってるな。無愛想で、同じこと何度も繰り返すなんて、あれは病的な嫌がらせだな。キノも約束の日だけ決めて、その間に家の中片付ければいいじゃないか。友達になりたいんだろ」

 トニーがアドバイスする。

「だから、リルが家に来るのが困るの。私にも事情ってものがあるの」

「ふーん、なんかケチだな」

「ケチで結構です」

 キノは首をプイッとそむけて、怒ってしまった。

 トニーは慌ててジョーイに助けを求めた。

「おい、ジョーイ、さっきから黙り込んでどうしたんだ?」

「えっ、別に何でもない。ちょっと考え事をしてたんだ」

「あっ、そうか、今晩の夕食のことか」

 説明できるような話ではなかったので、ジョーイはそういうことにしておいたが、キノが気掛かりに視線を向けた。

 ジョーイはキノを見つめた。

「そういえば、ここでキノはビー玉をばら撒いたんだっけ」

「そ、そうね」

 恥かしいことなのか、気まずそうにキノは俯いた。

「あのビー玉の一つが、ずっと転がり続けてるんだ」

「えっ?」

「いつか、それを見つけられるだろうか……」

 その言葉の裏に秘めた思いを乗せ、ジョーイの瞳は真実を求めていた。

 深く問いかける瞳で見つめられ、キノの口許は微かに震えている。

 寸前まで声が出掛かっているのを、無理に押し込めているようだった。

「あー、腹減った。おい、ジョーイ、今晩何を食べる?」

 トニーの声にあっさり邪魔をされ、そして電車が入るアナウンスが流れると、全てがなかったことのようにされた。

 複雑な思いを抱え、ジョーイとキノは電車が入ってくる方向を無理して見つめていた。


 乗り換え駅で降り、連絡通路を歩いていると、ジョーイは後ろから目を覆い隠された。

「だーれだ」

「詩織……」

 目を覆った手を払う気力もなく、ジョーイはされるがままになっていた。

「当たり~」

「こんな時間にここで何してんだよ」

「それはジョーイも同じでしょ。ハーイ、キノちゃん。元気?」

 相変わらず、キノにもベタベタと触り、キノもタジタジとしていた。

「おっ、すげぇ、美人。俺、トニー、ジョーイの親友。よろしく」

 白鷺眞子はどこ行ったんだとジョーイは突っ込みたくなる。

「初めまして、私は詩織。日本語上手いんですね」

 トニーは謙遜することなく、得意げになっていた。

「ジョーイ、結構隅に置けないな。俺の知らないところでこんな美女と付き合ってたんじゃないか」

「そんなんじゃねぇーよ」

「もう、ジョーイったら照れることないでしょ。私はいつでも付き合ってもいいんだから」

 甘えた声で、詩織はジョーイの腕に自分の手を絡ませた。

「おい、やめてくれ」

「あれっ? キノ、リルの時と違ってここはジョーイを取り合わないのか? キノもジョーイのことが好きなんだろ」

 キノはトニーにいきなり話を振られて驚いていた。

「嘘、やだ、キノちゃんもジョーイの事が好きだったの? えー、そんな。ジョーイはどう思ってるの?」

 詩織はまさかの事態に動揺していた。

 妹のように可愛がっているキノが、ジョーイを好きだとは考えたことがなかった。

 キノもこの流れに慌てていた。

 ジョーイはどう答えて良いのか言葉すら浮かんでこなかった。

 それをじれったいとトニーは口を挟む。

「ジョーイ、これははっきり言った方がいいぞ。キノが好きだって……」

「おい、トニー、バカ、何を言うんだ」

「だって、お前、言ってたじゃないか、キノが気になるって」

「だからってトニーがここでいうことじゃないだろっ!」

「ええー、ジョーイもキノちゃんが好きなの? 嘘」

 詩織はショックで泣きそうになってしまい、キノも眼鏡の奥で目を丸くしている。

 とんでもないことになったと、冷静なジョーイですら困り果てて慌ててしまった。

「こういうジレジレするの俺嫌いなんだ。はっきり言えば事が収まるんだから、いい機会だはっきりしろ。ここでキノと付き合え」

「トニー、いい加減にしてくれ」

「そんな、キノちゃんとジョーイが両思いだなんて」

 詩織はとうとう泣き出してしまった。

「詩織さん、ちょっと泣かないで」

 キノはなだめようとするが、いい言葉など何一つ浮かばず、おろおろしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ