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ロストマーブルズ  作者: CoconaKid
第九章 騒がしい周り
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 下駄箱で待っていたジョーイの下に、だるそうにトニーが歩いてきた。

 ジョーイを見るなり、「参った」と頭を掻いて、取り繕っていた。

「シアーズと何喋ってたんだ? もしかして日曜日酒を飲んだことばれてたとか」

「ジョーイ、大きな声で言うなよ。ばれたら停学になるだろうが。違うよ、野暮用さ。眞子ちゃんに現を抜かすなとかな」

 トニーは適当に誤魔化していたが、眞子のことでは嘘ではないのでちょうどいい理由となった。

「なるほど、そっちか。だけどあの白鷺眞子はおっとりしたフリをしてるだけでなんか信用置けないタイプだぞ」

「ジョーイは堅物だから大人の女の魅力がわかんないんだよ」

「まあ問題だけは起こすなよ」

 二人が外に出ると、隣の校舎からキノがリルに追いかけられる形で出てきたのが目に入った。

 激しく口論し合い、二人は揉めている。

「やっぱりあいつら喧嘩してたのか」

 ジョーイが呟いた。

「どういうことだ?」

「それがさ……」

 ジョーイはリルの過去の話も含めて、どういう状況か説明してやった。

「へぇ、三角関係か。だけどそれならジョーイとキノはお互い脈ありって事になるぞ」

「だけど、キノもただ面白半分に三角関係を作ってるって感じなんだ。リルだって、過去の記憶を補おうと俺に執着してるみたいな感じがして、二人とも俺のことが好きだからっていう理由じゃないかもしれない」

「なんかややこしいな」

「俺もなんか訳分からないんだ。俺も同じようなもんだし」

「お前の場合はアスカが気になってるもんな。それがキノと重なるんだろ。だけどそのアスカって一体何者だったんだ」

「それが分かれば俺もこんなに悩んでないよ」

「そっか、ジョーイは過去に何かに巻き込まれて、真相を隠されたって感じだな」

「真相を隠された……」

「隠されたんだったら、それを思い出されるのを誰かが恐れていたりして」

 トニーはちらりとジョーイに視線を向けた。

「まっ、俺には関係ないけどね」

 これ以上の責任は負いたくないと、トニーは逃げるようにキノとリルの方に近寄った。


 隠された真相。

 それは、ジョーイをハッとさせるには充分だった。

 ヒントとしてギーから渡された大豆。

 少なくともギーは、その真相を見つけろと言い寄ってきた。

 何かの真相がそこにはある。

 ジョーイは考え込んでしまった。

 そんな真面目に悩んでいる時に、キノとリルの言い合いが聞こえてきた。

「リル、しつこいわね、いい加減にして!」

「別にいいじゃない。キノも頑固ね」

「お嬢さん達、何を言い争ってるんですか。ジョーイの取り合い?」

 面白半分にトニーが割り込んだ。

「違うの、リルったら私の家に今から遊びに来たいとか言うんだけど、嫌だから断ってるの」

「だからなんでそんなに嫌がるのよ。高級マンションに住んでるくせに。だったら理由を教えてよ。そうじゃないと納得できない」

「リル、しつこいわね」

「なんで急にそんな話になってるんだい? でも俺も一緒に行きたいな」

 トニーも入り込んでキノは辟易してしまった。

「嫌よ、絶対いや」

「どうしてそこまで、ムキに嫌がるの? もしかして汚な部屋とか?」

「リルも突然どうしてそんなこと言い出すの?」

 どちらも引けを取らずに、ぶつかりあっていたが、リルはそれを楽しんで嫌がらせしているようにも見えた。

 キノの弱点を突いた攻撃。

 それがリルの憂さ晴らしにも思えた。

 案外と下らない理由だったので、トニーにはつまらなく、最後は呆れて放っておいた。

「おい、ジョーイ、何モタモタ歩いてんだよ。さっさと帰るぞ」

 一斉に三人からの注目を浴び、ジョーイはモヤモヤする気持ちを抱えたまま、無理に彼らの側に駆けていく。

 キノがジョーイを見つめると、リルはそれに対抗心を燃やし攻撃し始めた。

 トニーは巻き込まれても嫌だとスマートフォンを弄りながら先頭を歩き出した。

 日は暮れかけて、空が群青色に薄暗くなっていく。

 四人は夕暮れの中、闇に飲み込まれていくように黒いシルエットになって歩いていた。

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