本の少女(4)
抱えていた本を杁夜は床に落とした。
「いっ、痛いー!」 本からは少女の声がする。
「た、…たたた田辺さん!?」
―いくら魂が閉じ込められてるからって 喋るなんて聞いてないぞ!
杁夜は田辺をびっくりしながら睨み付ける。
「私だって、…まさか喋るなんて思わなかったし。」
「思わなかったし。じゃないですよ、コレ!」
杁夜は本を指差して 叫ぶ。
「まぁ、レディに指を差すなんて失礼しちゃう!」
少女の言葉を聞いて、杁夜はガクッと項垂れた。そして店の隅に行って体育座りをして何かブツブツ 言っている。
「…もう、…どうすりゃいんだよ、俺。 あー、…コヨミさんから本なんて…」
「もう一度言うけど ご主人、…貴方これから命を狙われます。何故なら…、私を手に入れちゃったからですぅ☆」
「なんでだよ!」
杁夜は立ち上がる。
「なんでと言われましても、コヨミ様から貴方にご主人が変わったんですから仕方ありません。」
「だから、なんで俺がコヨミさんからお前をもらったからって命狙われんだよ!」
うーん…と唸り少女は言った。
「そこのご老人、ご主人に魔法界の話はしたんですよね?」
田辺さんはあぁ、と頷く。
―そうだ、昨日…
『まず暦ちゃんと僕らの通じる世界は魔法界と言って僕はそこの本の売買、そしてこっちの世界と魔法界とを繋げる役目をしてる。』 『はぁ、…それでこの本はあっちの世界のって訳ですか。』 『まぁね、それ、本当は禁書なんだけど暦ちゃんどうやって手に入れたんだろ。 』
『えっ!それってマズイんじゃ…』
『うん、でも僕も岬君もただの人間だから多分大丈夫だよ。』
『えっ、コヨミさんは?』
『魔女だよ。』
『えー!?』
『でも万が一って事あるから気を付けてね。もしかしたら本に取り込まれる事もあるから。』
「やっぱり大丈夫じゃないんですね…」 杁夜は田辺に半泣き状態で言った。
「確かに、普通の人間が禁書を所持するぐらいでアイツ等は殺しに来たりしませんけど、私を所持しちゃうとなるとある戦争に巻き込まれるんです。」
「戦争!?」
「…君が喋った時点でまさかとは思ったけど。」
「えぇ、…。」