本の少女(1)
時刻は午後4時。
学校が終わった後、杁夜は古本屋にバイト来た。
「こんにちはー。」 「はーい、いらっしゃい!」店の奥から黄緑色のエプロンをかけた老人が出てくる。この店の店主、田辺さんだ。
「あぁ、岬君か。待ってたよ。」
そう言って杁夜に同じ黄緑色のエプロンを渡す。
「あ、どうも。…あの、昨日の事なんですけど…。」
杁夜は遠慮がちにきいた。
「コヨミさんからもらった本、…読めな くて。コレどういう本なのか分かりますか?」
学生鞄から一冊の本を取り出す。
緑色したそれは表紙に金色で何かの植物が描かれている。
しかし、背表紙と裏表紙にはなにも描かれていない。
受け取った田辺は難しい顔をした。
「これは…。」
本を開いてみる。
そこには異国の文字が刻まれていた。
「それってどこの国のものですか?」
「…。」田辺は無言だ。
「…田辺さん?」
杁夜は田辺の顔を覗いてみる。
すると、決心したかのように頷き田辺は 口を開いた。
「君は、…この先どんな事があっても後悔しないか?」
真剣な表情の田辺に杁夜はたじろいだ。
―そんな、イキナリ言われても…。
この本を手にしたのがそんなに重大な事なのだろうか…?
「あの、…何の事です?」
「何が起きても逃げ出さないか?」
―何を言ってるんだ?田辺さん…。
「もし…。」
「もし?」「この本の中に、… 魔術が眠っていると 言ったら、君は信じるか?」
「へっ?」
思わずは間抜けな声が出た。