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【それは】前世の恋人【そうなる】

掲載日:2026/09/28

タイトル詐欺かもしれない……よろしくお願いします〜(´∀`*)

「僕には前世の恋人がいるのだ」


 婚約者同士のお茶会で、アーサーは言った。


「先ごろ下町を視察中、彼女に出会い前世の記憶を取り戻したのだ。よって、君を愛することはできない。婚約を解消したい」


 向かいの席で婚約者であるメリッサは俯き肩を震わせている。

 アーサーの言葉が余程にショックだったのだろう。

 気の毒には思うが彼女を愛することができない以上、仕方がない。思えば初めから彼女を妻とすることに違和感があった。自身の奥底にあった前世の記憶がこの女は違うと訴えていたに違いない。

 メリッサは返事をしない。

 アーサーはいらついた。縋りつかれても困る。ゆえに、懇切丁寧に前世の輝かしい愛を教えてやることにした。


「僕は前世、超古代にあるアトランティックウルトラ帝国の王子であり、神聖乙女のカスリーンと……」


 やがて震えるまつ毛をそのままに、メリッサは婚約の解消を了承し、立ち去った。アーサーは安堵のため息をついたのである。


——さて一方、俯き震えながら無言のまま馬車で帰宅したメリッサ。涙を堪え家族のもとにたどりつき……


 爆発した。


「ぴーーーーーーーーーーひゃーーーーーーーーーーーはーーーはっはーーーーーーーー!!!!

 前www世wwww前世てwwwwwwww

 前世ーーーーーーーーーwwwwww

 アトランティックwwwwwwwウルトラwwwwww帝国wwwwwwwwぶひゃーーーーーーーーはっはっーーーーーーー!!!!ひひゃーーーーーー!!!!」


「ど、どうしたメリッサ!!」

 

 家族は慌てた。


「アーサー様がwwwwwアーサー様がwwwww超ww古代のwwww王子っぶはっ!!!神w聖w乙w女wwwぴひゃーーーーーーーーーーはーーーーーー!!!!!」


 倒れ伏して馬鹿笑いするメリッサから家族はなんとか話を聞き出した。そして笑った。


「アトランティックwwwwwウルトラwwwww」

「ウルトラはないwwwwwウルトラはないwwww」

「神w聖w乙w女w前世の恋人wwww」


 一家は笑いに包まれた。

 そして婚約は解消することとなった。

 お見合いでの婚約ではあったが政略というほど重要な繋がりでもなく、あたおかと家族になるのはちょっとなあという家長の判断である。

 メリッサとしても異論はなかった。

 実際のとこ他の女に目が行ったということだろうが、婚約してから大した時間も経っておらず、思い入れもないので浮気の言い訳にあれだけ笑わせてくれたらオッケーだわと思っていた。


 かくして婚約は解消された訳だが、それで終わる話ではなかった。

 メリッサの婚約解消が友人たちに知られれば、自然その理由を話すこととなる。

 そして


「前世wwwww前世の恋人wwwwww」

「アトランティックwwwwwウルトラwwwww」

「超古代wwwwww」


 あまりにも愉快な話は友人間に留まらず、あっという間に広まった。今やアーサーは人気者だ。


「アーサー殿!!あっ殿下とお呼びすべきでしたかなwwww超古代のwwww」

「アトランティックwwwウルトラ帝国についてぜひお聞かせ願いたくwwww」

「神聖乙女ってなんすか?www神聖乙女ってなんすか??wwwww」


 アーサーはキーーーーッ!!となった。

 まるでいかれた嘘つき呼ばわり!真実の記憶なのに!!美しい愛の記憶なのに!!汚される!!!

 憎きメリッサを思いアトランティックウルトラ帝国伝統の呪いの踊りを踊ったりした。


 ちなみに下町の視察という名の買い食いで出会ったパン屋の娘——前世の恋人には逃げられた。

 君は僕の前世の恋人!!アトランティックウルトラ!!と迫ったところ、彼女には前世の記憶がなく、やべー貴族がやべーこといって絡んできた!!と震え上がり、一家揃ってトンズラした。気の毒なことである。

 ちなみにこのパン屋は小麦粉でない白い粉(違法)もあつかっていたことがのちに判明し、アーサーは警備隊により色々検査を受ける羽目になった。


 というわけですっかり有名になったアーサーである。両親は困った。


「アーサー!お前を廃嫡する!!」

「なっなぜです父上!」

「お前はアトランティックウルトラ帝国の王子だというではないか!前世の恋人がいるからと今生の婚約を解消したのだから前世の家督を継ぐか良い!今生のいいとこ取りしようとするな!!」

「わ、わかったようなわからないような理屈をっ……!!しかし僕以外誰がっ」

 きゃんきゃん言い合う父子を母親が止めた。

「まあまあ、落ち着いて。アーサーちゃんもね、いくら前世があったって今の両親は私たちでしょう?前世だけに生きられては悲しいわ」

「それは…」

「それに旦那さま、あなたも言い過ぎよ。

 あなただって昔は闇の翼が邪眼がどうとか言ってたじゃない」

「は!!?」

 アーサーは驚いた。慌てる父親。

「そ、そんなのは昔のことだ!!!それにお前だってプリティーエンジェル星のプリンセスがどうとか!!」

「だって合わせないと話にならなかったんですもの。ごっこ遊びは嫌いじゃないし。アーサーちゃん、屋根裏に隠してある旦那さまの肖像画、子供の頃見たことあるでしょう。包帯ぐるぐるであなたが心配してた絵よ。あれは左手に封じられた邪竜を抑えてたのよ」

「やめろーー!!昔の話はやめろーーー!!

 アーサー!!お前のせいで昔の知り合いからいじられまくってるんだぞ!!!どうしてくれる!!」


 きゃあきゃあ言う両親。アーサーは愕然とした。

 父親は過去に邪眼とか邪竜とかやっていた。母親はプリティーなんとかだったらしいがこれは付き合いであり本心からのあれではなかった。父親はマジだった。


「だからねえ、アーサーちゃん、若い頃はそう言うこともあるものよ。メリッサちゃんも付き合ってくれたらよかったけど……私の場合、子供の頃からの婚約で、旦那さまが『俺は空を飛ぶ!』って扇子を両手に屋根から飛び降りて死にかけるの見てたしねえ。メリッサちゃんとはそこまでの付き合いじゃないから仕方ないわね。そのうちいい人も見つかるでしょう、気を落とさずたまには現実を見てちょうだいね。あと薬物はだめよ」

 温かな瞳で見つめられ、アーサーは違うーーーー!!!となった。


 僕の前世のは若者特有のわずらったあれでも薬物による幻覚でもない!!ほんとのやつなのに!!!


 いくら言っても母親は生暖かい目で見つめてくる。母の愛であった。



 こうしてキーーーーッ!!となったアーサーは、前世の記憶がどれだけ確かなものか証明すべく、事細かに書き記した。それは壮大な愛の物語であった。これを世に広く知らしめるべく自費出版し配りまくった。


 これが受けた。


 小説として。


「いやあアトランティックウルトラ帝国の没落には涙がつい」

「神聖乙女萌!」

「アーサー殿の奇行はプロモーションだったのでは?」

「神聖乙女萌!」


 かくしてアーサーの前世の物語は広まり、舞台化し、他者による二番煎じ三番煎じの前世もの小説もヒットした。前世ブームである!!

 社交界ではいやいや私も若い頃には実は……などと過去の黒歴史がネタとなり果ては前世好きによるミニコミ誌が発行され、読者投稿欄には「光の戦士の記憶がある方募集!当方ルルディヤ王国勇者」なとの呼びかけが並んだ。

 アーサーは違う〜〜!違うんじゃよ〜〜〜!となったが、今ではアーサーは一躍時代の寵児。やや半笑いの扱いではあるが各種売り上げはえらいこっちゃである。前世の思いを現世利益が超えたのであった。大体前世の恋人は逃げてるし。

 というわけでアーサーは今の人生を楽しむこととし、仲間(認めたくない)たちとともに総合オカルト雑誌ラ・ムーを発行。ある種の業界の名士となり、宇宙船アポカリプスの分体AIである悪魔姫(自称)と結婚、なんだかんだ幸せに暮らしたのであった。




———ところで爆笑婚約解消したメリッサがどうしているかというと、ひょんなことからサイキック能力に目覚め一家揃って超次元的裏世界を巡る争いに巻き込まれて大変なことになっていたのだが———……

 それはまた、別のお話である。


♡完♡


後半そうはならんやろ!な気がしますがつい…(*´∀`*)ゞ ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
最高www
なにげに逃げた前世の恋人、実は前世でもヤベー女だったのでは。今世も小麦粉じゃないヤバい粉扱ってたみたいだしさぁ。
こ、これは……『邪眼が疼く』系の病ですね! 前世のハニー()のおうちがパンに使えない白い粉を商っていたのもなんかこう、深淵からの呼び声に応えてしまったのでしょうか(笑) ラ・ムーの創刊に涙がちょち…
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