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箱庭少女のロジック 〜かつて世界を滅ぼした最強のオートマタは僕の指示しか聞かないらしい〜  作者: 邑沢 迅


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第3話:冷たい水晶から僕らに熱い視線が突き刺さる

「……ここが、ギルド」


 馬車から降りた僕を待っていたのは、巨大な石造りの建物だった。


国際魔法監視連盟ギルド』。


 ただ、僕の知っているステレオタイプなギルドとは少し雰囲気が違った。

 冒険者と酔っ払いが喧嘩をしている……なんて光景はなく、広いロビーには受付窓口が整然と並び、職員らしき人たちが書類を抱えて忙しそうに走り回っている。


(どっちかっていうと、市役所とかそう言うのに近いな……)


 現代日本人の僕は、その「空気感」に妙な親近感を覚えた。

 遺跡から僕らを連れてきたトマスさんは、ギルドの窓口で何やら激しく交渉した後、僕達を一人の若い女性職員に引き渡した。


「……では、コータ殿。私は上層部へ報告に行って参ります。手続きはこちらの受付嬢にお任せを」


「あ、はい。お疲れ様です」


 嵐のように去っていくトマスさん。

 後に残されたのは、僕と、相変わらず僕の傍らで音もなく浮いている銀髪の美少女、アルテア。


 そして、困惑した顔の受付嬢さんだ。


「ええと……コータ様、ですね。トマスさんからの紹介状は拝見しました。……異世界からの『お客様』、そして……」


 受付嬢さんはアルテアを上から下まで眺め、ゴクリと生唾を呑み込んだ。


「……この執行者ハンターの……監視者ハンドラー、ということでよろしいでしょうか」


監視者ハンドラー?っていうか、なし崩し的にそうなったというか……。あの、そもそもここって、何をするところなんですか?」


 僕の問いに、受付嬢さんは「そこからですか」と言わんばかりの溜息をつき、丁寧に説明を始めた。


 彼女の話を要約すると、まず、この世界には強力な魔力を有する個人が何人も存在する。

 でも、才能はあっても一人だけではその全てを引き出せない。

 では、どうやってその力を引き出すのかと言うと、基本的に彼らは『執行者ハンター』としてギルドに属する。

 そして、その才能を引き出し、管理する、『監視者ハンドラー』とペアを組むことが義務付けられている。

 そのペアの総称が『共同体レゾナント』というらしい。


 そして、このギルドは、個人で強力な才能を持つ魔法使いたちを共同体レゾナントとして登録・管理し、仕事を割り振る国家を超えた統治機関なのだという。


「……アルテア。きみが使うのも、やっぱりその……『魔法』っていうやつなのか?」


 説明の合間に、僕は隣の少女に小声で聞いてみた。

 アルテアは無機質な瞳でロビーを見渡し、首を横に振った。


「基本的には同じだが、発現する方法が違う。現代の魔法は、体内のリソースを現象として発現しているに過ぎない。対して、私は空間に漂うリソースを神性魔導演算回路に送り、基底に直接干渉し、事象を確定させる」


「……ごめん、全然わからん。要するに、アルテアはそこかしこから魔力を貰ってるってこと?」


「認識に相違はない。彼らは個人の才覚によりリソース…魔力量が決まるが、私は空間から魔力を供給できる」


 ……もしかして、所謂、魔力切れが無いって言ってる…?

 ますますヤバいじゃん、この子。


 ギルド職員が説明を続ける。


執行者ハンター監視者ハンドラーは、二人で一つの『共同体レゾナント』となります。……コータ様以外に彼女の行動を止められないと聞いております。……本来ですと、適性検査が必要なのですが、状況が状況ですので、まずは特例として共鳴率を測定させていただきます」


「共鳴率?」


「魂の相性、のようなものです。これによって、監視者ハンドラーがどれだけ執行者ハンターの力を引き出せるか、あるいは制御できるかが決まります」


 職員さんが持ってきたのは、バスケットボールほどの大きさがある透明な水晶球だった。


「これに、お二人で触れてください」


 言われるがまま、僕は水晶の上に手を置く。

 すぐ横から、アルテアの白く冷たい手が重なった。


 その瞬間。


 ――ピキ。


 静かだったロビーに、変な音が響いた。

 水晶球が、直視できないくらいに、真っ白な光を放ち始めたのだ。


「……え?ちょっと、眩し……」


 職員が計器を見ながら悲鳴を上げる。


「ひ、100%……!?いや、針が振り切れています!計算不能……測定不能です!!」


 ロビー中の視線が、一斉に僕らに集まる。


「なんだ、今の光は!」

「共鳴率の限界を超えたとでもいうのか!?」


 二階のバルコニーから様子を伺っていた、偉そうな服を着たおじさんたちが何やら騒ぎ始めた。


 ……嫌な予感しかしない。


「つ、次は……執行者ハンターの、魔力測定を……。先ほどの共鳴率と合わせてギルドの共同体レゾナントランクが決まります。ランクはEからAまで存在します。Aランクは一国に数組しかいない英雄ですが……」


 続けて説明してくれたが、ここで決定するランクはあくまで目安で、今後の活躍や鍛錬によって昇格も降格もするのだと言う。


 職員さんは震える手で、より頑丈そうな、黒い台座に乗った別の水晶を差し出してきた。


「これに触ればいいのか」


「……うーん。アルテア、ちょっとだけにしておいてね。本当に、ちょっとだけだよ?」


 僕は指先で一ミリの隙間を作るジェスチャーをしながら言った。

 アルテアは、瞬きを一回。


「了解。空間からのリソース回収を制限、出力を1%未満に設定」


 彼女が静かに、水晶に指先を触れさせる。


 ――直後。


 ドゴォォォォン!!


 爆発音だった。


 水晶が、内側からの圧力に耐えかねたように粉々に砕け散り、ロビーの床に突き刺さった。


 舞い上がる砂塵。逃げ惑う職員たち。

 静寂が訪れた後、残っていたのは粉砕された台座と、呆然と口をあけた職員たちだけだった。


「……あー。……やっぱり」


 僕は思わず天を仰いだ。


「測定……不能。ランク、判定不可。……ギルド設立以来の事件だわ…」


 受付嬢さんが、ひっくり返った声で呟いた。

 こうして、僕とアルテアは、不本意ながらもギルド始まって以来の「イレギュラー」な共同体レゾナントとして登録されることになった。


 給料は保障されるし、当面の住む場所もギルドが手配してくれるという。


(とりあえず、無職で路頭に迷うのは避けられたかな……)


 横で、粉々になった水晶の破片を不思議そうに見つめるアルテア。

 彼女の正体を探るのも、元の世界に帰る方法を探すのも、まずはこの「ギルド」での仕事をこなしてから。


「頑張ろうな、アルテア」


「了解、コータ。バグがあれば、優先的に処理する」


「いや、君が一番のバグなんだけどね……」


 力なく笑う僕は、彼女との今後の異世界生活に一抹の不安を感じざるを得ないのだった。

ご一読ありがとうございました。

気に入っていただけましたら、感想やフォローなどいただけると、執筆の大きな励みになります。

最後まで描き切れるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
Xから来ました。 アルテアが少しの力しか使っていないのに、判定不能状態になるのが面白いですね! ギルドが市役所みたいだという描写も、わかりやすいなと思いながら読ませていただきました。☆をつけさせていた…
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