第13話:漢は拳と言うけれど
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「あのー……」
僕はなんとも言えない気まずい空気の中、隣に座っているお兄さんに話しかけた。
「なんだ」
「…………」
「…………」
僕たちは今、ギルド近くのベンチに座って、男二人で並んで座っていた。
女子組が「女子会」を楽しむなら、男たちもお詫びついでに交流を深めなさい。……そんなエレーナさんの絶対的な命令によって、僕とデリクさんは「男二人デート(仮)」を強制されていた。
「僕たちは、何をしているんでしょうか……」
「仕方ねぇじゃねえか。エレーナに『あなたもコータさんにお詫びして、男同士仲良くなりなさい』って言われてんだ」
デリクさんは遠い目をして答えた。……なるほど、彼も彼なりに苦労しているらしい。あの一件の後、相当こっぴどく叱られたんだろうな。
「そうですか……大変ですね」
僕は空を見上げた。夕方の空がオレンジ色に染まり始めている。
せっかくだ。気になっていたことを、この機会に聞いてみよう。
「あ、そうだ。デリクさん。……お二人は、どうやって共同体になったんですか?」
「あ?……急だな。…………まぁ、普通だよ。自分に『執行者』としての適性、魔力があることが発覚して、ギルドに登録しに行った。そこで、一番『共鳴率』が高かったのが、たまたまエレーナだった……それだけだ」
「それだけ、なんですか?」
「ああ。他の共同体だって似たようなもんだ。偶然の出会いから始まって、そこから実戦で相性を磨いていくのさ」
「へぇ……」
僕はシャオさんとクローディアさんのコンビを思い出していた。あの二人も、もしかしたらそんな風に、ギルドの測定機が決めた「共鳴率」という名の相性から始まったのかもしれない。
「共鳴率」が高いということは、魔法的な相性がいいということだ。それは、長年一緒にいるうちに、人間関係としての相性……絆に変わっていくものなのかな。
「お前らはどうなんだ。……あの、アルテア……だったか。あれは、異常だぞ」
デリクさんが、不意に鋭い視線を僕に向けてきた。
「僕らは……ちょっと特殊、というか。まあ、色々ありまして」
僕は言葉を濁した。まさか、「神の兵器」だなんて、口が裂けても言えない。
「だろうな。……なんか、普通の執行者とは根本的に違う。魔力の強さだけじゃない……何というか、もっと異質で、冷徹な『完成された何か』を感じるんだよ」
デリクさんの言葉には、ベテランとしての重みがあった。どうやら、彼が最初にアルテアに絡んだのも、ただの慢心ではなく、彼女の正体不明な力に対する「危機感」のようなものが裏返った結果だったのかもしれない。
「そうですね……。彼女は、少しだけ特殊な存在なんです」
僕はそれだけ答えて、また空を見上げた。
「……ふん。こんなところで男二人がダベってても、気味が悪いだけだな。……おい、飯でも行くか。詫びだ、オゴってやるぜ」
「え、いいんですか?」
「ああ。エレーナに『なにか高級なもの御馳走しろ』って言われてるからな……」
「あはは……。じゃあ、遠慮なくご馳走になります」
話してみると、デリクさんは悪い人ではなかった。
不器用で、ちょっと自信過剰で、すぐに手が先に出ちゃう欠点はあるけれど。
……まあ、エレーナさんには一生、頭が上がらないんだろうな。
僕たちは並んで、街へと歩き出した。
◇
ガチャ、と玄関のドアが開く音がした。
「おかえり、アルテア。どうだった、女子会……は……?」
振り向いた僕は、そのまま凍りついた。
そこに立っていたアルテアは、いつものギルドで貰った黒いワンピース姿ではなかった。
黒を基調に贅沢なレースを何層にも重ね、胸元には大きな黒いリボン。ヘッドドレスまで完璧にセットされた、……なんて言うんだろう、いわゆる『ゴスロリ』というやつだろうか。
彼女の美しさと相まって、破壊力抜群の格好になっていた。
「エレーナに強制的に着装させられた。可動域の制限が大きく、戦闘には不向き。……コータ?」
「あ、いや……ええと。わあ、……とっても、似合ってるよ。うん、すごく可愛い」
僕は心からの賛辞を送った。
正直、あまりの似合いっぷりに言葉が出ない。
アルテアの表情は、相変わらず無だ。だが、彼女は鏡に映った自分の姿をちらりと見ると、小さく呟いた。
「……エレーナと行動した結果、得られたデータがある。コータ以外の他個体との接触も、……不快ではなかった。人類という種への興味指数が、……わずかに上昇したように思える」
それは、彼女に「感情」が芽生え始めたのか。あるいは、機械としての「知的好奇心」が、僕以外の人間にも向き始めたのか。
どちらにせよ、アルテアが無機質な兵器から、少しずつ「女の子」へと近づいているような気がして。
僕は、このゴスロリ衣装のお金…たぶんデリクさんの財布から出ているであることを思い、少しだけ複雑な気分で眠りにつくのだった。
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