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【10作目】クズと猫耳とお約束  作者: あぱ山あぱ太朗
ノーラーメン・ノーライフ
9/26

3-1

「ってことでサリィ、よろしく頼む!」

 アルケミーで食事した翌日。深々と頭を下げて、サリィに『とある』お願いをする。

「昨日はあんな自信満々だったのに、結局は人頼みって……」

「違う、これは『猫の手も借りたい作戦』だ」

「日本人が間違った日本語を使わないでよね。猫の手『も』借りたいじゃなくて、むしろ猫の手『が』借りたいって感じじゃない」

 くそ、うまいこと言いやがって。

「おはよーございまーす! あれ、お取り込み中ですかー?」

 渡している合鍵を使って、女装男子・一希が部屋の中に入ってきた。

「あ、一希ちゃん」

「やっほー、サリィちゃん! それと治さん、好きです!」

「よくぞ来てくれた。一希」

「ボクの告白はスルーですか……」

 しょんぼりと肩を落とす一希。

 いやね、もう何回も聞いてるからさ。いちいち反応してやれないのよ。

「どうして一希ちゃんが?」

「治さんに『お前の体が必要だ』って呼び出されて!」

「なっ!? ど、どういうことよ! 治!」

「あぁ、そうだな。具体的には手と足、目と耳を提供してもらえると助かるな。猫探しの助っ人として呼んだんだよ」

 勘違いをさせるような発言をしっかり訂正する。

 サリィのヤキモチに付き合っているほど暇じゃない。そういう展開はラブコメ主人公に任せておけばいいのだ。

「少しくらいあたふたしてくださいよー。クールすぎますってー。ま、そういうところが格好良くて好きなんですけどねっ!」

「たまに思うんだよな。俺よりもカッコいい男に出会ってみたいって」

「よっ、治さん! 日本一!」

「ふはは、気分がいいな。よし、お小遣いをやろう」

 財布から万札を取り出して一希に手渡す。

「……治さん、ついに偽札に手を出したんですか?」

「失礼な。綺麗なカネだっての」

 なんて言い草だ。これは必要経費として明里からもらったものである。

 休みの日に呼び出したんだ。バイト代くらい出さないとな。

「お金の使い方、きちんと考えた方がいいですよ?」

「いいんだよ。俺が持っていても、パチンコに消えるだけだし」

「堂々と最低な宣言をしないでください……」

 俺信者の一希もさすがに呆れていた。

「ってことでサリィ、役者は揃ったぞ。お前の力を発揮するんだ」

「その話に戻るわけね」

 猫の手も借りたい。その慣用句から連想したのはサリィのことだった。

 こいつは獣人だかどうとかで、常人とは異なる特別な能力を持っているらしい。嗅覚が鋭いみたいな。

 だから、タバコを控えようかと悩み始めているわけで。

 そんな特殊能力があれば、猫を探せるんじゃないかと思い至ったのだ。

 蛇の道は蛇――いや、ニャの道は猫ってとこか。

「サリィ、頼む。お前の力が必要なんだ」

「仕方ないわね」

「そんなこと言うなよ。美味いもん食わせてやるから」

「だから、別に問題ないって!」

「え、マジか」

 断られる流れだと思っていたので、すんなりOKで驚いてしまう。

「居候の身として、少しは貢献しないとでしょ。そ・れ・と! 食べ物で釣れるって安易な考えは捨てなさい!」

 でも、『美味いもん』って単語に耳がピクリと動いてたぞ。

 口に出さないけど。ここでサリィの機嫌を損ねるのは得策ではない。

「自分で言っといてアレだが、匂いから猫を見つけるのはそもそも可能なのか?」

「可能ね。猫自身ともイエス・ノーくらいの会話だったらできるわよ」

「なにそれ最強かよ」

 サリィがいれば、猫探しのプロになれるんじゃないか?

 猫探し専門の探偵事務所でも設立してみるとか――いや、それだと俺の立場がないからやめておこう。尻に敷かれるのは御免だ。

「まずはそうね。猫が使っていた毛布とか、あかりさんに提供してもらいたいかな。その匂いから辿るつもり」

「サリィちゃん、すごい! あれ、治さんもボクも必要ないんじゃ……?」

「い、いわゆるアウトソーシングってやつだな!」

 全て自分でやるのも効率が悪い! 専門家に依頼するのはむしろスマートだ! 

 うん、だから大丈夫。俺はまだ天才のままだ。

「……今の治さん、だいぶカッコ悪い」

 自分でもそう思う。

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