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第七十八話 こころがすく

 

 屋敷に戻ってきて、ローナからのおねだり?はぱたりとやみ、平穏な生活が戻ってきた。ずっと続くようなら何かしらの対策を考えなければいけなかったからありがたい。

 

「それにしてもなぁ……。はぁ……」


 あんなめちゃくちゃなクランマスター達に囲まれて、アイヴァンくんを助けて、さらにはあのクランマスター達と争うことになったのを上手い感じでいなしたのに何も報酬がなかったのがなっとくいかねェ……。

 もちろん、グレタとローナの活躍が大きくはあるんだけど、一応俺もアイヴァンくんの幼馴染を助けてコンコードパクトのゲイブリエルさんに事情を説明して争いを止めたっていう結構でかい活躍はしたはずなんだけど……。


 やればスズメの涙程度でも見返りがある仕事のような仕組みで世の中が出来上がっているわけではないことを理解しているのだが、あそこまで頑張ったのにいつもみたいにクランメンバー――今回はローナからのスキルを獲得できなかったことが納得いかない。厳密にいえば、ローナのスキルを獲得しました、っていうナレーションは頭の中で流れたんだけど、使おうと思っても何も起きないのだ。鎖を使って敵を一掃したローナの戦闘を思い出して、屋敷の倉庫室を嫌そうな顔をするグレタにお願いして案内をしてもらい、見つけた鎖で宙に振り回してみたりとか振り回した勢いを使って藁のサンドバックみたいなやつに巻き付けてみたりしたんだけど、スキルを発動するとき特有のあの感覚がなかった。

 身体能力に関する能力だから無理だったのかなとか一瞬だけ思ったんだけど、イーデンの白狼憑依の例があるから関係なさそうだし、技術的なものだからとも思ったんだけど、野球やスケートの能力も会得できていることからそういうわけでもないはず。

 クランメンバーから貰えるスキルはキワモノすぎて正直扱いづらいから、実用面だけを考えたらほしいものではないのかもしれない。実際、イザベルから貰ったものに関しては使用禁止されて実質的に使えないし。でも、なんというか……使えないけどすげえ力を貰えたっていう愉悦感があったりして……ただ今回は使うことすらできないというか何をするものなのかすら分からないっていうのはあまりにも、あまりにもだ。……脳内ナレーションされた時のワクワクを返して欲しい。


「マコト!!いや、わが友よ!!どうか助けてくれないか!!!」


 縄を腕に括り付けられて馬に引きずり回されている男が地面をバウンドしながらなにやら叫んでいた。

 土煙のせいで様子を確認しづらいが、地面をバウンドして最高点に達したとき、金色の髪と女性をたぶらかすのに向いていそうな面が見える。


「助けてあげないんですか?」


 水の妖精と見間違うような青髪の少女が人の情念がこもっていない瞳を俺に向ける。


「え、なんで?」


「マコトに助けを求めているみたいですよ」


「そんなこと言われたって……。アッシュロードの決定に部外者が口出すのは野暮ってもんでしょ」

 

 俺たちが王都で苦労している中で女性と楽しんでいたエドガーさんは、アッシュロードの意向で馬に引きずり回されていた。

 クラン協会でよく顔を合わせるアッシュロードの幹部らしいダミアンさんから、エドガーさんが王都で遊んでいた罰をどうしたらいいかとイーデンとグレタが一緒にいるときに聞かれて、俺はアッシュロードに従いますと答え、イーデンは球とゾウさんを切り離せばいいんじゃないかと提案し、グレタは拠点のクランに一週間貼り付けにしておけばいいんじゃないか、馬なんかよりも足が早いアースリザードに引きずらせればいいんじゃないかと提案した。


「てか、お前の提案が採用されたんだからお前が助ければいいじゃん」


「私が提案したのはアースリザードにやらせるというものなので違います」


「いや、同じようなものというか、もっとひどい提案じゃねえか」


 グレタは考え込むような様子を見せてからこっちへ向き、


「そもそも助ける必要がありますか?」


「ないな」


 お前が助ければと言ったんだろうとは思ったが、別に異論はないので頷いた。


「そういえば、今日はもうこの町に用事はないんですよね?」


「ああ」


 今はまだお昼ご飯にするには早い時間なのだが、特別な理由があるわけじゃないが町を出てすぐのところで終わる依頼を受けたから既に今日の依頼分は済ませていた。

 

「では、一緒に屋敷に帰りますか?」


「あぁ……。そうしようかな」


 僕が悪かったことは認めるから助けてくれ!という心がすく叫び声を耳にしつつ、俺はグレタの後をついていった。


お読みいただきありがとうございます

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