第七十七話 ローナのわけ
短いです
アイヴァンくんは自国に帰り、魔族にどう対処するかという問題については各々のクランで対応するという結論に落ち着いた。何のために王都まで来させられたんだと文句をつけたいところだが、あのメンツでは意見がまとまらなくても仕方がなくはある。じゃあどうして会議をすることになったのかという話だが……注意喚起が目的だったのだろうか?
少なくともしばらくの間Sランククランの人達と顔を合わせることはないだろうから理由は分からずじまいだな、なんて考えながら王都で買い与えた木彫り人形を大事そうに抱えているローナに目がいく。
「気にいっているのか」
「?何のことでしょうか」
「その大事そうに抱えている人形のことだよ」
ローナはぱちくりと目を瞬きさせた後、人形に目を向けた。
「はい」
「……そうか」
年頃の少女が木彫りの人形という少し不気味な側面を持つものに興味を示している違和感はあるんだが、ローナであるならばすんなりと受け入れられる。まあ、そもそも物に興味を示すんだという驚きはあるんだけど。
一応、人間らしい好奇心見られてローナはしっかりと人の子なんだと安堵していたら、ふと、行き倒れているアイヴァンくんに手をさし伸べようとしたことを思い出す。
「なあ、どうしてアイヴァンくんのことを助けようと思ったんだ?」
アイヴァンくんからのプロポーズを断ったわけだし、ひとめぼれしたというわけではないはず。そうなると、行き倒れていたアイヴァンくんを助けようとした理由が想像つかないのだ。
薄暗いことに精通している暗殺者をあそこまで怯えさせられる手腕を鑑みると、傷つけられている人を見逃せない聖女様みたいな思想を持っているわけでもあるまいし。
「わがままを聞いてもらいたいと思ったのです」
「は?」
わがままを聞いてもらいたい?人形が欲しいから強請ったというなら理解できるんだけど、別に興味のない行き倒れを助けたくてわがままを言ったというのがよく分からない。……本当に利他的な性格ということなのか?
考えが変な路線に向かっていきそうなことを自覚して、グレタのことを見てみるが首を振られる。
仕方なくローナへ視線を戻すがこっちを見つめているだけで答えが返ってくることはなさそうだ。
「ええっと……わがままを聞いてもらいたいっていうのはどういうこと?」
「?わがままを聞いてもらいたいということです」
「いやそうなんだろうけど……。どうしてわがままを聞いてもらいたいと思ったんだ?」
「セパルから、わがままを聞いても許してくれるのが主人の器なのだと聞いたのです」
なんだその理論は。一理もないとは言わないけどさ……。
てか、ローナに呼び捨てするような友人がいたのか……。はた迷惑なことを吹き込むよろしい友人ではないみたいだけど。
「うう!誰か助けてくれ!!」
そもそもどうして俺の器を測ろうと思っていたら、うずくまる腹を抑えた男が右手を伸ばして助けを求めている姿が視界に映る。初めて出会った時のアイヴァンくんと重なった。
ローナは何を考えてんだかよく分からない表情でこっちを見上げ、
「ご主人様。現在倒れている人を見つけたのですが――」
「もう厄介ごとはこりごりなんだよ!勘弁してくれ!!」
悲鳴を上げながらグレタとローナの手を引っ張って、その場を後にした。
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