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第七話 クラン協会1


 クラン協会に行くことになった俺、グレタ、イーデンは、廃墟ばかりが立ち並ぶ道を三時間ほど歩いた。すると、緑が広がっている場所になり、もう二時間ほど歩くとちゃんと人が住んでいそうな町が見つかる。

 それにより、ちゃんとこの世界にはしっかり人が住めそうな場所があることが分かり、廃墟ばかりが立ち並ぶようなところしかないような世界観でないことに安堵を覚える。そして、計五時間も歩いて町に着いたことで、うちのクランに一切依頼人が現れないことに合点がいった。

 特に街で散策をするわけでもなくギルド協会に入ると、左側には受付カウンターらしきところがあり、真正面は依頼書のようなものたくさん貼られている掲示板。

 そして、右側のエリアでは柄の悪そうな男たちがジョッキを片手に騒いでいる。しかも複数人の女性を侍らせて。


 あんな廃墟にいて感覚がマヒしていたけど普通クランってこういうところだよな、って言いたかったんだけど……。真っ昼間から酒を飲んでいるのも違うと思うんだ。

 いやまあ、これはこれでイメージ通りではあるんだけどさ……。


「なあ、ここっていつもこういう感じなのか?」


 俺は酒盛りをしている男たちと隣にいるイーデンに聞こえないように、グレタに半歩近寄り右手でメガホンのような形を作って話しかける。

 

「こういう感じとは?」


「いや、大の大人たちがこんな時間に酒を飲んでいたりみたいなのは」


「大体、二年前ぐらいからこういった状態だと聞いています」


 二年前。つまり、それよりも前はこういう雰囲気じゃなかったってことか。


「……というか、らしいっていう言い方からして、ここに来たことがないの?」


「はい。マスターにここには来なくていいと言われていたので」


 ……そりゃそうか。良識のある大人なら子供をこんな酒臭いところに連れてきたりなんかしないわな。

 そうなると、未成年をこんなところに連れてきている俺って……。

 いやでも、知らなかったわけだし……。仕方ない。

 ただ、ここで引き返すと何のために七時間も歩いてきたのかって話になっちゃうから、依頼だけ受けてぱっぱとここから出よう。 


 長居しないことを決意して、依頼書が張られているところに向かう。


 エール草を集めてくださいか。草を集めるだけなら危険はなさそうだけど、実践をするためという趣旨から外れているから駄目そうだな。

 村にゴブリンが巣食っていて困っています、ね。ゴブリンっていうと作品によって強さとか狡猾さとかバラバラなイメージがあるけど、ゲーム的には雑魚なことが多いよな。

 うーん、弱かったとしても一対一ならともかく多対一というのは厳しそう……。範囲攻撃ができる魔法とか技を持っているわけでもないし。


「これがいい」


 イーデンがこれで間違いないとでも言いたげに見せてきた依頼には、ウィローから取れる木材を集めてください、と書かれていた。


「ええ……。でも他の奴はEって書かれているのに、これはDって書いてあるけど」


 どういう意味かは知らないが、左上の欄にFとかEとか書かれている依頼書が多い中、イーデンが持ってきたものにはDと表記されていた。

 俺の想像通りならFがいいし、そもそもウィローという想像もつかない魔物を相手にしたくないからここにある中で一番ありえない依頼書なんだが。


「うん。だからこれがいい」


 俺はグレタをちらりと見る。


「大丈夫ですよ。最悪、私とイーデンもいますから」


 つまりは、この二人が必要になるような可能性がある相手ってことね。

 ……周りの目があるし、ここでごねるのは流石にあれか。それに、ガラの悪い奴らの注目を引きたくない。

 でも、危ない目に会うってことはこいつらの助けを借りることがあるってことでもあるんだよな……。


 俺は依頼書と二人の少女を見比べて、


 グレタはしっかり助けてくれるか……。


「……これにするか」


 受ける依頼を決めると、グレタは掲示板に貼ってある依頼書を剥がし受付カウンターらしきところに向かっていく。

 受付にいるのはおじさんとかおばさんばっかりで、若くて綺麗な女性はいない。


 見た目が整っている人が受付だと依頼を受ける人のモチベーションになりそうだけど……、こんなガラの悪い連中がいるところにいるわけがないか。


「Dランク……。お名前と所属しているならクラン名を教えてちょうだい」


 依頼書を確認した受付のおばちゃんはグレタとイーデンを見た後、俺のことを見て、心配した様子で聞いてきた。

 多分、あの掲示板の中ではランクの高い依頼を、少女二人とパッとしない見た目をした俺が受けるに値にするかを怪しんでいるのだろう。

 イーデンがかなり規格外だと思うから依頼を達成することはできると思うんだけど、この世界だと走っただけで突風を起こすような奴が普通である可能性もなくはないだろうから、本当に基準を満たしているかは分かっていない。

 ……まあでも、グレタがさっき大丈夫だと言っていたし、たぶん大丈夫なんだろうけど。


「グレタ。所属しているクランはカームアルカディアです」


「カームアルカディア!?」


 おばちゃんはいきなり大声を上げた。

 そして、ぽかんと口を開けて俺たちのことをじっくりと見回す。


 え?何その反応?


「依頼を受理いたしました」


 おばちゃんはいきなり敬語でしゃべりだし、依頼書を受け取った。

 さっきまでの心配するおばちゃんという雰囲気は一切消えて、事務的に済ませたいというのが伝わってくる。

 

 もしかして、俺がいるクランって結構ヤバいところなのか?

 ……あのイカレ研究者がいる時点で、ヤバくないわけないか。


「おいおい嬢ちゃんたち、嘘は良くねぇぞ」


 酒臭い男が頬を赤くして酒瓶の細い部分を鷲掴みしながら話しかけてきた。

お読みいただきありがとうございます

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