幼なじみ
左右非対称の髪、長い方を髪紐で結っている。今日は三つ編みだ。 街で買ったであろう綺麗な服と靴で装っている。
「帰って来てたのか、ヒイロ。」
「さっきね。」
「そっ れっ よっ り〜...」とニヤけながらずんずん近寄って来る。
「何、何...」
とっさに両手を前に出して防御の姿勢をとる。ヒイロはたまに帰ってきては予測不能なことをする。この前だって月を見ようとカーテンを開けたら窓に張り付いていた。
目の前まで来たヒイロは僕と同じように両手を向けてくる。
『?』不思議に思っているとヒイロはその手を翻し、手のひらを見せるように差し出して来た。
『???』増して困惑していると「ん!」と繰り返し突き出してくる。
『???こうか?』ヒイロと同じように手のひらを上に向けると、ヒイロは背後から取り出した包みを僕の手に乗せた。
「なんこれ。」
「開けてみ〜?」
ニマつくヒイロの言うとおりに包みを開くと、本が三冊重なっている。一番上の本は薬学の本。まぁ読んだことは無いけど...。薬学の本を退けると思わずギョッとする。
「こ、これは...!!!アダム・クリフの冒険記録!?」
ぐおっとヒイロを見ると照れくさそうに笑っている。
「それ、好きなやつなんでしょ?感謝してよね〜。」
「ふふん」と鼻を鳴らすヒイロを余所に、僕は表紙をじっくり眺める。前回の出版から二年半、大体年に一回出していたのに出なくなったからもしかしたらアダム死亡も考えてはいた。
キイロ地区の開拓、呪木伐採、ラビリンスの発見とその探索、それらを示す文言とイラストが散りばめられた表紙は心の底で燻る冒険心を燃やし始める。
「お〜い?聞いてんの〜?」
ヒイロに頬を刺されて我に返る。
「あ、あぁごめん。高かったろこれ。今返すから。」
お金を取りに腰を上げようとすると上から抑えられる。
「いいの、いいの。もうすぐ誕生日でしょ?それプレゼント!」
「誕生日って、まだちょっと先だし。ていうかそれならヒイロの誕生日のが来るの早いだろ。」
「私はいいの!シアンのが子どもだから!」
「カッチーン。お前それ禁句だからな。てかお前だって...」
そこから少し言い合っていると、見かねたお母さんが止めに入ってきた。
「仲良しはほどほどにして、ヒイロちゃん、ご飯食べてく?」
「タベマス...。」不満7礼儀3ぐらいのテンションでヒイロは返事をした。食うのかよ。
ご飯を食べたら直ぐ機嫌は直った。それは良かった。だが、今僕が危機に瀕しているのは変わりない。
この皿に乗った緑色をどう食らうべきか...。
主人公くんはシアンといいます。最初に書き忘れました。気が向いたら足しときます。多分やりません。