祝福と縛り
祝福、上位者から与えられる贈り物。
縛り、上位者から与えられる贈り物。
強い祝福を貰えれば人生勝利確定と言っても過言じゃないし、逆に強い呪いを貰えば詰み確定もあり得る。
そんな世界で、相反する祝福と縛りを受け、最強にも最弱にもなれず、普通を余儀なくされた僕の物語だ。
さて始まりは、僕が生まれたときまで遡る。
祝福も縛りも、基本的には生まれ持つもので、その数もほとんど1つが多い。世の中にはその体にいくつも内包して生まれる人もいるらしいけれど、そんなの歴史的に見ても数えられる程しかいないだろう。
そんな僕が生まれ持ったのは祝福と縛りの2つ。「成長の祝福」と「成長の縛り」だ。
「成長の祝福」、文字通り自分の成長を促す祝福で、自分の向き不向きに関わらずあらゆるものに適用されるため、大抵のことは人並み以上にできるようになる祝福だ。
これだけならそこそこ良い人生を歩めるはずだったのだが、1つ大きな問題がある。
それが「成長の縛り」。内容は肉体的な成長力の低下、レベルアップの不可の2つ。
おかげで16歳になっても見た目は8歳だし、膂力もない。レベルアップもできないからそれによるステータスの上昇も見込めず、村から出て見ようものならイノシシにでと殺されておしまいだ。
小さい身体を何度忌々しいと思ったことだろう。
短い手足、足も速くないちんちくりん。魔法適正も無いわけではないが、火はロウソクレベル、水も指先がちょっと湿るぐらい。
恐らくは人の2倍時間をかけて成長するものなのだろう。魔法を使うための器が成熟するのが大体15歳。それまでは、このままいけば30歳まで僕は魔法が使えないのだ...。
そんな子どもな僕は基本的には日中は村の手伝い、夜は勉強をして過ごしている。
唯一、自分の成長を感じられるのが勉強だ。知識だけは詰め込める。
村で出来そうなことは大体やった。畑仕事も牧畜も、その他も大抵のことは道具が身体にあったものがあればそこそこできる。でもそこまでだ。
身体の都合上どうしても出来ないことがとても多い。
気力だけじゃない。努力を重ねてもどうにもならない、肉体的の現実。でも知識だけは違って、食らって蓄えられることを許された。
だから僕は本が好きだ。哲学書も魔法書も聖典も、大体読むようにしている。
でも村にある本は大抵読み尽くして、立ち寄った商人に在庫があれば買ったり、街に行く人に駄賃を渡して買ってきてもらったりしている。
自分で買いに行ければいいが、去年大鷲に連れ去られそうになったので怖い。
肩を掴んだ足の恐怖を思い出していると母さんが扉を開ける。ノックぐらいして欲しい。別にやましいことは何もないけど。
「何、ご飯?」母さんは首を横に振ると視線を横に向ける。「?」と思いながら母さんと同じ場所に視線を向ける。
「ばばーん!」と元気に飛び出て来たのは良く見知った女の子だった。
こんにちは作者です。逃げないよう頑張ります。