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プロット

●プロローグ


 第二王子が姉のルピナに会うためにアイヴォン伯爵邸を訪れる。

 ロザリーナはいつものように使用人と同じように屋敷の仕事をしていた。


 水が入ったバケツは重く、階段でよろける。

 

(落ちるっ!)


 そう思った瞬間、その身体を支えてくれる人がいた。


「おい、大丈夫か?」


 黒髪と赤い瞳の、見たこともない、けれど明らかに貴族の男性だ。

 第二王子の側近だろうか。

 ルピナやアイヴォン伯爵夫人に知られたら、また折檻を受けてしまう。

 ロザリーナはすぐに詫びて去ったが、なんとなく、心に残っていた。

※黒髪の青年が第三王子


 どきどきと胸の高鳴りを感じつつ、自分とは関係ない世界に住む人だと、頭を振る。


 伯爵の妾の娘ロザリーナは、正妻と姉、使用人達に虐げられながら暮らしていた。

 衣食住はなんとかなっているが、扱いは使用人と同じ。

 母は亡くなり、父である伯爵は娘に興味がない。

 

 正妻の娘である姉はロザリーナの一歳年上。

「ロザリーナ、お前の髪は老婆のようね。わたくしの美しい銀髪とは大違いだわ」

 と日々けなす。

 ロザリーナの銀髪は姉のルピアとよく似ているのだが、やや白い。

 顔立ちも二人とも父親似の為、それもルピナの癇にふれていた。


 ルピナは癒しの力を持っていて、解毒も出来る。

 ロザリーナも治癒能力があるが、毒は消せない。


 ルピナは伯爵令嬢だが、治癒魔法が使えることで第二王子の婚約者だった。

 けれど傲慢でわがままな性格が災いし、婚約破棄される。

 王子や公爵令嬢にも失礼な態度を取り続けていたため、修道院送りになる。


 先日来た第二王子はそれを告げられ、ルピナとアイヴォン夫人は取り乱していた。


 だが、ルピナはそれを良しとせず、見た目がよく似ている妹のロザリーナを身代わりに、自分はロザリーナとして家に残る。

 ロザリーナに拒否権などなかった。



●第一章 春

 ロザリーナは姉の代わりに王都のはずれの治癒院併設の修道院へ。


 なぜか第三王子ランドリックが現れる。

 

 その姿に、屋敷でルピナが階段から落ちるのを助けてくれた人は第三王子だと知る。

 そしてあの時の優しい笑顔とは違って、いまは憎々し気な鋭い眼差しを向けられていることに泣きたくなる。


「義姉となるシュマリット公爵令嬢に働いた数々の無礼を俺は決して忘れないし、許さない。修道院に入っただけで罪を償えたなどとは思うなよ」


 嫌悪感を隠そうともせずにロザリーナをルピナだと思い糾弾する。

 


 悪女として見られ、修道院でもいじめにあう。

 けれどもともと下働きは得意だったし、平民にも孤児たちにも分け隔てなく優しく精一杯治療に当たるロザリーナを見て、修道女たちも徐々に理解を示す。


「あんた、今日は聖堂の掃除だけでいいわよ。……それなら、夕食の時間に間に合うでしょ」


 同い年の修道女モナが特にいろいろ手伝ってくれる。

 不思議がるロザリーナに「だってあんた、心を入れ替えたんでしょ。毎日毎日頑張ってるじゃない」



 ロザリーナを最初に認めてくれたモナは、それからもどんどん手伝ってくれるようになる。



◇◇◇◇◇◇ランドリック視点


 ランドリックは王太子である一番上の兄の婚約者で、幼馴染でもあるシュマリット公爵令嬢を不当に扱っていたルピナには激しい怒りを持っている。

 本来ならもっと厳しい北の修道院に入れられるべきところを、強い癒しの力を惜しんだ周囲の声により王都の修道院に入れられることになったのが不満。

 監視目的で時間があればロザリーナを見張りに来る。

 ある日、ロザリーナの手がボロボロな事に違和感は持つ。


(たった数日で、貴族令嬢の手があそこまで荒れるものか……?)


※ロザリーナは自分に治癒の力がある事をずっと隠すように言われていたため、自分自身に治癒を施すという発想がなかった


 そして修道院へ向かう途中ロザリーナが小さな子供が転んだところにすぐに手を差し伸べ頭をなでている姿に、胸がときめく。

 ヴェールから見える美しい口元が、優しく微笑んでいたからだ。


(なんだ、この感情は……くそっ、俺はあんな悪女に惑わされたりするものか)


 幼馴染のシュマリット公爵令嬢が何度も人知れず泣いていたことを知っているので、今までのルピナとの違いに違和感を持ちながらも認められない。

 ましてや恋心など、最悪だ。




●第二章 夏


●疫病エピソードを入れる


■最初に、薬を作っている描写を。

 ロザリーナだけでなく、修道女達が常に作っている。

 そしてロザリーナは母が薬師だったので、より一層強い薬を作れた。

 捨てられる魚の鱗を煎じて混ぜる方法など。


 薬草畑をモナと一緒にお手入れ。

 その時、雑草と思われて捨てられかけた特殊な草を見つける。

 いくつか生えていたそれを丁寧に根元から抜き、自室に持ち帰り栽培する。



 王都で疫病が流行り出す。

 貴族にはまだうつっておらず、平民の間でだけ。

 そして修道院でも何人か病に伏す。


 モナが倒れ、ロザリーナは必死で看病する。


 そんな中、ロザリーナが作っていた薬をグリフェが盗んだ。

 

 グリフェは、貴族の家で虐げられたことをずっと根に持っていて、伯爵令嬢だったルピナを憎んで嫌がらせをしていた。


「あんたにわかる?! わかんないよね! 熱い紅茶をかけられたことなんてないんでしょ!」


 修道女はヴェールを外してはならない。

 けれどその規則を破り、グリフェはヴェールを投げ捨てる。


 そこには、紅茶をかけられたためにできたであろう火傷痕が。

 すぐに治療させてもらえればそれほどひどい痕にならずに済んだのに、貴族のお嬢様の気まぐれで、グリフェは適切な治療を受けさせてもらえなかった。

 そして醜い痕が残ったグリフェを、貴族家は捨てた。


 顔に傷のある女など、どこもまともに働かせてなどくれない。

 貧しい実家は頼れなかった。

 修道女になるしかなかったのだ。


 モナが「でもそれはあんたの事情じゃないっ。ルピナがあんたにしたことは一つもないわっ」


 庇われたことをうれしく思いながら、ロザリーナはグリフェに向かい合う。

 

「怪我を完全に治せなくてごめんなさい……けれど、目立たなくすることはできるわ」


 時間が経ち過ぎた傷跡は、治癒魔法でも痕が残ってしまうのだ。

 赤黒かった火傷痕は、ぱっと見わからないぐらいに薄くなり、少し赤みのあるだけの状態になった。

 化粧で十分隠せる。


「なんでよ、何で治すのよっ、わたしは、あんたにずっと嫌がらせしてたのにっ」

「……ずっと、ずっと、お辛かったのでしょう?」


 ロザリーナは見ていた。

 グルフェはロザリーナには辛く当たるものの、患者を粗雑に扱ったことはなかった。

 どんなに見た目が悍ましい傷跡でも、優しく、丁寧に包帯を巻きなおしてあげていた。

 彼女は本来優しい人間なのだ。


「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……っ」

「薬を、返して頂けますか? あの薬があれば、伝染病をここで食い止めることができるのです」


 グリフェは素直に返してくれた。

 そして伝染病は終息を迎えた。



●第三章


※辺境伯領で魔物が多く出現する時期が来る。

 この時期は王都からも騎士団を派遣し、聖女や癒し手も連れて行く。

 

 辺境伯からの名指しでルピナが選ばれ、騎士団にロザリーナが同行することに。

 本来第三王子である自分はいかなくてもよかったのだが、ルピナと因縁のある辺境伯からの名指しだった為、認めたくはないがルピナが気にかかり、ランドリックも同行する。


(過酷な状況でこそ、人は本性が現れるもの。修道院ですっかり大人しくなったように見えたって、ボロを出すさ……)


 ★馬車を襲う盗賊などあってもいいかもしれない? 

 途中の街で、病気の親子を助けたり。


 辺境伯にも、その娘にも丁寧に詫びを口にするロザリーナの所作にも、ランドリックは違和感を覚える。

 どんな悪態をついてくるかと身構えていた辺境伯もその娘も、肩透かしを食らっている。



 そしていよいよ魔物の討伐に。

 魔物は思ったよりも多かった。


(くそっ、辺境伯の情報と食い違っている?!)


 故意か偶然か。

 辺境伯からもたらされた情報よりも強い魔物が出て、苦戦する。

 本来、後方支援に徹するはずの癒し手であるのに、ロザリーナは王子と共に前線にいた。


「重傷者を即治療したいのです」

「側にいれば、助けられるんです……!」


 ロザリーナを庇い、ランドリックは魔物を倒したものの大怪我を負う。 


「おまえ……なんかに、治療を任せられるか……っ」

「黙って!!」


 抵抗する第三王子を黙らせ、ロザリーナは治療を施す。

 その時、ヴェールの下の素顔が、横たわる第三王子からは見えた。

 ルピナによく似た、けれど違う顔が。


(あぁ、何だ、そうだったんだな……最初から……違っていたんだ……)


 魔力が枯渇する勢いで全力で治療にあたる真剣なロザリーナを見つめ、意識が遠のく。

 意識が戻ると、そこは辺境伯の城。


「ルピナは……っ、うっ!」 

「安静にしていてください。まだ完治はしていないのですから」


 辺境伯家の医者に止められる。

 傷は本当に深く、致命傷だった。

 ロザリーナの魔力が枯渇して気を失うほどでも、完治にはできなかったほどに。


 ロザリーナも辺境伯の城に担ぎ込まれ、意識が戻らない。

 辺境伯としては粗雑に扱いたかった。

 むしろ娘を傷つけたルピナを酷使してやろうという思いで指名したので思った以上の結果だったのだが、命を救われた騎士たちが睨みを利かせ、辺境伯領の部下達までもがそうな為、きちんと手厚く看護されていた。

 

 王子よりも遅れて三日後に目を覚ました彼女の手を握りしめ、王子は気が付いたら告白していた。


「今までの非礼を、どうか詫びさせてほしい。そしてわたしの婚約者になって欲しい」

「わたしのせいで、大怪我を……っ。それに、わたしは、多くの人を傷つけたのです。そんなわたしが、婚約者などと……」


 ロザリーナも、第三王子に心惹かれつつも、恐れ多くて受け止めきれない。

 けれど周りの後押しもあり、王家もルピナの治癒能力は惜しんでいたので、婚約を受け入れる。



●第四章


 修道女たちにも祝福され、幸せになれそうなロザリーナだったが、そこへ、姉のルピナが現れる。


「お姉さま、ご婚約おめでとうございます」


 微笑むルピナは、悪魔のよう。

 ロザリーナの侍女のベネットと、ルピナと、ロザリーナ。

 部屋に三人だけになると、ルピナは途端に本性を現す。


「そもそもわたしが修道院に来るはずだったのよ。変わりなさい!」

 

 王子との婚約話を耳にしたルピナは、再び自分と入れ替われと脅迫する。

 第三王子を愛するロザリーナは抵抗しようとするが、侍女のベネットが倒れる。


「やっと効いてきたわね。遅効性の毒よ。お前には解毒できない。助けたかったら、わかってるわよねぇ?」


 ベネットを助けるために、ロザリーナは再び姉と入れ替わる。

 また、ベネットはルピナの身の回りを世話するためという名目で残される。

 ロザリーナに対しての人質だ。

『他言すれば、彼女の命はない』

 そう宣言されている。

 ロザリーナは誰にも、愛するランドリックにも言えぬまま、修道院を去る。


 

 修道院では、ルピナがやりたい放題しだす。

 使用人の仕事は当然しないし、ベネットにすべて押し付けている。治癒だって見めの良い男や高位の病人しか相手にしない。

 それは、噂通りの悪女そのものの傲慢な姿。

 困惑する修道女達。

 特にモナは、絶対にロザリーナではないと気づき、どうにか本物のロザリーナと接触できないか思案する。


 ルピナは、第三王子の前では猫を被ったが、すぐに王子は見破った。


(こいつは、本物のルピナだ。じゃあ、俺の愛した、ルピナと名乗っていた彼女はどこへ?)


 モナは眉間にしわを寄せるランドリック王子に、意を決して伝える。

 妹を名乗る貴族女性が訪れた日から、ルピナの様子が変わったのだと。


(妹……? ルピナと同じ銀髪の?)


 はっとする。

 一度も会ったことはないが、アイヴォン伯爵家には『病弱な』娘がいると。



●第五章


 婚約式の日。

 伯爵家に戻されていたロザリーナのもとにも招待状が届く。

 王家から直々の指名な為、アイヴォン伯爵夫人も握りつぶす事は出来ず、しぶしぶロザリーナも連れて王宮へ。


 婚姻式は王宮と続く大聖堂で執り行われる。

 そこには国王と王妃、それに三人の王子。

 ルピナとして入れられていた修道院の修道女のみんなも揃っていた。


(わたしだと、知られてしまわないかしら……)


 俯き気味に、アイヴォン伯爵夫人に続くロザリーナは、ふと、視線を感じる。

 そこには、ずっと自分を助けてくれたモナが。

 まるで大丈夫だというように、強く頷く彼女に、ロザリーナは気付かれたかもしれない、けれど言わないでくれるのだとほっとする。

※本当は、モナは第三王子に連絡を取っていて、ロザリーナとルピナの入れ替わりを気づき、ロザリーナを助ける為に動いてくれている。 


 

 ルピナはまるでこの世の支配者であるかのように堂々としている。

 愛する人と、ルピナの婚約を見ていたくなくて、俯くロザリーナ。

 

 司祭が婚約式のセリフを言うと、けれど王子は

「ランドリック・ルトワールは、ルピナ・アイヴォンを婚約者として認めない」


 ざわつく聖堂。


 困惑するルピナ。


「貴方はわたしを愛しているはずだわ。貴方の命を救ったわたしを。そうでしょう?!」

「辺境で命を救ってもらった、それは確かだ。けれどそれをしたのはお前じゃない。そこにいる、ロザリーナだ!」


 突然王子に指名され、強い眼差しを向けられたロザリーナは息を飲む。

 すべてを諦めていたのに、王子がわかってくれて喜びに震える。

 

「私は愛する人を間違えたりしない」


 それでもひかないルピナに、王子は虹色の宝珠を取り出す。

 王家に伝わる宝珠で、真実には幸運を、偽りには不運を。

 そんな言い伝えもあるそれに、王子はルピナに今ここで祈りを捧げよと命じる。

 

「かまいませんわ」


 ルピナには勝算があった。

 ロザリーナよりもはるかに高い治癒能力。

 解毒すらできるという自負。

 意気揚々と祈りをささげるルピナ。

 けれど宝珠は輝かない。

 それどころか、全身に激痛が。

 のたうち回るルピナは、みるみる老婆のように。


 王家の言い伝えは本当で、偽りには不運を運んだのだ。

 自分の美貌と銀髪に絶対の自信を持っていたルピナは、老婆のようだと蔑み続けたロザリーナの銀髪よりもはるかに醜い姿になり果てた。


 どんどん老化が進みのたうち回る姉に駆け寄り、治癒を施すロザリーナをランドリックは止める。


「宝珠の代償だ。癒しの力では治せない」

「それでも、痛みを和らげる事は出来るはずです」


 精一杯祈りながら治療すると、ルピナの痛みは治まった。

 けれど醜く変わり果てた姿はそのまま。

 自慢の癒しの力も使えなくなっていた。


「お前のせいで!」


 しわがれた声でロザリーナをののしるルピナは、騎士達に取り押さえられて連行される。



●エピローグ


 アイヴォン伯爵家は、ルピナとロザリーナの入れ替え、つまり王家を謀った罪で爵位を子爵へ格下げ。

 領地も縮小される。


 平民にならずに済んだのは、ロザリーナが命懸けでランドリックを救った事実もあるから。


 ルピナの容姿は時間が経っても元に戻りはしなかった。

 屋敷に戻された後も鏡をすべて壊し、泣き暮らしているという。


 容姿だけが衰えただけであり、年齢自体は若いままだということもわかっている。

 彼女は老婆のような姿のまま、長い年月を生きなければならなくなる。


 罪人の家の子との婚約などと、ロザリーナとランドリックの婚約に不満を口にする貴族もいた。

 けれどロザリーナに救われた人達の声が大きく、辺境伯の後押しもあり、無事に婚約できることに。

  

 ロザリーナは、愛する第三王子と幸せに暮らす。 


 

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プロットを元に執筆中の連載小説はこちらです↓ 『不遇の伯爵令嬢は、第三王子に溺愛される』

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