手紙
ユラへ
これを読んでいるとき私はまだ生きてるかい?
そうだったらちょっと恥ずかしいな。今からでも遅くないから読むのをやめて机に戻してちょうだい。
もしも私が死んでしまっていたら、できれば最後まで読んでほしい。
手紙を書くなんて小学生ぶりだから文章とかおかしくても笑わないように!
さてさて、私が急に死んじゃってびっくりしたでしょう?
すい臓ガンっていう進行性の病気がみつかったのはあんたのお父さんに会ってから3ヶ月後くらいだった。
お店で働いているときに急に具合が悪くなってね、その時あんたのお父さんが助けてくれてそれからつきあうことになったんだ。
つきあうようになってすぐに病院へ行ってみたらガンがみつかったっていうわけ。
あんたのお父さんはバカだからさ、ガンだって宣告された日に私にプロポーズしたんだよ。
余命3ヶ月って言われたその日にだよ?
仕事をやめてうちでダラダラしてればいいよって言ってくれたんだ。
私はラッキーって感じで家に行ったらあんたがいたわけ。
そういえば子供がいるとか言ってたのを思い出したけど今さらやめるとも言えなくてね。
子供が嫌いなのは本当。
体調が悪かったし抗がん剤で気持ち悪かったし、あんたには辛くあたっちゃったこともあったよね。
本当にごめん。
でもあんたがイジメられてるってわかったときに絶対に許せないって思ったんだ。
私の家族に何してくれてんのよ!って本気で怒ったよ。
その時にはもう私の中であんたは立派な娘だったんだ。
私も気がついてなかったんだけどね。
復讐しようって言ったけど、いつ死ぬかわからない状態だったんだよね。
でもこのままあんたを残して死ぬなんて絶対に嫌だった。
気合で生きてたよ!人間やればできるもんだよね!
そうしてあんたは立派に復讐をした。
がんばったね。
いろいろあったけど挫けなかった。
私はそんなあんたに勇気をもらったよ。
生きることのすばらしさみたいなものを知ったよ。
ユラ、あんたは私の誇りだよ。
私が死んで悲しいかな?
うるさいのがいなくなってよかったかな?
私は寂しいよ。
あんたとどうでもいい話ができなくなるなんて。
あの世できっと寂しいと思ってるよ。
よく言うじゃん、死んだ人の分も立派に生きなさいとか。
私がこの歳で死ぬのは早いかもしれないけど、まだ、できることがあったのかもしれないけど、でも私は最後にやりたいことができて死を受け止めることができたんだ。
自分で自分を誉めたいくらいがんばったなって。
だから私の分までがんばって生きろとか誰かに言われても無視していいよ。
私はちゃんと自分の分を生きたから。
人に生きてもらうつもりなんてないからね。
あんたに死ねって言ってるんじゃないよ?
あんたにはあんたの人生をちゃんと生きてほしいと思ってるだけだよ。
ユラは強い子だ。
私が認める。
これからもクソみたいなことに出会うかもしれない。
自分の力じゃどうしょうもないときがくるかもしれない。
そんなときはまわりの人に助けを求めて。
人は一人じゃ生きていけないから。
一人でいいなんて絶対に思わないで。
無理に友達を作れなんて言わないけど、この先長い人生でたくさんの人に出会えるから。
今は一人だと感じても諦めないで。
私があんたのお父さんに会えたように、そしてあんたにも会えたように、人生いつ何があるかわかんないから!
大人になるまでまだ長いけどさ、大人になってからの人生の方が確実に長いからね?
焦らずに少しずつでいいから、あんたの良さをまわりに知ってもらって。
明るくて優しいユラをみんなに知ってもらって。
そのために1つ秘訣を教えるね。
『自分がされて嫌なことを人にしないこと』
何かをするときの基準にして。
相手が嫌なことをしてくるかもしれないけど無視できるときはして。
あんたはあんたの考えを全うして。
そこで腐ったらあんたの負けだからね!
なんて偉そうなこと書いたけどさ、ただの理想論で私ができてたわけじゃないのよ。
だからあんたもそういえばあの女があんなこと言ってたなぁーくらいのそのくらいの感覚でいいからさ、覚えておいてくれると嬉しいよ。
まずい料理を残さず食べてくれてありがとうね。
お父さんのことよろしくね。
ユラ、生きていてくれてありがとうね。
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