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die8話 ユーユの危機

 おばちゃんと呼ばれる人物は、苦い表情をしながら厨房の奥へと消えていった。どうやら、私がお金持ちに見えなかったらしい。失礼な。私は殺し屋リリィだぞ。お金なら腐るほど持っている。

私は財布の中を確認して、五万円を支払った。どうやら前払い式らしい。

 私が席へ戻ると、誰かがその席に座り食事を取っていた。

「ちょっと、その席私達が取っていたんですけど」

「あ?俺らが来た時、この席は空いていた。どこが取っている。だよ。後輩だろうが、喧嘩なら相手になるぜ」

「ちょっ、アヤヤ、こんな奴らに構っている暇ないよ。他の席行こう」

ユーユこと友実がアヤヤこと亜矢に説得していると。

「こんな奴、ら?ちょっと面貸せや」

「きゃ!」

その席に座っていた男子生徒がいきなり立ち上がり、ユーユこと友実の髪を掴んだ。

「「ユーユ!」」

「………」

アヤヤこと亜矢とリリーこと琳が声を合わせて叫び、心配そうにユーユこと友実を見つめる。

「………」

私は黙ったまま近付き、その男子生徒を見上げた。

「ちょっ、ヒビッチ、危ない」

 その男子生徒は体格ががっしりしていて、私達が見上げなければならない程に巨体だった。

「あ?どうした?喧嘩なら……いててててててて…………」

私は、その男の腕を捻り、更に殺気を出してその男子生徒を威嚇した。

「う……ほらよ」

その男子生徒は観念したのか、ユーユこと友実の腕を掴んでいる手を離した。

「「ユーユ……良かった。無事で」」

アヤヤこと亜矢とリリーこと琳は、安心しきった表情でユーユこと友実と共に喜んでいる。

「ありがとうヒビッチ。ちなみに今のって」

ユーユこと友実が不思議そうに訊く

「あ、あぁ……、護身術の一環……お父様が身につけろって……」

「すごいね。でもちょっとやり過ぎなような気も……あ、そうだ。もう料理出来ているかな?」

 またやってしまった……。また罪なき一般人に威嚇をしてしまった……しかも今度は危害まで、更に無意識とは言え、殺気まで……、まだ現役だったら、間違いなくクビどころか死刑になるところだった。一体私はどうしてしまったのだろう。次はない様に気を付けよう。まぁ、威嚇も十分にやばいのだが……。

「ユーユ、まだじゃない?だってまだ注文したばっかりだもん」

ユーユこと友実にリリーこと琳は、落ち着いていた。

 こいつらは、私がこんな事考えているってことは、絶対に気が付いてないだろうな。

 その時、料理の完成を告げるブザーが、手元の端末からけたたましく鳴り響いた。

「あ、出来たみた~い。あれ~?ヒビッチの鳴ってないね~。じゃあお先に~」

どうやら、あの日替わりメニューは、もう少し時間がかかる様だ。

アヤヤこと亜矢は私にそう言い残し、完成した料理を取りに行った。

 それにしても、座る場所どうするのだろうか。

「あ、そうだ~ヒビッチ~、私達もう食べているね~」

そう言ってアヤヤこと亜矢達は、本来座るはずの場所の隣で食べ始めた。私もそこの空いている席に座って待つ。

 その五分後、私の手元にある端末も料理の完成を告げるブザーが鳴り始めた。

私が出来上がった料理を取りにカウンターに向かうと、そこには鉄板プレートの上に乗っている大きなステーキが乗せてあるお盆があった。

 私はそれを持って、アヤヤこと亜矢達が待っているテーブルへと向かった。

 テーブルに着くと、三人から好奇の視線を向けられた。

「すご~い。あの伝説のメニューを注文するなんて、世純先輩以外で初めて見たよ~」

アヤヤこと亜矢が目をキラキラさせながら言う。

「そ、そうなのか……」

私は若干引き気味で、アヤヤこと亜矢の言葉に返す。

「ちなみにそのステーキ、国産和牛を使っているらしいよ~」

続けてアヤヤこと亜矢がそのステーキは国産和牛を使用しているということを教えてくれる。

 国産和牛のステーキか、懐かしいな。

最後にそれを食べたのは、機関の打ち上げか標的(ターゲット)との会食だったか。

 それは、もちろん殺しに必要なことだった。その標的(ターゲット)は警戒心が強く、一人でいることは滅多にない人物であり、更にはその人物は大量のボディーガードを大金でその人物の支配下に下らせ、その人物を裏切る事はなかったという。

 私は標的(ターゲット)の一番身近な人物に変装し、一時的にだがボディーガード達を引き離すことに成功した。その隙に標的ターゲットを殺した。

 なお、私が変装していた人物に濡れ衣が被ったのは言うまでもない。その人物がその後どうなったかは当然私は知らない。

「今日って色々あったよね。ヒビッチが転校してきてさ、ヒビッチがちょっとおかしな子だって知れたし」

「ちょっ、ユーユ、本人の前でそれ言う?普通」

ユーユこと友実とアヤヤこと亜矢は、楽しそうに笑っている。

 私は、なぜこの街が好きで、離れられなかったのか、ようやく分かった気がする。この街で生まれ育ったからじゃない。この街の人間が好きだから、この街の人間の笑顔が好きだからだ。だから、この街の平和を守りたい。

「悪い、ちょっとトイレ……」

「うん、早く戻ってきてね。お肉固くなっちゃうから」

 リリーこと琳の声に笑顔を返し、トイレへと向かって歩き出した。

 自分でも分かった。さっきの笑顔は、アヤヤこと亜矢に友達になろうと言われた時よりも笑えていた。

 私はトイレの個室に入り、機関へ電話をかけた。

『何の用だ?リリィ』

「お父様、いいえボス、お願いがございます」

『お前がお願い?珍しいこともある物だ。聞こう、お前のそのお願いという物を』

「私を長期休みの間だけ、復帰させてもらうことって可能でしょうか?」

私の言葉にお()()は。

『検討しておくとしよう。しかもこんなにも早く復帰の連絡をくれるとはな、私の見解では花咲学園での生活をもう少し満喫してから連絡が来ると思っていたのだがな。さてリリィ、確か寮に戻るのは、十七時だったよな。連絡する時間帯は十七時過ぎ頃で良いな』

「ありがとうございます。嬉しいですお()()。では、いつでもご連絡、お待ちしております。本日は大切なお時間をお取りくださり、誠にありがとうございました。それでは、失礼いたします」

私は、その言葉を最後に、電話を切った。

 私がトイレから戻ってくると、私は三人の様子がどこかおかしいように感じた。

「どうした?」

「あ、ヒビッチ、何でもないよ~。ホントに、ホント~に何もないから」

 アヤヤこと亜矢の声色は、一般人でも怪しいと思うような声色だった。

そして、ユーユこと友実が次に口を開いた。

「ごめんね、ヒビッチ、ステーキ、3切れ食べちゃった」

続けてリリーこと琳が謝った。

「あたしも最初は止めたんだけど、段々誘惑に負けてきちゃって、あたしもちょっと食べちゃった。本当にごめんね」

リリーこと琳は手を合わせて謝った。

「なんだ、そんなことか……」

「え?いいの?」

アヤヤこと亜矢は、驚いたような声でそう言った。

「まぁ、そんなこと事で怒るか?普通……」

「ありがとうヒビッチ~」

そう言ってアヤヤこと亜矢は、私に泣きついてきた。

アヤヤこと亜矢は私から離れる事なく、結局リリーこと琳に引き剝がされた。

 気を取り直して私は、ステーキを一口頬張った。

「うん、美味しい」

そう言って、私は頬を緩める。後は、機関からの連絡を待つばかりだ。私はこの街の平和を守れれば、それでいいのだ。たとえ、次で命を落とすとしても。

「ヒビッチ良い食べっぷりだね~。お金払った甲斐があるでしょ~」

自慢のように身体を反らすアヤヤこと亜矢

 夕食を食べ終わると、各々の部屋へと戻り、着替えを持って、浴室へと向かう。

 どうやら花咲学園の浴室は、湯舟などはなく、個室となっているそこには、シャワーが一つあるだけだった。

 私はシャワーを浴びた後、体の水気を拭き、下着やパジャマを着た。

 個室を出ると、アヤヤこと亜矢達が出入り口付近で待っていた。

「それじゃ~、行こっか~」

そんな風に言って、浴室を後にするアヤヤこと亜矢達、私はその後に付いていく。

「ねぇ、ヒビッチのパジャマってさ、男用じゃない?」

 実際、私が今着ている物は私には少し大きかった。これは昔お()()と共に買いに行った物で、私のお気に入りだった。

「あ~、もしかして塔弥様の物でしょ。抜け駆けは許さないよ」

 ユーユこと友実が一人で騒いでリリーこと琳に取り押さえられるのを見ていると、アヤヤこと亜矢に「ああいうのは放っておいたらいい」と言われたため、私はアヤヤこと亜矢の後ろ姿を追った。

「うるさいよユーユ、塔弥君のじゃないかもしれないでしょ」

そんな言い合いは、部屋に着くまでやっていたユーユこと友実とリリーこと琳、しかし今は、驚くほどに静かだった。

 部屋に戻ってきた私とアヤヤこと亜矢、私は部屋に入ってすぐに寝る準備を始めた。

「へぇ~ヒビッチって、早寝なんだ~」

殺し屋は闇に紛れて、仕事をするのがほとんどのため、機関の者達は、大体寝不足か昼夜逆転しているのだ。ちなみに私の場合は、最近寝不足気味だ。

「まぁな、ふぁ~」

私は、あくびをしながら寝る準備をする。なお、歯磨きは先程脱衣所でしてきたため、心配しなくても大丈夫だ。

私はベッドに入り、目を閉じた。


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