die6話 初めての友達と寮生活
その日の放課後、私は寮を案内されていた。
「ヒビッチも寮で過ごすんだ~。私達と同じなんだね~」
寮内を歩きながら、アヤヤこと亜矢は言った。
「あぁ、ということはお前達もそうなのか……」
「うん、そうなんだ~っと、着いた~ここが中学部の階だよ~」
話していれば時間などすぐに過ぎてしまう様で、この後改めてこいつらの異常さを再確認する事となる。
「ということで始めちゃう?ヒビッチに寮の案内とあたし達の部屋紹介」
「お~リリーナイスアイディア!まずは私達の部屋から、いいよね?いいよね?」
「うん、もちろんいいよ~」
「あたし達ってどういうことなんだ……?」
「あ~、ヒビッチ知らないんだよね~。この寮は二人一部屋なんだよ~」
「ふーん、そうなのか……」
「ヒビッチってさ…なんか反応薄いよね」
アヤヤこと亜矢が心配そうに私を見つめる。
「そんなことはない…と思う……」
「じゃあ~、改めまして~ユーユ達の部屋紹介、行きましょう~」
「「「おーーー」」」
三人は声を揃えて言った。
やはり、この三人は危機感というものが備わっていないようだ。
私達はしばらく歩き、やがて部屋の前でその足を止めた。そして、ユーユこと友実がその部屋の扉を豪快に開ける。
「ここが私達の部屋だよ。ヒビッチ」
「ほぅ、中は、思いのほかシンプルなんだな……」
「うん、そうなんだよね。家具とかを動かすことは禁止されているから、その場所に合った物とか、置く場所とかを慎重に決めないといけないから、大変なんだ。あたし、こういうのって苦手なんだよね…」
そう言って肩を落とすリリーこと琳。
「リリーって整理整頓とか苦手だよね~」
アヤヤこと亜矢は、笑いながら言った。
「じゃあ、次は私の部屋にレッツゴ~」
「え、もう?」
「うん、もう見たでしょ~。それに、中にある物、見えているので全部じゃ~ん」
「ぐぬぬ…仕方ないか、次はアヤヤの部屋に行こうか」
そうして、ユーユこと友実とリリーこと琳の部屋から出た私達は、次はアヤヤこと亜矢の部屋へと向かうのだった。そうは言っても、隣の部屋だったので、さほど移動はしていなかったのだが
アヤヤこと亜矢が部屋の扉を開けるや否や、私は部屋の中の一点に目を向ける。
「……私の荷物…ここにあったのか……」
「へ~、これ、ヒビッチの荷物だったんだ~。これ、一週間くらい前に置いてあったから何だろうって思っていたんだ~。ようやく謎が解けたよ~。あ、そう言えば気になって、中身見ちゃった。ごめんね、ヒビッチ~」
「まぁ、見られて困るようなものは入ってないから、別にいいが……」
そう、本当に見られて困るようなものは入っていない、先程も言ったが銃器などは機関から出る際に取り上げられたため、もちろん中に武器等は入っていない。そして、その中には、服と漫画が入っている。漫画は機関にいた時からずっと読んでいたもので、私の愛読書だった。ジャンルは殺し屋の物語など、裏社会を描いた物語ばかりだ。と、いうよりも機関にいた時は仕事ばかりやっていた。仕事がない時は、いつもその漫画を読んで暇を潰していた。
「ありがと~、っていうかその漫画、だいぶ古いよね~、もしかして、今の親の物?」
「まぁ、そうだな。貰った物だが……」
「へぇ~、面白そうだね。う……、これってもしかして、怖いやつ?」
「怖いのか……?」
私にとっては日常生活の一部を切り取った様な物語なので、そこまで怖いとは感じなかった。だが、他の人間とっては怖いと感じるようだ。
リリーこと琳とユーユこと友実は、話についていけず、そのまま傍観者となっていたのだが、リリーこと琳が急に私達の間に割って入り、声を掛けた。
「ん?あ、それ、おじいちゃん家にあったやつだ。今もあるかどうか分からないけど、だいぶ怖かったな」
「え~、怖いのは嫌だな~」
「確かに、アヤヤ、怖いの嫌いだもんね。でも、怖いと言ってもグロイくらいなんだよな~。私、怖いのはいけるけどグロイのは……」
「ちょっと、何の話?全然ついていけないんだけど」
「私もだ……」
「ヒビッチ……、わーんヒビッチ~。私達は仲間だ~」
ユーユこと友実は、そう言って私に抱きついてきた。
私はいきなり抱き着かれたことでバランスを崩し、そのまま床に押し倒された。
押し倒されて床に叩きつけられた音で二人は私達の方へ振り向き、私の今の状況を理解した。
「ちょっと、何してるの?」
二人は私に近寄り、アヤヤこと亜矢がユーユこと友実にどうしてそうなったかを訊いた。
「それはユーユが悪いよ~」
事情を訊いた後、アヤヤこと亜矢がユーユこと友実にそう言った。
「あはは、ごめん」
「……受け身…取り忘れた……」
「すごいよヒビッチ、受け身も取れるの?」
リリーこと琳が驚いた表情を隠そうともせず、私に訊いてきた。
「まぁ、な、お父様に教えてもらった」
「お父様?」
「は!」
思わず口を滑らせてしまった。
「どうしたの?」
「あ、いや、何でもない……」
よくよく考えたら、お父様という呼び名は普通。しかも、こいつらは今のお父様か本当の父親かが分からない状態。よってこれは失言ではない。
「今のお父様、自衛隊だから……」
「そうなんだ~。私のお父さんも自衛隊でさ~、ヒビッチの今の親どこの基地のどの部署なの~?お父さんと一緒だったらいいな~」
「……聞いたこと…ない……」
どうやら、アヤヤこと亜矢の父親は、自衛隊らしい。これは失態。いくら私でも短時間で、花咲学園の生徒全員の情報を確認することは不可能に近いことだ。この前、機関から出る時にでも、確認しておけば良かった。
「え、えっと…私達もう自分達の部屋に戻っていいかな?」
ユーユこと友実がそう言うと。
「あ、うん。二人共疲れたでしょ、ありがと~」
アヤヤこと亜矢は、リリーこと琳とユーユこと友実に笑顔で手を振った。
「うん、また夜ご飯に」




