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die4話 過去のトラウマ?

「……私は…ごく一般的な家族で……私達は平和に暮らしていた。そして、両親を不慮の事故で亡くし、私は養子に出された……これでいいか……?」

 私は考えに考えた結果、覚えていることをありのままに伝えることにした。もちろん機関にいたことや、実の親を今のお父様に殺されたことなどは隠して

「そ、そうだったんだ」

塔弥という男子生徒が心配そうに私を見つめる

「ひ、ヒビッチ大丈夫?無理に辛いこと思い出させてごめんね。ほら、塔弥くんも謝る」

アヤヤこと亜矢は、塔弥という男子生徒に怒り口調で言って、塔弥という男子生徒に謝罪を求めた。

「ごめん、それほどまでトラウマだったとは…本当にごめん」

 何を言っているんだ?私は殺しが日常だった。だから、過去なんてとっくの昔に捨ててしまったはず……。

「とりあえず、涙拭こ。ね?」

「え?」

アヤヤこと亜矢に言われるまで、私は自身が泣いていたことに気が付かなかった。

 私は服の裾で涙を拭い、無理やり自分を泣き止ませた。

今、思ってしまった。一週間前、同じ方法で泣き止めば良かったのだと。あの時は、泣き止むのに軽く一時間は要してしまったから

「だ、大丈夫?話せる?じゃあ、ヒビッチは聞き役になって」

リリーこと琳が心配そうな声音で言う。

「はいはーい、次は私のこと、いろいろ教えちゃいたいと思いまーす」

「ちょっ、ユーユ、ヒビッチさっきまで泣いていたんだよ」

「えー、さっきまで泣いていたから楽しい話するんじゃん」

「まぁ、それは分からないでもないけど…」

「リリー、そんなことも知らないの、これだから脳筋は」

 私は一瞬、リリーという言葉に反応してしまったが、幸いにも皆の視線はユーユこと友実と、リリーこと琳に向けられていて、笑っていた。

「それでまぁ、私にはね、お姉ちゃんがいるの、お姉ちゃんは緑山(みどりやま)高校(こうこう)って高校の副会長で、最近質の良い後輩さんが生徒会に入ったんだって、名前は確か…梓紗(あずさ)さんって言ったかな?」

 その時、隣のテーブルにいた人が、一瞬身体がビクッと動いていたのを、私は見逃さなかった。

「でね――」

「――ちょっ、ユーユ、自分のこと言うんじゃなんじゃないの?」

リリーこと琳がそう指摘すると

「あ、そうだった。まぁいいじゃん。身内のことでも」

「まぁ、いいけどさ」

「でね、話戻るんだけど、他にもいろいろな後輩が入ってきたらしくって、でもちゃんと仕事をこなせているのは、その梓紗さんだけなんだって、すごいよね、一年生なのに」

「いや、ちょっとユーユ~、一年生と言っても高校生だよ~。そこにいる()(つな)先輩と同じなんだよ~。世純先輩もそう思いますよね~?」

アヤヤこと亜矢は、そう言って隣のテーブルの人に話しかけた。

「は、うっさいわよ。全く、黙って食事を摂ることも出来ないのかしら?この一般庶民は」

 その世純先輩という人物は悪態をついて、ため息を零した。

「ご、ごめんなさい。ちなみに梓紗さんって人は、お姉ちゃんと同じ緑山(みどりやま)高校(こうこう)三姫(さんき)って言われているそうですよ」

「ちなみにユーユは高校、緑山高校に入学するんだよね~?」

「ちょっ、アヤヤ、それは言わないお約束」

「ごちそうさま」

「塔弥、食うの早」

「まぁ、君達のペースで食べな」

「むぎゅ~、塔弥様カッコイイ……」

「ちょっ、ユーユ…」

 ユーユこと友実はその場で倒れてしまった。

 まぁ、私は寝たのだと思ったのだが……。

「それで、響ちゃんは食べ終わった?食べ終わったなら僕が学園内を案内してあげるよ」

「え、え、それって、それってもしかしてデート?ヒビッチと塔弥様で………」

「まぁまぁ、ユーユここは二人にしてあげようよ」

「えぇーなーんでー?ヒビッチ羨ましすぎるじゃーん。離してよリリー」

「それじゃあ、行こうか」

「あ、あぁ……」

 食べ終わった私は立ち上がって、塔弥という男子生徒のところに移動する。

 途中、ユーユこと友実が足を伸ばして私を妨害しようとしてきたが、つい昨日殺し屋を引退したばかりの私を止められるはずもなく、というよりもユーユこと友実は私の対角上に座って、なおかつ必死に足を伸ばしていたが、私のところに届かなかったため、私でなくても当たり前である。

 そして、塔弥という男子生徒は手を差し出した。

「何だ?これ?」

「え?手を握ってくれるかと思って…まぁ、響ちゃんがその気じゃないなら、別にいいけどさ……」

「どういう意味だ?」

私は、首をかしげてその意味を訊く。

「いや、何でもないよ」

「そうか……」

「ふっ、聞かないでくれるんだ。響ちゃんは優しいね」

「そうか?今までそういうの気にしたことなかったが……」

 教えてくれないのであれば、どうでもよかっただけだったのだが。

その様な会話をしながら食堂から出る。

 視線が全くと言っていい程途切れない。むしろ視線が増えている気がする。

「ハハハハハ、僕と一緒にいると視線が飛んでくるよ。いい加減慣れないとね」

「馬鹿にしているのか。お前」

「お前じゃなくて塔弥って呼んでほしいかな」

「ふん」

私は塔弥という男子生徒から顔を背けた。

「仕方ないだろ……察してくれ…私はそういう人間なんだよ……」

 殺し屋は安易に他人を信じてはならない。まだ殺し屋の感覚が抜けきっていないようだ。まぁ、そんなすぐ抜けきるとは思っていないし、気長に待つとするか。殺し屋の感覚が抜けきる、その日まで。

 それにしても、正直ここは落ち着かない。血の匂いもしないし、何よりもこいつらはまるで危機感が無さすぎる。元殺し屋の私が目の前にいるというのに……。

「なぁ」

「何?響ちゃん」

「もし…目の前に殺人鬼がいたらどうする?もちろん、簡単には逃げられないし、その殺人鬼が相当の手慣れだったら……声は出せる状況で……」

「ん~、もちろん命乞(いのちご)いをするよ。でも、何で急に殺人鬼?」

「………」

「響ちゃん?」

 私はつい押し黙ってしまった。自分でもなぜそんな質問をしたのか分からない。分からないからこそ、押し黙ってしまったのだ。

「それにしても、学園内を案内してくれるんだろ。だったら、さっさとしろ」

「ハハハ、響ちゃんは気が強いな」

「……済まない……」

「別に謝ることじゃないよ。性格は人それぞれ、だから気にしないで」

 塔弥という男子生徒はそう言って微笑んだ。

「僕の昔話を聞いてどうだった?少しだけど興味持っていたよね」

「まぁ…な」

「うーん、案内すると言っても正直、寮と教室と食堂の道さえ覚えてれば何とかなるんだけどね。って僕は何で案内をするって言ったんだろう」

塔弥という男子生徒は笑いながら言った。釣られて私も笑ってしまった。

「その笑った顔、あの子にそっくりだ」

「そ、そうなのか……」

 私は、お前なんかとは面識はないはずだが……過去の記憶が欠落している今の私に、そんなことを言う権利はないか……。

結局はこうやって普通に話している。こいつはどうしてそんなにも平然としていられるのだろうか、まぁ、それはこいつ以外にも言えたことか……。

「僕の話、もうちょっと聞きたい?」

「え?」

「あ、いや、案内するって言ったのに、よく考えたら案内するとこないしさ、寮はあるけど、普段立ち入り禁止だから」

「まぁ、お前が言いたいのなら、別にいいが……」

「そう、ありがとう、じゃあ、言わせてもらうけどさ、まずどこから聞きたい?僕の家柄のこととか、あの子との出会いまで、いろいろ教えてあげるよ」

 いろいろと聞かせてくれるならば、塔弥という男子生徒を知れるチャンスだ。

「じゃあ、お前の家柄から、全部話してくれ……」

「了解、じゃあ話させてもらうね、僕のお父さんは警察官なんだ。極悪人を取り締まる部署の警部でね。最近だと正体不明なリリィって殺し屋を探しているみたい。でも、少ない情報で探し出せるのかなって僕は思うんだけどさ。ハハハ……」

「!」

 お()()はそれに気付いて、私を逃がす為に言ってくれたのだろうか…『お前の仕事は最後だ』って、いや、ないな、どうせ私が幼すぎて機関から外されたのだろう。お()()もそう言っていたし、殺し屋は安易に他人を信じてはいけない、と言ったが、私の中でお()()だけは例外であり特別なのだ。だから、自らの命だってお()()に捧げられる。私はお()()に助けられ、育てられた。それくらいはしなければ失礼というものだから。

「それじゃあ次は、あの子について話そうか、あの子との出会いは、小学三年生の時、夏祭りに行った時に僕は、友達とはぐれちゃってね、同じく親とはぐれたあの子に出会ったんだ。まぁ、出会いは、本当に偶然で、友達を探していた時にばったりとね。あの時あの子は泣いていた僕に自分が食べるはずだったりんご飴をくれた。あの子の親が迎えに来ても、あの子は僕と一緒にいてくれて、嬉しかったんだよ」

 小学三年生……私の両親が…殺される……前……。

「っとまぁ、これが僕の初恋、どうだったかな?」

「お前は物あげるだけで懐くのか、まるで犬だな……」

「あははは、それはまぁ、そうなんだけど、昔のことだし、子供なんてそういうものでしょ。そして何よりも楽しかったなぁ」

 塔弥という男子生徒は微笑みながら遠い目をして、昔の事を思い出していた。一方私は、泣いているのを悟らせぬ様、塔弥という男子生徒とは反対の方向へ顔を背けた。

「ふと思ったが、何でお前はそんなにも私に興味を持っている?私とつるんでもいいことなんて何一つとしてない。逆に私と関わらないことをおすすめする」

「何で、何でそんなことを言うんだ。そんなこと君が決めることじゃない、僕が決めることなんだ。だから、だからもう自分とつるむななんて言わないでよ。響ちゃん」

塔弥という男子生徒は、慌てた様子でそう言った。

「フッ、な~んてな」

「え?」

私がそう言うと、塔弥という男子生徒はそう素っ頓狂な声を出した。


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