die24話 初めての授業参観は波乱の予感
そして今日は授業参観と三者面談という行事らしい。
この花咲学園では授業参観と三者面談を同時に行う学園だと塔弥という男子生徒に教えられたのだが、私にはさっぱりだった
先日そのプリントが配られたのだが、配られた後にアヤヤこと亜矢に授業参観や三者面談とは何か訊いたらかなり驚かれた。
授業参観は午後からのようで心なしかクラスが落ち着かない雰囲気が漂っていた。
午前の授業も何だかほとんどの人が心ここにあらずのようで教師の怒号が何回も響いた。
そして午後の授業開始五分前くらいになると見知らぬ大人達がぞろぞろと教室内に入ってきた。
そして授業が始まったばかり、廊下の方でものすごい物音がした。
私は嫌な予感がして無視を貫いていたが、ちらりと確認するとベンツが学校の壁を突き破っていて、そこから妖艶なスタイル抜群な美女が降りて教室の方にゆっくりと歩いてきた。
妖艶な美女が教室に入るとあちこちで「あれって加奈芽だよな。グラビアの」や「なんで居るの⁉」などと言う声が聞こえる。
美女の格好はまるで授業参観に来た親とは思えないほど、逆に怪しげな格好をしていた。
美女は私の姿を見つけると、「響ちゃーん!」と手を大きく振って声を上げた。
私は目立たないように気配を消す。が視線が突き刺さりまくって、正直逃げたくなった。
「お母様……」
と、小さく呟く。
更にあちこちから「響ちゃんって言った⁉」や「あれって、世純先輩のお母さんじゃなかったっけ」など噂話を始めた。
井上教師もかなり見惚れていたようだったが、そこは教師、「皆さん静かに」の声でクラス中を黙らせていた。
実際、塔弥という男子生徒も私に話しかけていた程だ。
レーニス……。余計なことをしやがって……。
そう、このレーニス、芸能界で表向きは活躍しているが、裏ではサレックやベレータと同じ機関に所属している現役の殺し屋だ。更に私のお母様でもあった。
お母様の登場で教室内が授業どころじゃなくなりかけたが、今は驚くほど静かになって井上教師が話をしている。
「え~、今日は授業参観の日です。皆さん親御さんに自分の成長をたくさん見てもらいましょう」
井上教師の言葉の後に今日の日直が授業始めの号令を出す。
出すのだが、なぜ今日に限って私が日直なのだろうか。まぁ、花咲学園の日直は二人一組で、男子女子でやることが決まっている。ちなみにこの二人の日直は授業の号令の始めと終わりを交互にやる。始めの号令を女子、終わりの号令を男子だ。なので、負担は少ないと言えば少ない。
「起立、気を付け、これから午後の授業を始めます。お願いします」
私が言うと他の皆も「「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」と続く。
なぜいつもは手を挙げないクラスメイトも、いつもは名前を呼ばない井上教師も、なぜ今日は積極的に手を挙げ、声をかけるのだろうか。
授業が終わり、井上教師は保護者達にとあるプリントを渡していく。私の三者面談の時間は十六時~十六時半らしいので私は適当に校内をふらつくことにした。ちなみにお母様が私に付いて来ようとしたので、しっかりと拒否しておいた。教室に残っていても、質問の的になるだけだ。
しばらく歩いていると図書室と書かれた場所が目に入る。
ちなみにアヤヤこと亜矢達と遊ぶ時、ユーユこと友実だけがいない時があるのだが、その時は大体図書室に居るのだとアヤヤこと亜矢から聞いた。
なんとなく私は図書室で暇を潰すことにした。
私は図書室には入ったことがなかったので少しワクワクしながら入った。どうやらここには私のことは知れ渡っていない様だったので助かった。
入るとユーユこと友実の後ろ姿が目に入った。
なんとなく私はユーユこと友実の隣に座る。
そしてユーユこと友実は私をちらっと見たかと思えば、人差し指を唇に添えた。
いつものように塔弥様がどうこう言われるかと思ったが唇に人差し指を添えただけで本に意識を戻した。
辺りを見渡してみると本が入っている棚がずらっと並んでいた。
そしてぐるっと見て回っただけでポケットの中のスマホが鳴った。
画面を見てみると『レーニス』と書かれていた。そしてなぜか私の方に視線が向けられている。その視線から逃れるために私は図書室から逃げるように出た。
「あ、響ちゃん?助けて。とりあえず一階に来て?」
通話ボタンを押したら慌てたような女の声が聞こえた。
言われた通りに一階に降りると、人が玄関の近くに群がっていた。
そこには小柄な、私と同じくらいの身長だろうか、スーツを着た女性。ベレータもといこうちょーと自身は完璧な変装スタイルだと豪語する不審な格好の美女、お母様が居た。
そちらに行きたくないなと思っていたら、ふと美女がこちらを見て私と目が合った。するとレーニスは手を大きく振ってこちらに来た。腕にしがみついたこうちょーを引きずりながら。
私は思わず逃げる体勢を取るが、ふと考える。周りの人達は大人が来たら嬉しそうに、また恥ずかしそうにしながらもそちらに行く姿や待つ生徒の姿があちこちで見られた。なので私もそこで待つことにする。
すると、美女が私の手を取る。そちらを見ると優しく微笑みかけているレーニスの姿があった。
「響ちゃん、よく逃げなかったわね?前までは距離を取っていたのに。ようやく私をお母さんって認めてくれた?」
「お母様が来いって言うから来たんでしょう……」
私はため息を吐いた。
「あの人は別の人でいいって言うけど私が無理言って来ちゃった。まぁ響ちゃんの事詳しく知っている人少ないから、多分どっちみち私になっていたと思うわよ」
散々騒ぎになっていたのと芸能人の襲来で当然人が集まってくる。それに私はレーニスの後ろに隠れる。
すると、一人の少女がこちらに歩いてきた。レーニスに似て目元がぱっちりしていて胸の主張が激しいその少女はレーニスの前に来ると。
「お、お母様?どうしてこちらに?」
少し遅れて慌てて一人の老人と二人の生徒が歩いてきてレーニスを睨んだ。
「奥様、世純様の親権を放棄したあなたがここに何の用でございますか?お引き取りください」
老人のその態度に呼応するかのように人が集まっていく。
そしてレーニスはそれに動じることなく笑顔で言った。
「あら?私はただ、可愛い可愛い娘の三者面談に来ただけなのだけど?」
そう言ってレーニスは私の頭を撫でた。
「あら、その後ろに居るのって?」
「お嬢様、なりません。蓮山を捨てた者に」
世純先輩が後ろの私を見て言うとそれに被せるかのように男子生徒が一歩前に出る。
うっとうしいぞ。殺し屋の家系の奴。
まぁ、三者面談が始まる前に一悶着あったが、私とレーニスは、というか私はお母様から逃げるようにして歩いている。
「いやぁ、響ちゃんがまさか世純とお友達だったとはねぇ」
レーニスがニヤニヤしながら言ってきた。
「どうなんでしょう?どちらかと言えば知り合いの方が近いでしょうか。まだ少ししか話したことがないので、お母様は世純先輩と仲良くなってほしいのですか?」
私が言うとレーニス、いや、お母様は。
「そうね、母親としては仲良くなってほしいかな。ちょっと微妙な気もするけどね」
そんな会話をしていると、ちょうど私の教室、一年A・Ⅽ組に着いていた。
教室の前には先程まではなかった二組ほどパイプ椅子が並べられ、次の組が座って待っていた。
なんとなく私とお母様はそこで次の人達を見学して待つことになった。
十六時になり、私の前の番の親子が教室の二つある扉の内、私達から遠い方の扉から出てくると、お母様は教室の扉をノックする。
中から「どうぞ」と井上教師の声がして、お母様と私は失礼しますと言って教室内に入る。
教室内には机が端に寄せられて真ん中に四つの机がくっつかれて置かれていた。
お母様はこれまた失礼しますと言って席に座った。私も隣の席に座る。




