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『学校宿の殺人』+α  作者: 稲多夕方
1日目
9/51

「シュート練習」16:20


 体育館。

 1人だけだった。居残り練習。

 放ったロングシュートがゴールリングに吸い込まれた。パシュ、という心地よい音。


「ナイッシュ」声をかけられた。

「あ、萬井さん。お疲れ様です」

 ユニフォームからジャージに着替えた萬井さんが僕を見ていた。

「もうみんな戻ったぞ。まだやるのか?」

「はい、もうすこしだけ」

「マジメだなぁ。さっきもシュートちゃんと決まってたじゃねえか」

「いえ、さっきの場面も、僕が1発で決めてたら……そう思うと練習しておきたくて」

「そうか? 充分スムーズだったと思うが?」

「いいえ。まだまだです」

 僕はシュート練習を続ける。

 この合宿、やることは多い。でももうすこしだけ、もうすこしだけ。コツを掴んでおきたい。

「てか鶴木、おまえストイックだよなぁ。――あ、手は止めなくてもいいぞ。雑談だから」

「そうですか?」

 ストイック。――よく言われるが、よくわからない。ただできることを積み重ねているだけだ。

 シュートを打つ。

「なにか目標でもあるのか?」

 シュートが外れた。


「……目標、というか憧れている人がいて」

 ちょっと照れるがせっかく聞いてくれたので伝える。

「へーそうなのか」

 萬井さんが興味を持ったようだ。

「その人みたいになりたくて、すこしでも近付きたくて頑張ってもがいている感じです」

「そんなにすごいのか、その鶴木が憧れてるヤツ」

「ええ、そうなんです。繊細でいて大胆で――麗らかな動作で――逆に他人を引きたてるのもうまくて――」

 僕は萬井さんに『憧れの人』のすごさについて、仔細に詳細に伝える。

「お、おおう」

 萬井さんが引いていた。

「あ、すいません」

「まあ鶴木。おまえが今回のエースなんだからな。合宿もまだ1日目、あまり序盤から無理するなよ」

「え、僕がエースなんておこがましいですよ。僕より上手い人がいるじゃないですか」

「いやいや、お前みたいに1人で2人分やってるやつより上手いヤツって……ん?」


 明らかじゃないか。

実力差も明白だ。

 僕よりも断然、上手である。


「いったい誰だよ?」

 萬井さんが聞いてくる。


「え、それは――」


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