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プロローグB「生者に口あり」
薄着の女は、暗い部屋の中で光る画面を注視していた。
「だいじょうぶか?」
「ぅわっ! びっくりした!」
集中していた女は背後の人物に気づかず、驚いた。
「ったく。あんた、急に声かけないでよ!」
「す、すまん」
ホレ、と大男は持っていたマグカップを手渡した。
2人だけの部屋。
時間が流れていく。
ふいに女が口にした。
「……あたし、死ぬわ」
「…………」男は二の句が継げなかった。考える。
「だれか死ななきゃいけなかったし。それなら、あたしが適任かな、て」
「オイオイ……おまえは必要だろ。それなら俺が死んだ方が……」
「ダメ。そんなの、あんたには……」
女が目を細めて、言った。
「あたしが殺された後は……よろしくね」
笑みを浮かべながら。