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『学校宿の殺人』+α  作者: 稲多夕方
2日目
31/51

「推理展開」10:00


 僕らは『2-3』教室にて休憩していた。一時待機である。

 僕は本を読む。

 館山さんは学習机付属の椅子に腰掛けて、うとうとと舟を漕いでいる。疲れているのだろう。その様子は、かわいい。

 他のメンバーは各部屋でそれぞれのことをしている。室内は2人だけである。


 部屋に冷房を入れているので彼女は寒いかもしれない。館山さんの座る場所は、ちょうどエアコンの風が当たる位置だ。

 僕は毛布を持って、彼女の肩にかけようとする。

 近寄ったところ、彼女は眼を覚ました。


「あ、すみません。起こしちゃいましたか?」

「いえ、大丈夫。眠っている場合じゃないし」

「眠れるときは眠った方がいいんじゃないですか? まだ先は長いですし……」

「ダメだよ。メイク崩れちゃうし……」

「……そうですか」

 これには僕は何も言えない。

 女性は大変そうだ。




「ハプニング続きだね……どうするんだろう。大丈夫なのかな」

 館山さんが不安そうに話しかけてきた。

 僕は本を読み確認しながら返事した。

「そうですね。更先輩も、大変なことになっちゃいましたから……」

「窓の件からだね。……あのハプニングから歯車が狂いだした……」

「でも、仕方ないですよ。事情が事情ですし……」

「……」

「……」

 会話が途切れる。



 僕は途中までの本を読み終わり、学習机の上に置いた。


「ねえ」

「なんですか館山さん」

「剣くんにも、まだ犯人はわからないんだよね?」

「え。はい、そうですね。知りません」



「……あのさ、剣くんが犯人ということはないかな?」



「え」

 声が出た。

 僕は気づく。

その可能性に。


「……どうかな?」

 館山さんが、急かすように訊ねる。

「嘘がわかる剣くんが『犯人』を見つけられていないなら、剣くん自身が犯人しかありえないんじゃないかな?」


「…………」

 僕は考える。


 館山さんがさらに言葉を重ねる。

「自覚のない殺人。――二重人格や夢遊病。記憶が残っていないならば可能性があるんじゃないかな?」


「……ありえないと思います。僕自身は、違うと思います」

 僕は考えを述べる。

「現場の『3-3』は密室でした。僕にはそこに侵入・突破・脱出する術がないです」

「そうだよね。密室の謎が解けなければ誰も犯行は不可能だ。犯人よりも、まずは密室の謎を解く方が先か……」


 彼女は考え込むように腕組みした。


「じゃあ、逆に、僕も疑われたので、――館山さんが犯人ということはないんですか?」

 聞きづらいことを聞いてみた。

 可能性はある。僕自身に犯人の可能性があるならば――館山さんが犯人の可能性もある。


「私は犯人じゃないよ」

 彼女は即時、否定を返した。

「だって完全なアリバイがあるよ。常に誰かといっしょにいたし、川合さんを殺しに行く時間と手段がないよ」


「まあ、そうですよね……」


 館山さんがまた話してくる。

「ちなみに剣くんは、犯人かも、怪しいと思っている人はいるの?」

「……一応、2人ほど」

「結構いるね。ちなみに誰?」


「まず1人目は真弓先輩――矢部さんです」


「それはなんで?」

「矢部さんが、嘘をついていたから、というのが大きな理由ですけど……」

「でも彼女もアリバイがほぼ完璧だよね?」

「はい。常に矢部さんは誰かといっしょにいました。――犯行ができたとしたら、部屋に帰ってきた川合さんをその場で、ということになるんですが……」

「密室の謎が解けない」

「はい。その通りです」



「2人目はだれなの?」

「倉木さんです」

「へー、倉木さん、か。剣くんは『倉木さん』って呼んでるんだね?」

「え、まあ、はい」

 たしかに僕自身も、ちょっとおかしい気もする。

「なんで倉木さんなの?」

「え、それは、年上ですし、『さん付け』が適切かと思って」

「そっちじゃない。犯人かもしれないと思った理由」

「あ、そっちですか。――それは、2階の非常ドアの施錠が壊れていた件ですが、あのドアが使用可能ならば、倉木さんは唯一、誰にも気づかれず自由に外へ出入りすることができるからです」

「なるほど」

「外に出られるというアドバンテージがあれば、密室を形成・突破できる手段があるかもしれない、と思いまして」

「でも、あの非常ドアは――」

「はい。非常ドアは突発的に使えるようになったもの。僕は確かに『2-3』に移動しましたが、それはアクシデントによるもの。計画されたものではない」

「でも、たしかに、外に出られるというアドバンテージは大きいかもね……。台風・土砂崩れで身動きが取れない『クローズドサークル』だけど、けれど『土砂崩れの前』に何かしていた、という可能性もあるよね」

「ええ。土砂崩れがいつ発生して『完全なクローズドサークル』になったのは『いつ』なのか、ポイントになるかもしれません。それ以前に、車でなにか細工をしに行ったとも考えられますし……それがなにか、というのは思いつきませんけど」

「でも、剣くん。倉木さんは――」


 そこで、

 ピピロロリリンン。

 重なった音が響いた。

「あ、スマホだね」

 館山さんは端末を確認した。


「萬井代表から。食堂に集合だって」


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