『雨の接近』18:17
スマホには不在着信の表示がされていた。
表示には『町野大学 バスケットボール部』の文字があった。
自室のベッドで大の字に寝転び休憩している場合ではない。
「……やべっ」
萬井和人はそんな声を漏らした。
部屋を後にして階段を下りる。その途中。
「よう。女子御一行」
「ああ、萬井部長」
「部長、お疲れ様ですぅ。奇遇ですねぇ」
「……お疲れ様です」ペコリ。
川合、矢部、館山――4F女子集団と出会った。
「おう」と返事を返す萬井。「みんなそろってどこいくんだ?」
「ふつうそれ聞く?」
川合が鋭い眼を向けていた。
他の2人はモジモジするような、言いづらいような、そんな雰囲気。
「ん?」
萬井は女子集団の持ち物を見る。みなそれぞれが中身の見えない袋を携えていた。
「ああ、風呂だな」
「ええ。まあ、ね。察し悪すぎ」
「そりゃすまんな」
「シャワーだけどね。体育館付属の。そうだ。――さっき夕食、作り終わったわ」
「そうか。重ねてすまんな。ありがとな」
「いいえ。マネの仕事だし。――そうだ。あたしたちがシャワー終わったら、もう体育館、鍵閉めちゃってもいいかしら? 男子はみんな入ったかしら? もう今日は利用しない?」
「んー。いいんじゃねえか? 閉めるとグループメッセージ飛ばしとけばいいだろう」
「ああ、そうか。じゃあ、そうさせてもらうわ」
「萬井部長は、どこか行くんですかぁ?」
「ああ、ちょっと電話をかけに、な。――そうだ。この辺、ちょっと電波悪いみたいでさ。どこか、通じるところとか知らないか?」
「ああ、電話会社によっては通じなくなるみたいね……。たぶんここに登って来るまえの、自動販売機があったところまで行けば確実に通じるんじゃないかしら?」
「だいぶ遠いな……って――おいおい」
窓の外では暗い空からついに雨が降り出していた。
なかなか大粒だ。
「車で行ったらいいんじゃない?」
「んー、背に腹か……1番は燃料代……だが1人でいくとなると路上駐車や通話運転のリスク……うーん」
降り出した雨に悩ましい萬井。
「晩飯の時間に戻れるか、わからないな……。先に食べるように伝えてくれ」




