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断罪された公爵令嬢は全裸で魔王城に追放されて無双する

作者: 華咲 美月

 最近は、なろう系にハマっていて徹夜して読んだりしているので、自分でも書いてみたくなりました。

 長編を書く余裕はないので、悪役令嬢が断罪追放される短編を書いてみました。

 かなりおバカでセクシー!? な悪役令嬢が無双するお話です。

 星暦895年4月に王立セントルシア魔法学園の卒業式がある。

 王立セントルシア学園は、魔法立国のサクスフィア王国にある全寮制の学校だ。

 13歳から18歳までの魔法の才能のある子どもたちが集められて、魔法を習得するための勉強をしていた。


 卒業式の後は卒業パーティーである。

 パーティーの主役はラルフ第一王子と、その婚約者である私、アルテッサ公爵令嬢であるはずだった。

 しかし、今年の卒業パーティーは異常である。

 ラルフ王子は傍らにコメリ男爵令嬢を侍らせて、婚約者である私を睨みつけている。


 ラルフ王子が口を開いた。

「アルテッサ、貴様との婚約を破棄する! 度重なるコメリ男爵令嬢へのいじめは、もう看過できん!」

 ラルフ王子にしがみついていた、コメリ男爵令嬢が泣きながら訴えた。

「アルテッサ様、酷いです! 私を階段から突き落としたり、毒を飲ませて殺そうとしたでしょう」

 私はため息を付いた。

「知らないわよ、そんなこと」

「証拠は上がっているんだ。お前を魔法で監視していたからな!」

 ラルフ王子は勝ち誇り、侮蔑の表情で言い放った。

「そんな淫らなドレスを着て俺の気を引くつもりだったのか? 売女のような女だな!」

 私の着ているドレスは、豊満な胸が上半分露出していて、背中も大きく開いている扇情的なものだった。

「これは貴方が、今日着てくるようにと私にプレゼントしたものでしょう?」

「知らんな……」

 ラルフ王子がうそぶくと取り巻きたちが、私を見てニヤニヤと馬鹿にするような笑みを浮かべた。

「コメリ、お前はどう思う?」

「アルテッサ様、公爵令嬢がそんな淫らなドレスを着るのは、お家の品位を下げますわ」

 コメリ男爵令嬢が私を蔑むような目で見た。


 私はこのとき自分が罠にはまった事を悟った。

 この卒業パーティーで私を陥れて婚約破棄するように手筈を整えていたのだ。

(逃げないとまずい……)

 私は意識を集中して両手に魔力を集めた。それを広げて魔法陣を描く。

「短距離転移……」


「逃げるな、アルテッサ! 逃走すればお前の父親を罰する!」

 ラルフ王子が冷酷に宣言した。

 私は仕方なく起動仕掛けた魔法を解除した。

「卑怯よ、お父様を巻き込まないで」

「お前の魔力は膨大だ。抵抗されたら面倒だからな。家族を人質に取らせてもらう」

「ラルフ様、早く計画通りにいたしましょう」

 コメリ男爵令嬢がラルフ王子を促した。

「そうだな。アルテッサよ、お前は膨大な魔力を持っている魔法の使い手だ。辺境の魔森などに追放しても生き延びてしまう恐れがある。だから絶対に生き残れないところに追放してやる」


「やれ!」

 ラルフ王子が合図すると、王子の取り巻きのロウム伯爵令息が、私を取り押さえた。

 そして、短刀を取り出すと私のドレスを切り裂き始めた。

「な、何をするの!」

「公爵令嬢がそんな娼婦の様なドレスを着ていたら、サクスフィア王国の恥になる。追放する前に剥ぎ取って裸に剥くのさ」

 ロウム伯爵令息がニヤニヤと下卑た笑いを浮かべた。

「いや!」

 私はボロ布になったドレスを剥ぎ取られて下着姿になり、恥ずかしくてしゃがみ込んだ。


「下着も剥ぎ取れ、手加減するな!」

「悪く思うなよ、王子の命令だ……」

 ロウム伯爵令息は私を無理やり立たせると、下着も切り取って奪い去った。

 私は全裸になって手を拘束され、無理やり立たされていた。

 目がくらむほどの屈辱だった。


 ラルフ王子は加虐的な笑みを浮かべると、ワインボトルを手にとって近寄って来た。

 私の頭の上からワインをドバドバと振りかける。

「生意気だった公爵令嬢のお前が、こんな無様な姿を晒すとはな。こりゃぁいいや!」

 ラルフ王子が笑いだすとコメリ男爵令嬢や他の取り巻きたちもゲラゲラと笑い始めた。


「お前を魔王城に転送してやる」

 ラルフ王子は冷酷な表情で言い放った。

 私はギョッとなった。いくら私が膨大な魔力を持っていて、魔法の使い手でも、魔王城なんかに転送されれば生きていられるはずがない。

「や、やめて……」

 私は泣きそうな表情で哀願した。

「ふん、もう遅い。お前がもう少し早くそういう表情をして、俺に従順なら愛妾くらいにはしてやっても良かったがなぁ」


「魔力がたまりました。転送しますよ、王子」

 ラルフ王子の取り巻きで魔法大臣の息子のザギエル伯爵令息が、転送の魔道具を私に向けてきた。

 魔王城は暗黒闘気の魔力で結界が張られているので、特殊な魔道具を使わないと転送できないのだ。

 そういう国宝級の魔道具を持ち出したということは、私を本気で魔王城に転送するつもりなのだ。


 転送の魔道具が光り輝き、魔法陣が開いた。私の身体は魔法陣に飲み込まれて、その場から消えた。

 消えた身体は亜空間みたいなところをすごい勢いで飛翔していた。

 自分でコントロールは全く出来ない。

 前方に黒い繭のような大きなドームが見えてきた。

 あれが、魔王城を守る結界のようだった。


 頭から結界に突っ込んだ。

(痛――――い!)

 バキバキと結界がくだけて内部に飛び込んだ。

 その衝撃で、私は前世の記憶を思い出した。


 前世で私は、(こぶし) 四郎子(しろうこ)と言う名前で、一子相伝の暗殺拳である裸身活殺拳の継承者だった。

 裸身活殺拳と言うのは、中国で3000年前に編み出された暗殺拳を源流に持つ武術である。

 森羅万象の気を体内に取り込んで闘気に変え戦うという流派であり、肌の露出が多いほど気をよく吸収し戦闘力が上がるとされた。


 日本の元号がまだ昭和であるときに、師匠である父親と四郎子は、大分県と福岡県の境にある日本三大修験道の一つである、英彦山に山籠りして修行をしていた。

 父親も四郎子も修行のために全裸である。

「ワシを父と思うな、鬼と思え!」

 父親は鬼の面を被っていた。

「冬までにワシを倒して免許皆伝せよ。そうすれば服を渡して、人里に降りることを許可する!」

 夏が過ぎ、秋が来て冬になるまで、四郎子は厳しい修行に明け暮れた。

 いくら温暖な九州でも真冬の山中では凍死してしまう。

 もう時間がなかった。

 四郎子は決死の覚悟で父親に最後の戦いを挑んだ。


 滝壺の上の死闘。

 凍える身体にむち打ち、夜通し技の応酬をした。

 そして最後に、ついに四郎子は裸身活殺拳究極奥義である夢精転生を会得した。

 究極奥義を受けて父親は河原の大きな岩の上に倒れた。

「ついに勝った!」

 四郎子は喜びに打ち震えたが、闘気を使いすぎていた身体は限界を超えていて、意識が暗転し真冬の滝壺の中に落下していった。

 それが四郎子の最期である。

 そして、剣と魔法の世界に転生して、公爵令嬢のアルテッサとなったのだ。


 魔王城の中に突入した私は、前世の記憶が馴染んでくるのを待った。

 記憶が混乱してどうしていいかわからなかったのだ。

「そう、私の前世は、裸身活殺拳の継承者だったのね。それなら、全裸のこの状況でも戦えるということなのかしら」

 試しに前世の記憶をもとに闘気を集めてみると、全身に力がみなぎってきた。

「全裸でいるほうが戦闘力が高くなるのね。これなら生き残れるかも……」


 今いる場所は、大きな広間のような部屋だった。天井は高い。

 ここに天井を突き破って着地したのだ。

 無意識のうちに裸身活殺拳の体術を使っていた。


「侵入者はここかぁ! ゴルァ!」

 野太い声がして通路の奥から私の身長の3倍はある巨体が現れた。

 魔物図鑑で見たオークだった。それも上位種であるらしく知性の宿った瞳と、筋骨隆々な身体をしている。

「俺様はオークジェネラルだ! ゴルァ!」

 オークジェネラルはいきなり襲いかかってきた。


 右手に持った棍棒を振り下ろしてくる。

 つぎの瞬間――私の姿が残像を残してかき消えた。

 一瞬で、後ろに回り込み蹴りを放つ。

 後頭部を蹴られたオークジェネラルが壁際まで吹っ飛んだ。

 前世の記憶を取り戻した私の体術は、魔王軍の大物を軽くあしらえるほどだった。

 ただ、全裸でいることは恥ずかしかったが……。


 先へ進もうとすると後ろから声がかかった。

「まだ終わりじゃないぞ! ゴルァ!」

 オークジェネラルが立ち上がって、突進してきた。

 だが、図体がでかいだけの魔物など今の私の敵ではなかった。

「裸身活殺拳奥義、脳頭震刀拳!」

 私は右手を突き出し、オークジェネラルの鼻の穴に指を二本突っ込んだ。

 そして脳に直接闘気を叩き込む。

「貴方はもう逝っているわよ!」


「ヒデブヒーーーー!」

 オークジェネラルは奇怪な悲鳴を上げて倒れた。

 身体をビクンビクンと麻痺させている。

 股間が膨らんで白濁液を何度も吹き出していた。

「あら? 前世ぶりだから、突く秘孔を間違えたかしら……」

 センシティブな倒し方をしたので、私は足早にその場を立ち去って奥に進んだ。


 広い通路を先に進むと、少し開けた部屋の明るい場所に出た。

「どこかに服がないかしら。いつまでも裸は嫌だわ……」

「そう、服がほしいのね。その願い叶えてあげるわ」

 天井からバサリと黒い羽を羽ばたかせて、妖艶な美女が降りてきた。

 黒い革のようなマーメイドドレスとコウモリのような羽が生えている。

 一見すると魔物図鑑で見たサキュバスみたいに見えたが、放っている魔力が桁違いに膨大だった。

 私も人間にしては膨大な魔力を持っているが、眼の前の魔族は桁が違う。

 やっぱり魔王城にはすごい魔族がいるんだ。


「私は魔王の母親のサキュバスクイーンのプリメーラよ。プリちゃんと呼んでくれてもいいわ」

 私は愕然とした。どうしてこんなにフレンドリーなの?

「服がほしいのね。これはどう?」

 プリメーラが右手のワンドを振ると、魔力がほとばしって私の身体を包んだ。

 私の体にゴムの布が巻き付いてきた。

 すぐに身体に密着して黒いラバースーツとなる。

「生ゴムの感覚って独特でしょ。気に入ってもらえたかしら?」

 プリメーラはニッコリと笑った。

「気にいるわけ無いでしょーーー!」

 私はラバースーツを引き裂いて壁に叩きつけた。

「変な服着せないで!」


 私が荒い息をついていると、プリメーラは上機嫌で魔法を使った。

「それなら、この服はどう?」

 私はピンクのレオタードを着せられていた。

 しかし、このレオタードは胸と股間の隠すべき場所に穴が大きく開いていた。

「な、な……!」

 私は声もなく大事なところを手で隠した。

「あらぁ? 全裸でいたのに羞恥心はちゃんとあるのね?」


「こんなの裸でいるよりも恥ずかしいわ!」

 私はレオタードを破り捨てて床に叩きつけた。

 それから、プリメーラが魔法で私に着せてくる服は、どれも羞恥心を煽るようなセンシティブな服ばかりであった。

 私はゼェゼェと荒い息を付いた。羞恥心で顔を真赤にして手で胸と股間を隠している。

「もう止めてください……。どうしてこんな無駄なことをするんですか?」


 プリメーラはニヤリと笑った。

「無駄なこと? でも貴女、羞恥心に耐えて、精神力がかなり削られたでしょう? もう本来の力では戦えないわね」

 私はハッとなった。

 確かにオークジェネラルと戦ったときよりも、かなり精神力を削られて疲労困憊していた。

 裸で戦う裸身活殺拳とは相性の悪い相手であった。

 このままでは戦えなくなる……。


「ふふふ……。このまま恥ずかしい服の着せ替え人形にして、精神力を削りきって倒してあげるわ」

 プリメーラは悪魔のように妖艶に笑った。

 私は覚悟を決めた。

「貴女は今まで戦った中では、最大の強敵です。だから、最大の奥義で倒します!」


 私は残った精神力をかき集めて、闘気を練った。

 身体の8つのチャクラがフル回転して闘気を純化していく。

 その闘気をさらに経絡に沿って循環し、戦闘力として高めていく。

「裸身活殺拳究極奥義、夢精転生!」


 私の身体が8つに分裂して、プリメーラを取り囲んだ。

 火、水、風、土、雷、氷、光、闇……8つの属性の力が、純化してほとばしる。

 夢精転生とは全属性の精霊の力を借りて、対象に爆縮する奥義だった。

 魔王城全体を揺るがすような爆発が起こった。


 爆煙が晴れるとボロボロになったプリメーラが倒れていた。

 かすかに息をしているから死んではいないようだ。

 強敵をようやく倒したが、私も戦う力は残っていなかった。

 それでも先に進まないといけない。

 この先の部屋に魔王がいるはず……。


 先に進むと赤色の絨毯の敷かれた、王の間に出た。

 最奥の玉座に20歳くらいに見える青年が腰掛けている。

 私は疲れ切った重たい足取りでゆっくりと近づいていった。


 近くで見ると青年は黒い豪華な衣装を着ていて、顔は私好みのイケメンだった。

 こんなときに不謹慎だけど、ラルフ王子よりも遥かに格好良くて、私の心に直球ど真ん中だった。

 ボーっと見とれていると、青年が立ち上がって私のそばに来た。

 顔を見ると不思議と敵意はなかった。

 それどころか優しい雰囲気をまとっているように感じた。


「えっと……。貴方が魔王ですか?」

 私が尋ねると魔王は腕を広げて抱きしめてきた。

 私は混乱した。

 今、私って全裸で魔王に抱きしめられている!?

「古の約定どおりに君と結婚する」

 魔王は私の瞳を見つめてきた。その目は優しくて、魅了された。

「えっ? 結婚て……」

「魔王城に武器を持たずに現れて、魔王と抱き合う人間の女がいれば、妻にするという女神ミーテルとの約束だ」


「でも……」

「君は武器を持たないどころか全裸で現れて魔王の私と謁見したのだからな。妻にするしかないだろう」

「私の名は、魔王シーマ。君の名は?」

「……アルテッサです」

「私の妻になってくれるか?」

 魔王シーマは私好みのイケメンで、意外と優しそうな瞳をしているから……。


 私は肩肘張ってきたことがどうでも良くなってきて、コクリと頷いた。

 魔王シーマは私にそっと口づけた。

 私はなんとなく雰囲気に流されて、魔王シーマの背中に手を回していた。

 長い熱烈なキスになってしまった。

 多分、前世の記憶が蘇って、ふてぶてしくなっているのも影響していると思う。


 それから一年後に魔王シーマ様と私の結婚式が行われた。

 一年待ったのは、魔王シーマ様の国がラルフ王子の国と戦争を始めたからで……。


 大事なことだからちゃんとハッキリさせておくけど、もう全裸じゃないからね。

 魔王シーマ様とお揃いの色の黒いドレスで、かなりシースルーだけど、魔王の妻としては許容範囲のセクシーさを醸し出しているのよ。

 義母のプリメーラ様も私なら魔王国の王妃として、舐められずにやっていけるだろうと結婚に賛成してくれたの。


 そして結婚式場となった暗黒神の聖堂に、ラルフ王子とコメリ男爵令嬢の石像が運ばれてきた。

「殺してはいないが、魔戦将軍メデューサの魔力で石化しておいた。これで、アルテッサの気が晴れただろう」

「は、はい……」

 私は旦那様の怖さを知って、夫婦喧嘩はなるべくしないでおこうと決意した。

 いざとなったら全裸になって戦うけどね。


<終わり>


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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