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プロローグ
「被告、クラリッサ・フォルティを極刑に処す」
王国を騒がせた稀代の悪女クラリッサの死刑判決の発表に、裁判所前の広場に集った人々までもが歓声を上げた。
「悪女め、いい気味だ!」
「当然の判決だ!」
クラリッサの罪を知らぬものは、国内にはいないだろう。
ゴシップばかりを扱う新聞社が、裁判が始まる前から盛大に号外を出していた。
何の罪も無い令嬢を傷つけたのだ。
幸いにも死には至らなかったものの、被害者の心と身体には一生傷跡が残るだろう。
そう訴えられていた。
理由は嫉妬。
一方的に一人の男性に熱を上げ、彼の婚約者である女性を恨み羨んで犯行に及んだという。
悪女の片恋の相手は、エドモンド・ラゴーナ。
29歳の王立魔道具研究所のエース。
スラリとした長身と平民にしておくには勿体ないと言われる美貌の男。
なるほど、この男なら女に勘違いさせることもあろうと、裁判所で彼を目にした傍聴人たちは納得した。
判決後、ほどなくして刑が執行される。
稀代の悪女とされたクラリッサ・フォルティ。
十七年の短い生涯であった。