第44話:準決勝
「ええええ!? アレンのお兄様だったのですか……!?」
「え、でも同じ一年生よね……?」
「ユリウスが四月生まれで、俺が三月生まれだからな。ギリギリ同じ学年になるってことだ。まあ、ユリウスにも良い印象は全くないし、もう他人だからどうでもいいんだが」
ユリウスは、事あるごとに悪口ばかり言ってきたからな。
父レイモンドも大概だが、ユリウスとも相容れない。
「なるほどです……なんだか複雑なのにすみません」
「そうね。嫌なこと思い出させてしまってごめんなさい……」
「二人が気にすることはないよ。俺も気にしなければ今のところ害はない存在だからな。まあ、そんなことより他のパーティの試合を見てた方が有意義だと思うぞ」
俺たちはシード枠だが、先にE、G、H、Iクラスの試合が行われる。
EクラスとGクラスのどちらか勝利した方と試合をすることになるので、実際に見て情報を集めておくに越したことはないのだ。
嫌な思い出を振り返るよりも、こっちの方がずっといい。
◇
EクラスとGクラスの試合は、Eクラスの勝利で終わった。
分析結果としては特筆するようなポイントはないので、よほどのことがなければ負けることはないだろう。
その辺りの情報から準決勝のプランを立てる。
「一旦、今回は攻撃系の無詠唱魔法を封じておこう」
「手加減するということですか?」
「ある意味そうなるな。Aクラスにまだ真の実力をバラしたくない。対策を立てる間もなく圧倒して勝たないと、目立てないだろ?」
これは、オーガスとシルファとの間でした約束——俺が庶民の顔として目立つこと——を果たす絶好のチャンスなのだ。
これまでも頑張ってきたが、今日は普段見ないような人まで見に来る。どうせ勝つのなら、決勝戦で目立った方が効果的だろう。
ついでにユリウスと、ユリウスを見にきたレイモンドの鼻を折ることもできるかもしれないしな。
俺としてはもはやどうでもいい存在だし気にしていないのだが、さっきのように変な絡み方をされるのは困る。
ここで力の差を見せつけておけば変な絡み方をしてくることはなくなるだろう。
「確かに、どうせなら決勝戦で見せた方が効果的だと思います」
「でも攻撃系の無詠唱ってことは、補助系のものなら使ってもいいってこと?」
アリエルの言う『補助系の無詠唱魔法』とは、地下ダンジョンのミッションで使ったような魔力を使った索敵のことだろう。あれを使えば目視するよりも正確に相手の動きを読むことができる。
人も当然魔力を持つため、これは魔物だけでなく対人でも同様に使えるのだ。
「ああ。実力を隠していると思われないように、ある程度は使っておくべきだと思う」
「なるほどね」
「了解です!」
作戦会議はこんなところで終え、俺たちは試合の舞台へ移動した。
◇
ピー!
試合開始の笛が鳴ると同時に、Eクラスの代表パーティが動き出した。
なるほど、Sクラスの面々相手だと一対一では勝てないと考え、まとめて一人を攻撃をしてこようという作戦か。
ちなみに、クラス対抗戦のルールは一般的な決闘のスタイルと同じく全員の戦闘不能、あるいは一方の降参により勝敗が決するまで続くと言うものだ。
「「「神より賜りし我が魔力、魔法となって顕現せよ。出でよ『火球』——!!」」」
詠唱を終えると、やや遅れて三つの火の球が飛んでくる。
俺は軌道をサッと読み、軽い身のこなしで三方向から来る火球を華麗に躱した。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
Eクラスの攻撃が地面に着弾するとほぼ同時に、ルリアとアリエルの詠唱魔法による火球が繰り出される——
ドオオオンン!! ドオオオンン!!
この学院に入学できた時点で、ルリアとアリエルの二人は詠唱魔法もトップクラスの実力者。
さらに魔力を使った探知技術で相手の動きを完全に読み切り、一度の攻撃で命中させたのだった。
これで、二人戦闘不能。
「す、すげえええ……!」
「さすがはSクラスだ!」
「やはりSクラスの試合は見応えがあるな!」
観客からの歓声が聞こえてくる。
どうやら、俺の作戦通り詠唱魔法を使ってもそれなりには目立てたようだ。
残る一人をどう処理するか作戦を練っていたところ——
「ま、負けました!」
さすがに三対一、それもSクラスの面々が相手では分が悪いと思ったのだろう。
Eクラスの最後に残った一人は降参したのだった。
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