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第43話:クラス対抗戦

 ◇


 学院の地下ダンジョンミッションをクリアしてから三日後の土曜日——

 アステリア魔法学院の第二校庭では、クラス対抗戦が開催された。

 クラス対抗戦は各学年ごとに行われ、SクラスからIクラスがトーナメント形式で戦う。


 優勝するには最大三回勝たなければならないが、去年の該当クラスの成績によるシードが枠が設けられている。S、A、B、C、D、Fの六クラスは二回戦からの出場。


 つまり、二回勝てば良いということになる。


「それにしてもすごい人ですね……」


「ええ、あんまり人が多いところだと酔っちゃいそうだわ」


 今日は参観日にもなっており、学院生以外の顔ぶれもバラエティに富んでいた。


 各学院生の父兄が主だが、アステリア魔法学院への入学を目指すものや、将来有望な学院生を見つけるため高ランクの冒険者パーティまでもが例年来るそうだ。


「二人は親とか来るのか?」


「私のところはどうでしょう……まだ入学して早々なので、来ないと思います」


「私もそうね。この期間じゃ見ても仕方ないって思われてそう」


 まあ、そりゃそうだよな。

 俺たちが入学してからまだ二週間ちょっと。

 よほど過保護な親か、どんな施設を使っているのか見たいという場合以外には来ないだろう。


 ここは現代日本ではないから、地方から移動するだけでも莫大な金と時間がかかる。

 金に関しては貴族ならそれほど気になるものではない場合もあるだろうが、移動時間だけはどうしようもない。


「アレンのご両親は……あっ、いえすみません」


 ルリアが俺に聞こうとして、押し黙った。

 話す途中で俺が実家から追い出されていたことを思い出したのだろう。


「いや、ルリアが気にする必要はないよ。まあ、答えとしては——来ないだろうな」


 普通に考えれば来ないし、来たとしても気まずくなるだけのことだ。


 父レイモンドのことは放っておくにしても……そういえば、兄ユリウスはどうしているんだろうな。


 俺と一緒にどこかの魔法学院を目指すと言っていた気がする。

 実際、性格は悪いが父レイモンドが適切だと思う修行をさせただけあって、ユリウスはそれなりの実力を持っている。


 実はアステリア魔法学院に入学している——などとは思いたくないが、どこかの魔法学院に入学している可能性は十分に考えられた。


 ……いや、思い出すのはやめよう。嫌な気分になるだけだ。


 そんなことを考えながら歩くこと数分。会場である第二校庭に着いた。


「Sクラスのアルスパーティだ」


「Sクラスですね……はい、エントリー完了です」


「ありがとう」


 代表パーティとして出場の受付を済ませた直後のことだった。


「ったく、融通が効かねえよなあ。なんでわざわざ受付なんかやるんだよめんどくせえ。はあ、さっさとやれよ」


 悪態をつきながら手続きをするパーティがあった。

 同じ一年生だからなのか、どこかで聞いたことがあるような声に感じる。


 ふと顔を見ると、向こうもこちらを見てきたようで、目が合ってしまった。


「……」


「……」


 ユリウス・アルステイン……思い出したくない相手だった。


「アレンだと……? お、お前この学院に入学してやがったのか!? こ、こんなところに何しに来やがった! ここは今日のクラス対抗戦に出る人間しか立ち入れない場所なんだぞ!」


 ユリウスは、俺を見るなりかなり驚いた様子だった。

 俺がここにいるのが意外だったのか、いつもの調子に戻るまで数秒かかってしまった。


「俺がこの学院に入学して何か悪いか? それに、俺もクラス対抗戦に出るんだが……」


「お、お前が出るだと……けっ! まあどうせIクラスとかその辺の雑魚なんだろ! 俺はAクラスのエリートなんだぜ! あ〜、俺がこの手で直接ぶちのめしたかったが一回戦敗北じゃ話にならねーなー」


「いや、Sクラスだが?」


 不思議とこの学院に入学してからは過大評価されることの方が多かったように思うのだが、ユリウスに限っては俺を過小評価しているようだった。


「は? Sクラスだと……? お前が……? 嘘ついたってバレるんだからな!」


 嘘なんてついてないし、俺に嘘をつく必要などないのだが……。


「この制服を見ればわかるだろう? 学院長が入学式で劣等が何だとか言っていたはずだが?」


「ああ〜! あれか! 劣等烙印! そうだ、お前勘当されたんだったな! ったく、一時期とはいえ烙印野郎と同類に見られてたのが恥ずかしいぜ……。何かよくわからねえが、所詮は庶民枠で運良く受かっただけで調子に乗るんじゃねえぞ!」


 急に調子付いてしまったユリウス。

 う〜ん、どうしたものか。ユリウスの対応に困っていたところ、ルリアとアリエルが前に出てきた。


「あまり調子に乗っていると痛い目に遭いますよ?」


「ええ、口の利き方に気をつけたほうがいいと思うわ」


 二人とも口角だけ無理やりに上げているが、目が笑っていない。

 物凄い威圧感を覚える表情だった。


 というか、睨んでいるようにしか見えない。


「……ま、まあ本当にSクラスなのは確かだということはわかった。で、でも庶民枠とはいえお前が受かったのは何か不正をしたからに決まっている! 俺が父上の前で懲らしめてやるぜ!」


 父上……?

 まさか、レイモンドがこの学院に来ているというのか……?


 はぁ。

 せっかくのイベントだというのに、一気にテンションが下がってしまうな。


「お前と対戦することになるとしたら……」


 そう言いながら、ユリウスはトーナメント表を見た。


「決勝か……けっ、それまでに負けてなきゃいいがな!」


 そんなことを言いながら、ユリウスは逃げるように俺たちの前から去った。


「あれ、何かお話ししたら大人しくなりましたね?」


「まあ、あれなら仕方ないな」


 少なくともルリアは睨んでいたという認識はないらしい。


「というか、あれ誰なの? 変なのがアレンに突っかかってたから声かけちゃったけど」


「あれは俺の兄……ユリウスだ。俺がこの学院にいるのが気に入らないらしい」

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