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プレゼント

帰り道を歩きながら、こう考えた。

駅前のオブジェは光るシカではなく、トナカイのイルミネーションではないか、と。

そういえばもう12月も10日。そりゃイルミネーションだろうな。

とかく仕事は忙しい。

今日も時刻は23時半過ぎ。午前様リーチ。

こんなんじゃ、丸い頭も四角くなる。


イルミネーション…独身時代、明日香と見に行ったな。

明日香は冬になるとよくロングブーツを履いていた。

ほっそりした脚によく似合っていたな。

今ではすっかり丸くなって…いやいや、おばさんぽく…あー失礼、えっと、たくましく母親らしくなった明日香。


ここ数年の僕がカレンダーの中で重視しているのはプロジェクトのフェーズの締めであり「今が何月だからこのイベントがある」なんてことは、パリピさん達に任せっぱなしだ。

でもちょっと、クリスマスだけは特別。


クリスマスは僕が年に1回サンタになる日。

忙しくてもこれだけはパパの務めだと思っている。

プレゼントを考えなくちゃな。我が家の王子様は何をご所望だろう。

ゲームボーイ? …って、あれもうたぶんないんだよな。おもしろかったのに。

仮面ライダーなんとかの変身セット? …それは誕生日にもうプレゼント済みだったっけ?

スマホ? …まだ早いか。

イマドキの5歳児のほしいものってなんだろう。

うーん、想像がつかないや。


ーーー


家に帰ると、珍しくまだ起きていた明日香が僕にミッキーマウスの絵がついた封筒をくれた。

「啓太からサンタさんへのお手紙を預かったの。保育園で作ったんだって。はいっ! パパサンタさん、よろしくね!」

おお、王子様が自らほしいものを教えてくれるなんて! ラッキー!

それより僕は啓太が手紙を作れるほど字が書けるようになっていたことに感動した。

さらになんと『サンタさんえ』と書かれた封筒は糊付けまでされている。

5歳でそんなことまでできるなんて、啓太は天才に違いない!


僕が家を出る頃にはまだ寝ていて、僕が帰ってくると既に寝ている啓太。「イクメン」と呼ばれる人たちから300光年ぐらい離れた場所にいる僕は、息子の成長のひとつひとつがまぶしい。


ああ、それにしてもはじめてのお手紙がパパ宛てではなくサンタさん宛てなのか。

かすかなジェラシーを覚えつつ、それでもはじめてもらったラブレターを開封するようなドキドキ感で封筒を開けると、そこには ー


ーーー


「ご予約いただいた特大クリスマスケーキ、お待たせしました!」


大混雑のケーキ店。

今日は24日、クリスマスイブ。

僕は午後休を取った。啓太が生まれた日以来かもしれない。

今日は大荷物だ。特大ケーキに加えプラレール、絵本、サッカーボール。啓太が僕と一緒に遊んでくれるものを選んでみた。喜んでくれるかな。


啓太からサンタさんへのお手紙に書いてあったのは

「サンタさん パパか゛はやくかえてきますよに」


最高のクリスマスプレゼントをありがとう。

この先もし啓太が犯罪者になることがあっても(なってほしくないけど)、パパだけは啓太の味方でいるから!


どんなイルミネーションにも負けないほどキラキラした気持ちを胸に、僕は家路を急ぐ。


ーーーエピローグ


恐ろしい山の神、うそうそ、愛妻 明日香にも、もちろんクリスマスプレゼントを用意した。

会社の女子にリサーチして『女子なら喜ぶことうけあい!』というスマイルネックレス。


本当は指輪にしたかったけれど…丸くなった、いやいや、たくましくなった明日香の指のサイズが分からなかったからネックレスに決めたことは僕だけのヒミツだ。



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