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居場所

 玄関を開けると、かすかな煙草のにおいが秀を出迎えた。喫煙者ではないのに嗅ぎ慣れてしまった、僅かに甘さを孕んだそのにおいはいつも突然やってくる。秀は左手に握った白い袋の中身にちらりと思いを巡らせ、まあいいかと思い直してリビングに向かった。

「おい陽一、お前来るなら来ると連絡くらい――」

 若干の不機嫌さを装ってかけられた言葉が途中で失速して宙に消える。家主のいない間に勝手に上がり込んだであろう友人は、秀を待っている間手持無沙汰だったのだろう、灰皿に吸い殻の小山を作り上げ、ローテーブルに突っ伏して静かに寝息を立てていた。その姿に毒気を抜かれ、秀は大きくため息をつく。起こさないようにそっと荷物を置いて上着を脱ぐと、忍び足で近寄り顔をのぞき込んだ。目元に見える濃いクマが痛々しい。それでもまだ柔らかさを残している口元に少しだけ安堵して、深く息をついた。

 陽一は大学時代、同じ映画サークルに所属していた秀の友人だった。少人数ながら年に三本はショートムービーを撮り、大学祭では大きな教室を貸し切りにしてその上映まで行っていたそのサークルで、秀は主に脚本や演出、カメラマン等のスタッフとして、陽一は主に俳優として、映画製作に参加していた。同じ年次でも、学部が異なるためサークルに所属するまではあまり接点のなかったふたりだったが、打ち上げの後、秀が酔いつぶれた陽一を介抱して家まで送り届けようとした際に、陽一の部屋が斜向かいのアパート、徒歩30秒という目と鼻の先であることが判明してから、なんとなく行動をともにすることが多くなった。サークルで遅くなった時にはそのまま飲み屋に入ったり、お互い好きな映画や気になっている映画をレンタルしてきて、少し広い秀の部屋で鑑賞会をすることもあった。サークル内に同い年はふたりだけで、年次が上がり、映画製作をふたりがメインで担うようになると、秀の部屋は内内の話し合いの場にもなり、なんだかんだで週の半分は日付が変わってもふたりで秀の部屋にいるような状況に、とうとう徒歩30秒の移動を惜しんで泊まり込むようになった。そうなると今度は授業時間の合わない朝の時間が面倒になる。秀が最初に合鍵を渡してきたのは、そんな状況の中だった。家事は余裕があるほうが担当するという暗黙の了解のもと渡されたそれは、ふたりが卒業するまでほぼ毎日のように使われるようになった。

 お互い、就職先が離れたことで間が空くかと思っていた関係は、陽一が覚悟していたよりも密に続いた。卒業間際、惜しみながら合鍵を返しにいった陽一に、秀は少し驚いた顔をしていたが、思い直したように笑顔で鍵を受け取ると、新しい住所を聞いてきた。秀の引っ越し先とは電車で40分ほど離れたアパート。引っ越して一週間で、そのポストに見慣れない鍵が届いた。陽一は忙しい仕事の合間を縫って、レンタルした映画のDVDを携えて秀の部屋に足繁く通った。その目元にくっきりと残っているであろう疲労の跡には、お互い気づかないふりをして夜更かしをした。学生時代に比べれば頻度が減ってきているが、月に一度はやってくるこの男は、会社を出会た後家に着くまでスマホを全くと言っていいほど見ないという秀の悪癖をこの三年の間にすっかり覚え、連絡もなしに家に上がり込むようにまでなった。

 家主の帰宅にも気づかずにぐっすり眠っている様子の彼を起こすのも可哀そうだと思い、それならばと寝ているうちに家事を片付けてしまうことに決めると、秀は狭いキッチンに向かう。その途中で、放置してしまっていた袋の存在を思い出し、再び忍び足でテーブルの側まで戻るはめになった。袋の中身はコンビニのケーキだ。クリスマスイヴの空気につられて、遅くまで仕事をしたご褒美にと夕食代わりにひとつだけ買ってきたショートケーキは、ふたりで食べるには少し寂しい。どうしたものかと思いながら冷蔵庫を開けると、広く空いていたはずのスペースに見覚えのない白い箱が鎮座していた。のぞき込むと、最寄り駅近くのケーキ屋のロゴのシールが見える。迷った末、その箱の上にコンビニの袋を置くと、少し浮上した気分のままキッチンに向き直った。しかし、朝家を出るときにはシンクに積みあがっていた食器たちは水切りカゴの中にきちんと並んでおり、コンロの上には何やら中身の入っていそうな鍋まで置いてある。蓋越しにのぞき込むと、どうやら中身はスープのようだった。片手鍋になみなみ作られたスープは、2人で飲んでも余りそうだ。腕時計を確認すると、時刻は22時をとっくに回っている。とはいえ、夕飯を食べ損ね、ケーキが夕食代わりのつもりだった秀にとっては、ありがたい食料だ。冷え切ったスープを火にかけると、今度は忍び足はやめて寝ている陽一のもとに戻った。のんきに寝息を立てている陽一の隣に腰を下ろすと、再び顔をのぞき込む。それでも全く起きる気配を見せない友人に、ふといたずら心が沸いてその髪に触れた。学生時代は金欠も相まって伸び放題だった髪は、今はいつも短くきれいに切りそろえられている。引っ張ってみようかと思ったが、柔らかい髪は指の間をするりとすり抜けてしまった。それでも眉一つ動かさない様子に落胆とも安堵ともつかない感情を持て余し、深く息を吐いた。起きる気配がないことを確かめて、少しだけと言い訳をしながら頬に触れる。起きていたなら怪訝そうな眼差しが返ってきたのだろう。目元のクマをそっとなぞると、いい加減に起こそうと手を伸ばす。口元から微かに漏れる温かい息が指にかかり、思わず一度引っ込めた手をぐっと握りんで、思い切って肩を揺さぶった。

「おい陽一、起きろ。お前、ひとんちで勝手に寝てんなよ。起きろって」

 何度か揺さぶると、ようやく陽一がうっすらと目を開けた。秀と一瞬目を合わせたかと思うと、再び瞼が下がる。

「陽一!」

 慌てて強く揺さぶると、再度ゆっくりと瞼が持ち上がる。秀がその目が開き切るのを見届ける前に、陽一ははっと我に返ったように勢いよく体を起こした。隣から半分かぶさるような態勢だった秀は胸のあたりに衝撃を食らって尻餅をつく。呻きながら体を起こすと、ダメージはお互い様だったのか、陽一も後頭部を抑えて再度テーブルに突っ伏し唸っていた。

「……目、覚めたか?」

「……おかげさまで……」 

 眉を寄せて顔を上げた陽一は、秀が苦笑を浮かべているのを目にすると頬を緩めた。

「おかえり、秀。……もうこんな時間か。遅かったんだな。飯は?」

「仕事終わらんかった。飯食い損ねたー!」

 わざと拗ねたような声を出すと、陽一は座ったまま体を伸ばしながら、

「それなら、コ――」

「だから、お前が作ってくれたスープ今あっためてる。お前も食うだろ?そしたら、ふたりでケーキも食べよう」

 かぶせるように言うと、陽一は口元をへの字に引き結んだ。

「お前……」

「洗い物もありがとな。ここのところ忙しくて、全然手が回ってなかったから助かった」

「別に。その代わり、俺もプリンターとアイロン借りたし」

 そうかとちらりと目をやれば、テーブルの足元には小ぶりなボストンバッグが置かれている。その横に無造作に放られた合鍵についている見慣れないキーホルダーに、秀はふと目を止めた。この間来た時には、学生時代に合鍵と一緒に秀が贈ったキーホルダーがついていたのを覚えている。

「キーホルダー、新しくした?」

「ん?ああ、そう」

「ふうん。その新しいのは、誰かにもらったのか?」

 なんとなく、陽一のイメージに合わない気がする木のキーホルダー。絶対俺があげたあの黒のレザーのが似合うのに、と面白くない気分でずりずりと隣ににじり寄る。

「いや、適当に百均で買ってきたやつ。お前がくれたやつ、この間とうとう金具部分が取れちゃってさ。かわりを探して色々見て回ったんだけど、どうもしっくりこないから」

「ふうん」

 簡単にほどけるもやもやに、安堵半分、呆れ半分のため息をつく。そうと認めたくはないのに、この男の側にいるといつも自分の狭量さを思い知らされるようだ。

「なんだよ。そんな気にしなくても、お前からもらったやつはちゃんと家にとってあるって。あれ、俺も気に入ってたし。五年もお前んちの鍵いっこだけつけておくのはもったいないくらいだったなあ」

「もったいなくない。陽一、鍵とかパスケースとかいつも鞄の中で迷子にさせてるんだから、こんなちっちゃい木のキーホルダーひとつじゃ心許ないくらいだよ。あと、あんまり似合ってない。大体、お前は自分の持ち物に無頓着すぎるんだよ。ちゃんとした格好をすれば様になるのに――」

「はいはい。手厳しいなお前」

 遠慮のない物言いに、陽一は苦笑を浮かべる。それから思い切り背筋を伸ばし、そのまま後ろに倒れこんだ。触れそうになった腕をさりげなさを装って避けると、秀はそのまま立ち上がってキッチンに向かった。

「スープの様子見てくる」


 秀がスープだと思った鍋の中身は、鍋だった。予想通りふつふつと煮立ち始めていた鍋にコンロの火を止め、さてよそおうかとおたまを突っ込んだところでごろごろ野菜と肉が出てきた。うっすらと表面のつゆ越しに具材があるのは見て取れたが、開けてみれば鍋の中身はほとんどが具材だった。

「お前、これわざわざ材料買ってきたのか?」

「ああ、うん。外寒いから、あったかいの食べたいだろうなと思って」

 そういう陽一の言葉は、自分が一緒に食べる前提だ。

「そういうときは事前に連絡しろよ。外で食ってきてたかもしれないだろ」

「そういうことは仕事終わりにスマホを確認する癖をつけてから言え。それに、それならそれで俺が食べるし。お前、どうせ酒かつまみかで付き合ってくれるだろ」

 事実なので、秀には言い返す言葉もない。外で食べてこなくてよかったと、数十分前の自分に感謝した。

 鍋は八割がたが仕事の疲れを食欲に変換したとおぼしき秀の腹に消え、テーブルの上も綺麗に片付いたところで秀がケーキの箱と袋を運んできた。

「あれ、秀その袋は?」

「ああこれ、俺も帰りにケーキ買ってきててさ。せっかくだからふたりで半分こしようかと。普通のショートケーキだけど、半分くらいならお前も食べられるだろ?」

「甘いケーキに甘いケーキか。この時間に食ったら胃もたれしそう」

 陽一の言葉に、秀は首を傾げる。

「え?甘いケーキ買ってきたのか?てっきり甘さ控えめの、お前が好きそうなやつ買ってきたのかと」

 意外そうな秀の言葉に、陽一は気まずげに目を逸らす。何も言わないのを少し奇妙に思いながら、秀は箱を開けた。その中に納まっていた可愛らしいケーキに、思わず吹き出す。

「うわ、何これ。かわいい。これ、ほんとに陽一が買ってきたの?」

 ふたつ並んだ小さな丸いケーキは、たっぷり生クリームのひげに真っ赤なイチゴの帽子をかぶった、つぶらな瞳のサンタクロース。子供が喜びそうなデザインと見るからに甘そうなケーキは、目の前の甘いものがあまり得意でない男とあまりに結びつかない。その自覚はあるのか、まだ秀と目を合わせないまま顔をしかめた陽一は、そのまま床に体を投げ出すと秀の視界から消えた。しかし食卓代わりにもなっているローテーブルは、陽一の体をすべて隠すには小さすぎる。秀が肩をつつくと、仏頂面でのそりと起き上がった。今度は秀もまじめな顔になって、陽一に心配そうな声を投げかけた。

「陽一、これ結構甘そうだけど、いいのか?」

「小さいから、たぶん大丈夫。……せっかくクリスマスなのに、このところ忙しくてクリスマスらしいこと何もできなかったから、ケーキくらいはと思って」

「今日はまだイヴだけどな」

「揚げ足とるな。……まあ、そう思って駅前のケーキ屋に寄ってみたんだけど、時間がよくなかったのかそれしかもうなくてさ」

「うん。ありがとな。もし苦しかったら俺が残り食べるよ」

「言うと思った。半分アテにしてるからな」


 ふたりともがなんとかサンタクロースをひとつずつ腹に収め、秀の買ってきたケーキが冷蔵庫に戻ったところで、秀は後片付けのために台所に立った。陽一はなんとなくテレビをつけると、カーペットにごろりと転がった。その拍子に目に入ったものに興味を惹かれ、めいっぱい手を伸ばしてそれを引き寄せる。興味深げにぱらぱらとめくっていると、少ない洗い物を終えた秀がすぐに合流する。

「何見てるの?今日は映画はなし?」

「いや、持ってきてはいる。……懐かしいな」

 すぐ近くまで近寄って、陽一の手の中にあるのが、自分たちが学生時代に撮った映画の保存用ディスクだと知ると、秀は慌ててそれを取り上げようとする。陽一は難なくその手をかわして、保存用ケースの中から一枚を手に取った。

「これ、三年の終わりにお前が脚本書いたやつ。久しぶりに見たいな」

 その一言で、今日の映画は懐かしい作品たちの上映会に決まった。


 慣れた手つきでプレーヤーにディスクを挿入すると、ビールを片手にすっかり鑑賞態勢を整えている秀の隣に腰を下ろす。偶然を装ってそっと肩を触れさせ、振り払われないことに安堵してもう少しだけ体重をかける。昔と変わらない距離に微かに頬を緩めると、頭の片隅にその距離を感じながら画面に目を移した。画面の中で笑っている、今よりも少し若い自分が色鮮やかに動き出す。そうだ、この時のカメラマンは秀だったのだと陽一は唐突に思い出した。

 当たり前のようになんとなく過ぎていく日々の色が、その時々で違うことに気づいたのはいつだっただろう。思い出そうとする努力は不要だ。最初に気づいたのは映画の中だった。一瞬だけいやに鮮やかに感じた景色は、秀がどうしてもとこだわった海の景色。わざわざ電車で2時間以上かけてその場所までたどり着いた頃には疲れ果てていた陽一だったが、満面の笑みを浮かべた秀の肩越しに見えるその青が、信じられないほどに鮮やかで、まるでそこに向かって真っ逆さまに落ちていくような気がした。それなのに、足の下の地面と秀に引っ張られている腕の感触も一気に鮮明になって、一瞬頭が真っ白になった。隣に立つ秀の自慢げな声で、自分がどんな表情をしていたかを思い知る。それから時折現れるようになった鮮やかさの側にはいつも秀がいて、これまで自分が感じてきた世界のぼやけ加減を肌で感じられるようになったのだ。どこまでも貫けるような、すべて包み込むような鮮やかな青。あの色を知ってから、今まで普通だと感じてきた世界は急速に頼りないものになり、この男の側でだけ、陽一は地に足をつけていられた。ひとりになると、なんだか足元がふわふわして、誰と話していても現実の世界ではないような、自分一人が薄い膜を一枚隔てた向こう側にいるような、そんな錯覚に陥る。けれど不思議なことに、秀の存在がそこにあるだけで、足元にしっかりと地面を感じて、今までよりも鮮やかに、確かな質量をもって世界に触れることができるのだ。秀が書く脚本の言葉ひとつひとつから、向けられるカメラのレンズから、秀が自分を通して見ている景色、見たい景色が、鮮やかに脳裏に浮かびあがる。現実世界で話す友人よりも、自分を映すカメラごしに笑っている秀のほうがよほど触れられそうなほど、見つめられているのがわかる。そして彼に触れられている、見られている部分から、自分の体が確かな質量と熱をもってこの世界に存在していることを思い出し、鮮やかな色をまといだすのだ。

 だからいつまででも、彼から離れられないでいる。必死につなぎとめようとしている。ともすればふわふわと浮いてどこかへ流されそうな自分の体を、この男がくれる重さで地面に縫い付ける。それ以外の現実とのつながり方は、もう知らなかった。

「あ、これ!」

 隣で秀が驚いたように声を上げる。いつの間にか思考の渦にはまっていた陽一は、慌てて画面に意識を戻した。画面には、青と白のイルミネーションの中をひとり歩く陽一が映っていた。

「そうだ、この近くだよな撮影したの!うわー懐かしい」

「お前、近くに引っ越してきておきながら忘れてたのかよ。駅からここに来るまで、綺麗だったのに勿体ない」

 童心に返ったようにはしゃぐ秀に、陽一は呆れ声を装って突っ込みを入れる。

「いや、会社からだとバスだから駅と逆方向なんだよ。あー見てくればよかった!せっかくのクリスマスだったのに!」

「まだイヴだけどな」

 笑って、さっきの台詞を返した陽一に、秀ははっと振り返る。

「そうだ、まだイヴだから明日までは残しとくよな!?見に行かないか!?」

「は?」

 秀はいいアイデアといわんばかりに大きく頷くと、惜しげもなく立ち上がるとコートとマフラーを身に着け始める。

「え、今から!?」

「だって、明後日は仕事だから、お前明日の昼過ぎには帰るだろ?そしたら、明日は見れないだろうから。いいだろ、まだ風呂だって入ってないし、俺もお前も服着てるし」

 そうは言っているが時間は0時近く、しかも秀にいたっては缶ビールを2本開けている。

「お前、酔ってるんだろ。そんな突拍子もないこと言ってないで――」

「いいから。早くして」

 秀の目は半ば据わっている。酔い半分、浮かれ半分といったところか、と推し量り、陽一はあきらめのため息をついた。寒い中外に出るのは正直気が進まなかったが、イルミネーションをふたりで見に行くというアイデア自体は悪くない。きっと、秀がいれば、先ほど見たよりもきらびやかにイルミネーションはクリスマスイヴの夜を彩ってくれるだろうと、そう思った。


 駅前から続く商店街のイルミネーションまで、秀の部屋から歩いて10分ほど。そこに至るまでも、あちこちの店や家に可愛らしい飾りが見える。24時間営業のスーパーマーケットでは、入口に子供ほどの大きさのサンタクロースとトナカイの電灯が置かれていた。中の温かい空気とともに、店内で流れているクリスマスソングが微かに漏れてくる。『懐かしい昔のように、あの輝かしい日々のように』そう歌い上げる男性ボーカルの曲が、じわりと冷たい耳に沁みる。『運命が許す限り、僕らは一緒にいられるだろう』……

「楽しいクリスマスを、か」

 少し痛いような気がする胸の奥を埋めるようにぽつりと呟く陽一に、秀は感心の声を上げた。

「へえ。この曲、日本語にするとそんな歌なんだ。そういえば、この曲の映画もレンタルしてきて見たよなあ」

 何気ない言葉に力が抜けて、陽一は白い息を長く吐き出した。

「……そうだな。あと、これくらい中学英語だからな……」

「え、そうか?俺全然――あ!もう見えてくるぞ」

 秀が指さす先に、青と白の光が見えてくる。きらきらした光が、夜闇に慣れた目に痛いほどに突き刺さる。その向こうに見える景色に、ふたりはそろって目を細めた。


「なあ、やっぱり明日、もう一回来よう」

「え?」

「ちゃんとしたキーホルダー、買うから。ちゃんとお前に似合うやつ」


私信:主催者様へ。作中で描写のある歌詞は実在の英語歌詞の一部を作者独自に和訳・意訳したものです。一応なろうのガイドラインは確認済みですが問題ありそうであれば変更しますのでお知らせください。


返信:作者さんへ。そのものズバリでなければ、たぶん大丈夫だと思います。このままいきましょう。(むー)

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