転生と復活
「……ここは?」
俺は気がつくとベッドの上にいた。
起き上がり、天井や壁を確認する。
全体的に豪華な造りをしており、豪商の家屋と言うよりかは王族・貴族たちの家屋と見ていいだろう。
(……俺は確かにあの日、死んだ筈だ。なのに、何故生きている?)
疑問は多い。
まず、死んだのに生きているという点。
次に何故ここまで豪華な家屋の中で眠っているか、という点。
また、頭の中に奇妙な記憶があるという点。
最後にここは何処なのか、という点だ。
「……え?」
俺はふとガラス張りの窓を見て驚愕する。
窓に写っていたのは短く切り揃えられた黒髪に右目が紅く、左目が黒い比較的整った顔立ち幼い少年だった。
俺はあの戦争時は極々平凡な、良くありふれた焦げ茶の髪に同じ色の両目をした成人男性だった筈だ。なのに、今の俺は昔の俺とは違う髪に違う目、更に幼くなった姿になっていて全てが違う存在であることが分かる。
(生まれ変わったのか、俺は。)
生まれ変わる。普通ならあり得ないことだが、そうとしか言えない。
それなら、この奇妙な記憶にも説明がつく。
この記憶は俺という人格が復活する前の記憶だ。それでなければ、座学をサボったり、少女を無意味に殴ったり、無茶な要求をしたりしていないだろう。
「あ、グレイ様!」
扉からメイド服を着た俺と同じくらいのショートボブの白髪の兎月族の少女が顔を出した。
記憶が正しければこの少女の名前はノエル・ディーパだった筈だ。
兎月族とは、確か俺が所属していた軍隊のある『ドーラン王国』のヘレン草原に住む遊牧民族だった筈だ。
ドーラン王国は200年の歴史がある王国だ。王が国のトップにたち、政治を行っている。俺が軍隊にいた頃の王はかなり腐った暴君だったため、無意味な戦争を続けていた訳だが。
「ノエル、どうかしたのか?」
「心配したのですよ!数日前から高熱を出して寝込んでしまって……!」
「……すまなかったな。」
「い、言え!グレイ様が謝られることでは……!」
それにしても、高熱か……。
おおよそ、俺という人格が復活したからかもしれないな。
「ついでに聞くがノエル、今は何年だ?」
「え、ええっと……テルミリア帝国との戦いが終結して十年ほどですから……。」
「もういい。下がってくれ。」
「あ、はい!」
俺の命令に従い、ノエルは部屋から出ていき、俺は目をつぶり、考える。
あの時から十年か……街は見えないが、恐らくそれなりに戦後の傷から回復したくらいだろう。帝国が攻めいった時に王都が壊滅的な状態になった聞くしな。
となれば俺の肉体年齢は恐らく五歳ほど。戦争が終わって、戦争を知らない世代とも言い換えてもいい。
「あ、グレイ様、今日こそは講座に出てくださいよ?」
「……わかってる。」
扉からひょっこりと顔を出したノエルに若干面倒くささを感じながら、頭の近くに置かれていた服に着替え、スリッパを履いて歩き始める。
それにしても、良い素材を使った服だな……。となると、俺が生まれた家庭はそれなりに身分の高い貴族かもな。