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転生前夜

『ありがとう』


それは彼女が死に間際に聞いた言葉だった


俺は感謝されることはしていない


ただ、助けたかっただけだ


けど、それでも彼女を助けれたのならそれでいい


だが


だからこそ、俺は憎む


俺は俺の才能を憎む


こんな人殺しの才能を憎む


こんな暴力の才能を憎む


こんな薄情な精神を憎む


あぁ、もし生まれ変われるのだとしたら


憎めるものを捨てれるのなら


誰かを守れる力を


誰かを守れる才能を


誰かを守れる精神を


俺が求めるもの


それは『誰かを守る』こと


========

「……おい、しっかりしろ!?」

俺は涙を溢し、身体中から血を流しながらボロボロの桜髪の少女の体を持ち上げる。

俺たちは軍の兵士で、敵国に攻めいったものの奇襲にあい返り討ちされ、俺らの部隊は殿部隊となり敵兵たちを倒していった。

そして、相手が引く頃には俺ら以外の部隊の人たちは誰もが屍になっていた。

「……あ、マルクト。どうして、そんなに泣いてるの?」

「当たり前だ!家族同然の奴らがもうお前しか生き残っていないんだぞ!?」

「でも、マルクト……貴方の才能は……。」

「俺の才能なんてどうでもいい!それより怪我の手当てを!」

「いいの……もう、いいの。」

俺が傷の手当てをしようとすると少女が俺の手を抑える。

そうしている間にも少女の体からは血が流れ、力も弱々しくなっている。早く助けないと本当に死んでしまう……!

「でも……!」

「貴方なら分かるでしょ……?私たちは、死に場所を求めていたことを……。」

「……そして……ありがとう。私たちに付き合ってくれて……。」

そして、その言葉を最後に彼女の手から力がなくなり、血溜まりの中に手が落ちる。

「……死んでしまったのか……。」

俺は予想よりも冷静であることを少し驚きながら、彼女を血溜まりから木の近くに横たわらせる。

俺たちは軍の中でも嫌われていた。

普通ではない才能、精神の持ち主たちが集まっていたからであったからだ。

だが、その為か俺たちは常に最前線で闘い、多くの戦果を得て、そして多くのやっかみを買いながら闘い続けた。


俺の才能は人殺し、暴力の才能だった。

幼い頃、親に捨てられスラムで生きていた。そこでは幼いながら暴力を受けながら、そして、暴力を受け続けながら生活していた。

その後、軍隊に入ってからは俺の才能が開花、初めての任務で多くの戦果を挙げ、軍の勝利に貢献した。

だが、それ故に軍に目をつけられた。

敵兵たちを殺すことだけを求められた。そして、敵とは言え人間を殺し続けた俺の精神は崩壊する寸前にまでになった。


その時出会ったのが彼女だった。

桜色の髪に赤い目、そして俺とは違いいつも明るい笑みを浮かべ、仲間たちのムードメーカーだった。

そんな彼女の才能は『治癒』

敵を殺す事を好まない彼女らしい才能だった。

そんな彼女、そして崩壊しかけた精神を癒してくれた仲間たちは俺に出来た初めての家族だった。


「……行くか。」

俺は簡単な傷の手当てをした後、敵国の本拠地である帝都に向かい歩き始める。

そこにはただただ精神を壊した怪物がいただけだった。

(……あぁ、もし、次に生を得られたのなら……人を守れる力が欲しいな……。)

俺は最初で最後の夢を持ちながら脚を進めるのだった。


――――後に、帝都は半壊(・・)、兵士の八割は全滅し、現皇帝は崩御した。

それを行ったのはただ一人の兵士であり、今でもその死体が厳重に保管されている。

そして、その死体と共に一つの名前が与えられた。

四千年の歴史を持つ帝国の帝都に牙をむき、戦乱をと共に生まれ、死んだ怪物


『殺戮』と



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