表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サメナイユメ  作者: 下蔵寿光
一章 過去と未来の物語
7/272

第五話 未来に向かう物語

2022年9月9日更新

m(_#_)m不定期更新を宣言しているとはいえ、完全に遅れてしまいました。申し訳ありません。……期限ってなんだったのでしょうね。いえ、なんでもありません。ともあれ、内容について。ちょっと進行が遅くなりそうだったのとあんまり長いこと主人公が話に絡まないのも妙な気がしたので、時を飛ばしました。更新ペースは落ちました。重ね重ね申し訳ありません。


 驚愕。


 呆然。


 理解不能。


 意味が分からない。


 何故?


 私は一人っ子。


 これからもずっと。


 なのに、何故?


 弟なんているはずがない。


 義弟だってできるはずがない。


 それとも、夢?


 いや、違う。


 間違いなく現実で、過去で、現在(いま)だ。


 何十、何百、何千、何万、何億………


 何度も繰り返した未来。


 初めて。


 初めての、自発的じゃない変化。


 殺される度、赤ん坊からやり直す。


 そうして知った未来の道筋。


 自分の行動が引き起こす変化。


 変化はそれだけだった。


 なのに。


 父様が連れ帰った赤ん坊は、私の弟になった。


 この展開は知らない。


 ここからの未来は知らない。


 だから、少しだけ楽しみ。


 久しぶりの感情。


 今回は、どんな未来に辿り着く?


 今回こそ、世界を救える?


 貴方は、私を───。


====================================================================================


 ウェストファリア王国 王都北東部の開拓村を襲ったスタンピードを始めとする一連の災害から、数年の月日が経った。


 王国と山脈を挟んで対峙する帝国と東方の草原地帯にまで至った超大型の嵐。その中を乱舞した亜竜の大群。草木の急成長による樹海の拡大。河川の氾濫、火山の出現。


 王国の調査団による最後の報告と帝国の声明、聖国の情報提供により、これら全ての天災には太古の竜王が関わっている可能性が示唆された。


 結果的に開拓村は全て放棄され、今では王都の近郊にまで魔物の領域───魔境が拡がりつつあったものの、人的被害は比較的少数に抑えられた。


 国内に目を向ければ、この三年間で小さくない変化が起きていた。


 第一に、政情の変化。緊急事態対応するため、重臣会議を通さずに国王が直接に騎士団と軍団への命令権を握り、これが恒常化したこと。これにより、宰相以下高級官僚の権力が下がり、国王と武官の権力が高まった。


 第二に、外交の変化。北大陸西方の秩序を形成する、ウェストファリア王国、ウェスタラシア帝国、ウェスティシア聖国の三竦みが一時的とはいえ協調に転じた。拡大傾向にあった魔境への対応と、その機につけ込みかねない草原の覇国や砂漠の商国への牽制、そして東方に君臨する大帝国 東皇国への対抗。これらの目的を兼ねた西方の主要国家の協調により、各国の元首は国内の安定化を進めた。王国について言えば、先に述べた中央集権化がこれに当たる。


 第三に、王女の誕生。多くの貴族は、子息の年齢を合わせるために王族と同時期に出産を調整する。そのため、出産や育児に関する特需も相まり災害下にあっても国内の雰囲気は決して下向かなかった。


 そして、最後に。醜聞でありながら吉報の一つとして扱われたのは、英雄の不貞の発覚であった。相手は不明であるものの、竜殺しの偉業を為して騎士団長にまで上り詰めた英雄 イアン・シャルルが隠し子を認知し、息子として迎え入れたのだ。英雄の子は英雄に至り易い。魔物の勢力が拡大し、竜王という強大な人類の敵の存在により、人々が新たな英雄を求めていたため、娘と同い年の隠し子という醜聞は吉報として受け取られた。


====================================================================================


 西方暦536年5月20日。


 ウェストファリア王国の王都は変わらぬ喧騒の中にある。


 王都の中心、王城は城下と打って変わり、熟練の使用人や官僚たちによって無駄のない運営が為されていた。


 その一方で王族の居所たる王宮では、城下にも負けない騒動が起こっていた。


「殿下ー!今日こそはきちんとお勉強をなさって貰いますからねーーっ!」


 まだ年若いメイドが、一回りも二回りも幼い、六歳前後の少年と少女たちを追いかける。


「ちょ、ちょっと!きょうのメイドはあしはやいわよ!?お、おいつかれちゃう……っ」


「…だいじょぶ。あのへやのかくしつうろをつかう」


「ちょっとっ!?なんであたしもしらないかくしつうろをあなたがしってるの!?」


「ノブをぎゃくがわにまわしてとびらをあけるとベッドのしたにあながあくから、すぐにとびこんで!」


「だからぁ!なんであたしがしらないおうきゅうのひみつをあなたたちがしってるのよぉ!」


 中心を走るのは、幼いながらにどこか気品を感じさせる少女だ。煌めく金髪をたなびかせ、紅玉の瞳に涙を浮かべながらも左右を走る乳兄妹たちへのツッコミに忙しい。


「…こうきしんはなんとやら。しらなくていいこともある」


 向かって右方を走るのは、年不相応に落ち着いた雰囲気を纏う少女。美しい黒髪の上にホワイトブリムを乗せ、紫紺の瞳を妖しく輝かせるその少女は、メイドのような服に身を包んでいる。………少女は立派な貴族子女であり、決してメイドではないはずなのに。


「いちおうぼくらはきみのごえいをかねてるから、にげみちをおぼえさせられてる………ってことでなっとくできないかな」


 最後に残ったのは、外見と言動がちぐはぐな少年だった。幼い容貌と口調に反し、その言葉はどこかねちっこい。艶やかな銀髪や透き通る空を思わせる碧眼から受ける爽やかな印象とは裏腹に、所作の一つ一つにも執念深いまでの理屈が詰まっている。


「っ、いまっ!ひだりがわのとびらをあけて!」


「…ん。ノブをはんとけいまわりにまわす」


「そして、ベッドのしたにとびこむ、よね!」


「だ、ダメですよ殿下!それに、お二人も!わたし、その部屋には入っちゃいけないんですぅー!」


 隠し通路に飛び込んだ三人の耳に、メイドの泣き言が届いた。


「え……、じゃあ、さっきのへやであそんでてもよかったんじゃ……」


「いや、あのへやにはいれるメイドをよばれたらすぐにつかまることになるし、いっかしょにとどまると、さいあくははうえをよばれることに………っ」


「…ん、ジャンヌはわかってない。かあさまはようしゃない………っ」


 ベッド下の穴に転がり込み、隠し通路を駆け出した三人。疑問を呈する金髪の少女───ジャンヌに対し、姉弟は似ていない顔を揃って青くし、震えながら答えた。


「た、たしかにアンナにつかまったら………っ。で、でもっ、さいごまでにげるほうがアンナはこわくおこるじゃない!」


「…なら。おとなしくべんきょう、する?」


「そ、それは………。え、ええ。もちろん、きょうもにげきってみせるわ!マナーのせんせいはねちっこくてきらい!」


「とかいって、ジャンヌはなんのじゅぎょうでもにげるよね。まあ、さいていげんはできてるんだけど」


「アルがほかのきぞくしじょのへいきんをおしえてくれるから、ぼーだーらいん?が、わかりやすくてたすかってるわ!」


「…なるほど。ジャンヌがにげるのはアルのせい。これはかあさまにほうこくせねば」


「いやいやいや!にげるのにつかうかくしつうろは、ハルカがおしえてくれたものだよね!?そっちがそのきなら、こっちにもかんがえがあるよ?」


「…ちっ。おとこのくせにこまかい」


「じっさい、あなたたちのせいだとおもうのよ、あたしがじゅぎょうきらいになったのって。だから、あたしがおこられるぶんも、ふたりがおこられるべきだとおもうの」


「「(…)わたしたちはでんかのちゅうじつなしもべであります。このこうどうも、でんかのめいれいあってこそのもの。なにとぞ、そのことをおわすれなきよう…」」


「ずるいわよっ!?ふたりそろってずるいわよっっ!」


 毎度の遣り取りを交わしながら、三人は通路を下へ下へと駆けて行く。


 その後、なんやかんやと逃げ延びた三人だったが、夕食の時間には姉弟の母親に発見され、しっかりと平等に罰を受けた。


ブクマ登録ありがとうございます。


2022年9月9日更新

本日更新分はここまでです。

大枠の設定は前回までで最低限説明できたつもりではありますが、主人公たちに関する設定が殆どノータッチのままになっている現状をどうしたものか。一応小出しにしていくつもりですので、現時点では分かりにくい言動があるかもしれませんが、ご了承下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ