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サメナイユメ  作者: 下蔵寿光
一章 過去と未来の物語
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第三話 過去を望んだ物語

2022,8/20更新

(土下座)連日更新は不可能ではないかと思い始めてきました。某FG丸の周回で忙しく……もっと石を集めて、ガチャを、ガチャを………っは、今、何か……?取り敢えず三日くらいに大体一回の更新ペースだと思っていただけると(震え声)。とにかく、更新は不定期になると思います。不定期です。不定期、ということにさせて下さい。

 長くなりましたが、前書きらしいことも書いておきます。今回は一人称視点を試してみるので、少し違和感があるかもしれません。

 最後になりますが、まったりと更新していきますので気長に楽しんでいただけると幸いです。


 何が起こったのか。何が起こっているのか。何が起こるのか。分からない、分からないわからないわからないわからないわからない。


 俺自身が置かれている状況も、ここがどこなのかも、あるいは、俺自身が何者なのか(・・・・・・・・・)すらも。


 混乱する頭の中、思考だけがやけに冷静に回転する。


 混乱しているのかしていないのかさえも定かではない。


 それでも、今は現状把握に努めるのが最善だ。


 視覚。視界は、万華鏡を覗いているかのように乱れている。視覚的な状況の認識は不可能に近いが、何か(・・)……複数の大きなものが、バラバラになっていっていく。………おそらく、人間だ。大きく感じるのは、俺が小さいから。そして、彼らは多分………。


 聴覚。音は、頭の中に直接響いているかのようで、聴き取り辛い。次々と伝えられる高音──悲鳴と重低音──暴風の音。ずっと感じている頭痛もあいまり、拷問もかくやの激痛だ。


 触覚。裸体に巻かれたローブがちくちくと肌を刺している。


 嗅覚。血と、排泄物。それにこのすえた刺激臭は……臓物か。現代日本に生まれた俺が知るはずのない臭い。それでも、今の(・・)俺が知っているのは当然だ。知らないはずの膨大な知識の中から正解を引き出した。それだけのことだ。


 味覚。暫く前の、少し事態が落ち着いていた頃に母から与えられた母乳の味が、まだ口の中に残っている。


 そして、もう一つ。五感のどれとも違う、日本では感じたことのない感覚。強いて言うならば、触覚に近いだろうか。身体の内外に異物感(・・・)がある。本来あるはずのない何かが体内と大気中、人であるらしい塊の中にまで存在している。これは、魔力。母や、父と思われる男。あるいは魔法使い然とした人々が超常の現象を起こす際に利用されていたエネルギーだ。


 以上の六感から得られた情報と、これまでの情報を総合して導かれる現状は、最悪の一言に尽きるな…。


 まず、最大の戦力であった父は死に、母は重体で動けない。二人を襲った敵は強大で、俺を守った人々は四肢を失い、命を散らしていく。


 俺には、誰かを守る力も、絶望に抗う力もない。


 母以外で唯一抱きしめてくれたあの少女も、今、肉片と化した。


 何者でもなく何の力も持たない俺は、誰も守れないのだろうか。


 最後の一人が倒れ臥した時、敵───ローブの男は大きく息を吐いた。


「"………すまない。あなた方のように高潔な人間を、我らの事情に巻き込んでしまった。私に謝罪する資格がないことは理解している。しかし、天国へと招かれるあなた方に、私は二度と会うことはないだろうから、今一度謝罪を。本当に、すまなかった"」


 男の使う言語は、日本語でもなければ、どの中国語でもない。韓国語、タイ語、英語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、ドイツ語。俺の知るどの言語にも当てはまらない。意味も分からないため、生まれ持った知識を以ってしても言語の同時翻訳は不可能なのだろう。


 そして、黙祷の後、男は俺へと向き直る。


「"その碧眼、間違いありません。主命により、あなた様を陛下の下へお連れしましょう"」


 もうどうしようもない。


 守ってくれる人は居らず、俺に自身を守れるだけの力はない。


 男が近づいてくる。


 俺は、動くことも出来ない。


(……そもそも、歩くことはおろかハイハイもできない生後一日足らずの赤ん坊が、どうこうできる相手ではないんだ。あの人たちが俺を守ってくれたことが無駄になるのは心苦しいが、仕方ない(・・・・)。弱肉強食は世の常で、絶対の法則だ。ジャイアントキリングだって、相応の力の差だからこそ成り立つもので、最初から起こり得る現象でしかない。強者と弱者。或いは、勝者と敗者というこの関係は、俺にへ覆し得ない。………だから、仕方ないんだ………)


 俺の目の前で跪いた男が俺へと手を伸ばす。


 仕方ない、と諦念を強めたその時。


 バチリと大きな音をたてて、男の手が弾かれる。


「"っ!?これは、まさか……っ!"」


 大袈裟に飛ばずさった男とほぼ同時に、俺も大岩の下───母へと視線を送った。


「"………うちの、子に……さわるんじゃない、わよ……こうていの、いぬ、がぁ……"」


 母だった。下半身を失い、最後の力を振り絞っている様子なのに、その姿は力強い。それは、さっき俺を守ってくれた少女たちも同じだった。


(…………。決して諦めない、譲らないという決意。それが、力になるのなら……俺───いや、(・・)は……!)


「"…………。これは、主命です。ご容赦ください……っ"」


 俺に背を向けた男が、満身創痍の母に向けて剣を振り上げた。


 声が震えている気もするが、未知の言語ゆえに判断がつかない。


 それよりも。


(このままでは母が本当に死んでしまう!守りたい。守らなければいけない!何か、何かっ!)


 必死に手段を模索する。時間がとまったかのように、振り下ろされている男の剣が、降り注ぐ雨粒が、静止する。


 そして、思い出す。


(守るための(エネルギー)なら、僕はもう持っている。それに、守るための手段も、母が示してくれた!だったら、あとは───!!)


 再び動きを取り戻した剣が、母の下に迫る。


 僕を守るのに精一杯な母は、迫り来る剣を睨みつけた。その碧眼には、僅かな諦念も存在しない。


 だから!


 僕は、魔術を行使した。ぶっつけ本番。見よう見まね。成功する保証なんて何一つない。それでも、諦めて何もしないよりはずっといい。だから───っ!!


 身体中から魔力が抜け出し、母の真上、剣の真下で盾を模る。


 成功した!


 そう思った瞬間、身体を極度の疲労が襲う。


 目を開けているのもやっとだ。僅かにのこった気合いで、剣の行方を見つめる。


 振り下ろされた剣は、僅かな拮抗の後に魔力の盾を砕いた。


(っ───!?)


 もう一度盾を作ることは出来ない。もう、そんな力は残っていない。だから、もう守れない?───いいや、そんなことは認めない(・・・・)。魔力が身体になくても、大気中にはまだまだある!もう(・・)諦めない……っ!


 さっきよりも小さな盾が、剣の軌道上に現れる。疲労感は一層強まった。物理的な力を感じるほど、瞼が重い。


 一瞬の拮抗の後、盾は壊される。更に小さい盾を作る。壊される。作る、壊される。作る、こわされる、つく、る………


 意識が飛ぶ直前、男の剣が弾き飛ばされたような気がした。


世界観として、暦は一般的に現実で使われているものと同じ(太陽暦)にしています。か、考えるのが面倒だったとかじゃ、ありませんよ?

アルは7/6,ハルカは6/7が誕生日です。


2022,8/20更新

本日更新分はここまでです。

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