思惑が糧となり分岐の枝が分かれていく
今するべきことをクラスでの話し合いの終盤を迎えた突如の出来事だった。
バタンッ! バタンッ!
2人の身体が琴線が切れたように教室の床にばたりと打ち付けられていた。
「か、神凪君!?」
「神無君!?」
さっきまでの話の中心になっていた宮永葵と國立理の二人は倒れた当人を見て思わずそう言った。
それと同時に倒れた二人の席の周りにどんどんとクラスメートが集まった。
「神凪君!! 大丈夫!? ねぇ、神凪君?」
「一応呼吸はあるみたいだな。ふぅー、でも二人ともなぜ急に気絶なんかしたんだ? 誰か二人が今日具合が悪いとか聞いてる?」
少し取り乱していた宮永だったが千慧に呼びかけつつもしっかりと呼吸、脈を図った。
それに対し最初だけ驚いた國立だったが状況が分かった瞬間に適切な処置をこなしすぐさま原因を探り始めた。
「國立? 大丈夫なんかそいつらは? でもその二人多分ほとんど会話したことない奴らばっかだと思うぞ。俺も名前くらいしか知らなかったし」
國立の質問にまず反応したのはお調子者でこのクラスの話のペースメーカーこと木村蓮也だった。
木村の言葉に続き他のみんなもそれぞれ親しい人と確認して頷いた。
「そうかでも恐らく、体調は万全ではなかったんだろう。この非常時も重なり体調に悪影響を起こしたってことだ。一先ず机を並べて土台をつくりその上にひざ掛けで使う毛布や使わない衣類を重ね簡易ベッドで寝かせることにしよう。みんないいかな?みんなの持っているものを使っても。これは命にかかわることだからできるだけ協力してほしい。だからまず、運動や動きやすくするために男女外と中に分かれてジャージに着替えて探索の準備と使わない衣類と持っていたら毛布を準備してほしい。時間はないからすぐに行動しよう」
この状況で最悪な展開にならないために國立は二人の様態を悪くしない様に指示を出して、それと並行に早くこの状況の打破から探索の準備を促した。
それに対してクラスは特に誰も反対意見は出ず、このような非常事態に重ね非常事態が起こったりしたからか自分の判断を停止してその判断を國立に委ねた。
がしかし、その中でもたった一人が國立個人に意見を述べてきた。
「國立君、ちょっといいですか? 今倒れた二人の様態がいつ急変するか分からないから誰かしら見ている必要があると思いますの。然り、役目をちゃんと与えないと誰も看病に着かないかもしれません。なんせ誰もこの事態になる前は二人に関心が無かったと言っていましたから」
皆が準備に取り掛かるために散り散りになる中で宮永だけが國立の案の抜け目を指摘した。
「あ、ああ、そうだね。二人の看病をしっかりしないとね。それは僕の落ち度だったよ。それなら、そう言ってくれる宮永さんがやってくれるのかな?」
皆の散り散りになってく事を笑顔で見ていた國立だが突然宮永に声を掛けられ表情を一瞬曇らせたが彼女に振り替えるころにはいつもの顔になりその意見に耳を傾けた。
そして國立はその意見の当事者である宮永に向けて看病をやってくれないかと質問に質問を返した。
「ちょっと待って、そうゆうのはクラスで決めるべきではないの? 私はただクラスのためを思って言ったまでよ」
それを聞いた宮永はまさかそのような答えが返ってくるとは思ってもいなかったので、クラスで決めるべきと説いた。
しかし、國立は
「できればそうしたいのは山々なんだけど皆もう行動に移っちゃってるし、早くしないと日が暮れるからもう決めてる時間はないよ。だから、そう言ってくれた宮永さんなら引き受けてくれると思って聞いたんだけどダメだったかな? これもクラスのためだよ」
話の外堀を埋めていき宮永がその役目を引き受けるしか逃げ場がない状況を意図してか無意識なのか作り出していた。
「それが最善手のようね。こればっかりは私がみんなの前で言っておくべきだったみたいね。分かったわやりますよその御役目を」
國立のそのような言葉を待っていたのではないかとぐらいに宮永はすんなりと諦め、その役目を引き受けた。
「それは助かる。ありがとう、絶対になんかしらの成果は見つけてくるよ。二人をお願い」
國立も当り障りのないお世辞と受け取られるような言葉を返した。
「期待して待ってます。」
「それじゃ、僕も行ってくるよ」
そうして相手の腹の内を探っているような会話は幕を閉じた。
勿論彼ら二人の真意は彼ら自身しか分からないが。
それが本心なのかはたまた鉄の仮面を被ったペルソナなのか・・・
そして少し時間が経ち皆が探索の準備が終わり、それぞれの班の役割を確認して出発の準備が整った。
先の件も重なり、ほとんどの人が探索行くことに協力してくれた。
ここに残ることになったのは宮永は勿論のこと他女子が二人だけだった。
男子は全員が探索に行くことになった。
その主な理由は何処かまだ現実離れしたこの状況に好奇心や冒険心がくすぐられたのだろう。
女子は言わずもがな現実的な面で主に共同生活の面をいち早く改善したい一心で行くのだろう。
「それじゃあ、ここの事は宮永さんを中心によろしく頼むよ。僕の班は町をみつけるからすぐに帰ってこられるかは分からないから今ある食料と他の班の獲った食料で安全を図ってくれ。すぐに見つけてこの状況を打破できるようにする。よしっ! 皆出発するよ!」
國立からの最終確認をして彼の合図でそれぞれの班が自分たちの役目のため四方に歩き出した。
班の概要というと
町を見つけ出す班が一番比率の多い國立を筆頭に木村などの男子だけで15人
次に、水源、食料採取班が10人で3人、3人、4人で行動する。
そして居残り組が宮永含め意識のない二人を合わせて5人となっている。
計三十人で男子が18人、女子が12人となっている。
町を見つけ出す班に漏れた、辞退した男子はそれぞれ採取班の小グループに一人ずつ配属された。
そしてここに取り残された居残り組は
「みんな行きましたね」
とぼそり独り言のように宮永がつぶやいた。
「葵ちゃんは良かったの? いかなくて」
「うん、うちも意外だと思った」
今ここにいるのは宮永と同じ居残り組となった女子二人で先にしゃべったのが白河美涼でその後に続いてしゃべったのが朝倉花南だ。
この二人は昔からの幼馴染だという。それもあってかいつも二人で行動することが多かった。
今回の探索に不参加を決めた理由は半分は宮永と同じくここに意識不明者が二人もいるのに誰が見るのかという事を2人でひそかに話し合っていたからだ。もう半分は一番の安全な場所にいたかった。至極まっとうな理由からだ。
「そうかしら、私は漁夫の利を狙ったつもりでしたが、それが意外でしたと、ふふっ」
「「漁夫の利?」」
二人は息を合わせながら気になる言葉を反芻した。
「ええ、漁夫の利です。これから先はまだ企業秘密です。その時が来たら話しますよ、ふふっ」
宮永は二人の目を交互に見てそしてまた微笑んだ。
「流石葵ちゃん! よくわかんないけどすごい」
「もーみすずー分からないならすごさも分かんないでしょうがー」
「じゃあ、分からせないのがすごい?」
「言い得て妙だけど結局分かってないじゃん!」
転移後は全然していなかった幼馴染本来の会話がそこにはあった。
その様子をまたまた微笑ましく見る宮永がいた。
「さて、白川さん、朝倉さん雑談はここら辺にしてここに残ったとしてもやることはありますよ。手伝ってくださいね」
「「りょうかーいしました!」」
それを言った宮永は踵を返して教室に入っていき、それに続いて白河、朝倉と宮永の後を追っていき教室に入っていった。
この瞬間にクラスの命運の分岐点が分かれていき枝分かれになり一人一人の思惑を糧に芽吹いた。
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